2023.08.08

食事・栄養

空腹時血糖が高い原因は?|血糖値の異常や糖尿病を予防する生活習慣

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植田 祐己

美容皮膚科医

「血糖値」という言葉は、多くの方が知っているかと思います。では、「空腹時血糖」という言葉をご存知でしょうか。文字通り、空腹時の血糖のことです。

今回は、この空腹時血糖はどういうものなのか、そして空腹時血糖が高いとどうなる可能性があるのかということにフォーカスした内容をお届けします。また、血糖値の異常や糖尿病を予防するための生活習慣についても解説していきます。

空腹時血糖について

まずは、「血糖値」とは何をあらわしているのかというところから解説していきます。

血糖とは

血糖とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)のこと。そして、その濃度のことを血糖値と言います。

ブドウ糖は、果物や穀類などに多く含まれ、自然界に最も多く存在する単糖類。そして、食べ物から摂取された糖質は、消化吸収を通してブドウ糖に分解され血液に入ります。​​そのため、血糖値は健康な人でも食前と食後で変化します。

随時血糖と空腹時血糖の違い

空腹時血糖とは、検査前に水以外のものを口にせずに空腹の状態で測定した血糖値のことです。それに対して随時血糖は、食後からの時間を決めずに測定した血糖値のこと。

健康診断のとき、最後に食事をとった時間や内容を記入した経験がある方もいると思います。これは、食事時間により血糖値も変動するためです。

血糖値の基準値

血糖値は、随時血糖か空腹時血糖かにより、基準値が異なります。食事により血糖値が上がるため、随時血糖の方が空腹時血糖より基準値が高くなっています。また、血糖値が必要以上に下がることを低血糖と呼び、高いまま下がらない状態が続くことを高血糖と言います。低血糖でも高血糖でも、体に不調が現れてしまいます。

【基準値】
・空腹時血糖値:70〜100mg/dL
・随時血糖値:< 140 mg/dL

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空腹時血糖値が上がるとどうなる?

血糖値の異常と大きく関係する疾患は、ずばり「糖尿病」で、空腹時血糖の異常で起こる症状です。しかし、糖尿病以外にも血糖値の異常をきたす疾患はたくさんあります。

主に血糖値に関係するホルモンとして、膵臓から分泌されている「インスリン」と「グルカゴン」などがあります。インスリンは血糖値を下げる働きを持ち、グルカゴンは血糖値を上げる働きを持っています。この2つのホルモンのバランスにより血糖値が一定に保たれています。しかし、このバランスが崩れると血糖値に異常が起こってしまいます。

低血糖のとき

空腹になると血糖値が下がります。そうすると、血糖値を上げる働きを持つグルカゴンなどにより、肝臓などに貯蔵されたグリコーゲンをブドウ糖に分解させエネルギーとして使います。その結果として、血糖値が正常に戻ります。

しかし、血糖値が異常に下がった際は、交感神経が反応して血糖値をさらに上げようとします。この作用により、めまい、ふるえや動悸などの症状が起こります。その後さらに低血糖状態が続くと、脳へのエネルギー供給不足から意識低下昏睡に至る場合もあります。

高血糖のとき

体の臓器や組織では、細胞が絶えず血液中のブドウ糖を取り込み、エネルギーに換えて活動しています。その取り込み作業にはインスリンが不可欠で、インスリンの作用が不足すると血糖値が高いまま下がらない状態である高血糖を招きます。

この状態が長く続いた状態を糖尿病と言い、次に述べるような様々な症状を引き起こします。

糖尿病について

糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンが足りなくなったり効かなくなったりして、血液中のブドウ糖が細胞内に入れず、血液中に溢れかえってしまう病態です。その結果として、血糖値がいつも高い状態になってしまいます。

血液中のブドウ糖は、血管を傷つけて動脈硬化を起こします。細い血管が障害されると、目の網膜や腎臓、神経が障害されます。この糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病神経傷害は糖尿病の「三大合併症」と呼ばれています。これらは失明や透析のほか、壊疽、認知症など大きな障害にも繋がります。さらに脳や心臓などの太い血管まで障害されると、脳卒中や心筋梗塞の原因となります。

しかし、糖尿病は初期にはほとんど症状がなく、症状が出たときには進行してしまっていることが多いのです。まずは、糖尿病にならないための一次予防である生活習慣を整えることが大切です。

糖尿病と空腹時血糖の関係

空腹時血糖が高い状態が続くと、糖尿病のリスクが上がることがご理解いただけたと思います。しかし、空腹時血糖が高いだけで、すぐに「糖尿病」と診断されるわけではありません。糖尿病という診断に至るまでにはいくつかの検査が必要になります。

糖尿病の診断基準には以下のような項目があります。

①早朝空腹時血糖値が126㎎/dl以上
②75OGTT2時間値が200㎎/dl以上
③随時血糖値が200㎎/dl以上
④HbA1cが6.5%以上

②は空腹時に75gのブドウ糖を摂取し、その2時間後に測った血糖値を示します。また④は採血により測られる値で、過去1~2か月の血糖値の良し悪しを示します。実際には以下の表のように、これら①~④の項目から複合的に判断して糖尿病の診断をします。

出典:糖尿病の検査と治療

 

血糖値が上がる原因と改善する方法

どのような生活習慣が、血糖値に影響を与えるのか解説していきます。

血糖値に影響する悪習慣

血糖値は食後上昇し、時間の経過に伴い下がっていきます。しかし、食事の時間が不規則であったり、炭水化物ばかりの食事などが続くとインスリンとグルカゴンのバランスが崩れてしまいます。

また、血糖値が上昇しても運動習慣があると血糖値を下げる助けになります。しかし、運動習慣がなく不規則な生活習慣、暴飲暴食をしているようでは血糖値だけでなく様々な生活習慣病のリスクになってしまいます

また、睡眠と糖尿病にも関係があることが分かっています。慢性的に不眠が続くと、交感神経の過緊張、糖質コルチコイド(血糖値を上昇せるホルモン)の過剰分泌、慢性炎症、酸化ストレスなどが原因となって、耐糖能異常をきたし、糖尿病のリスクになるとされています。実際に睡眠障害を持つ方は、そうでない方に比べ糖尿病になるリスクが1.5〜2倍になることが知られています。

血糖値を改善するための生活習慣

では、血糖値を改善するためには、どのような生活習慣が望ましいのかご紹介していきます。

規則正しい食習慣

・規則正しく食事をとる
・寝る前の食事は控える
・白米、麺類などの高GI食品の摂り過ぎに注意する
・食事のときは、サラダなど野菜から摂るようにする
・野菜や食物繊維を積極的に摂る
・よく噛んで食べる
・間食を摂るときは、小魚やナッツ類を選ぶようにする
・アルコールはほどほどにする
・清涼飲料水など糖分の多いジュースはNG

運動習慣

1日30分程度の有酸素運動を取り入れる

睡眠習慣

・寝る前にスマートフォンなどのブルーライトを浴びないようにする
・朝起きたらカーテンを開け太陽の光を浴びるようにする

ストレスケア

ストレスと上手に付き合っていくことも大切です。自分なりのストレスケアの方法を探してみましょう。運動やカラオケなどで発散させたり、リラクゼーションでスッキリするなども良いでしょう。また、涙を流すこともストレスの緩和に効果的です。泣ける映画の鑑賞などもおすすめです。

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まとめ

目に見える体型や体重などと違う血糖値は、普段あまり意識して過ごすことはないかも知れません。しかし、見えないからこそ、静かに体を傷つけているかも知れないということが分かりましたね。普段の生活の中で悪習慣がある方は、まずは意識することから始め、健康な状態を維持できるよう過ごしていきましょう。

参照:
​​後藤伸子.糖代謝における睡眠の重要性.慶應保健研究.2019.37( 1),p.23 – 28
古賀克彦.食事の摂取順序による血糖値への影響.長崎女子短期大学紀要,2016, 第40号,p.70-74

この記事の監修者

植田 祐己 美容皮膚科医

 
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