2023.05.16

睡眠

睡眠の質を改善する方法とは?|眠れなくなるNG習慣もご紹介!

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玉井 基弘

歯科医師/ヘルスコーチ

みなさんは、よく眠れていますか?「睡眠」は人の欲求のひとつであると同時に、生きていく上で重要な役割を担っています。

しかし、私達日本人はOECD加盟国の中でも極めて睡眠時間が短く、さらに睡眠に満足していない人が多いという結果が。

今回は、睡眠の大切さや質の良い睡眠をとるためのコツについてご紹介していきます。

睡眠と健康の関係性について

私達の体は「睡眠」という時間を使って、整えたり修復したり記憶を整理したりと色々なことをしています。睡眠には、休息以外にも色々な役割があります。

ここからは、睡眠の重要性について解説していきます。

睡眠と健康の関係

人には、朝型で生活しているタイプと夜型で生活しているタイプがいます。そして、この概日リズムは加齢とともに変化すると考えられています。それぞれの生活サイクルが概日リズムと同調することができていれば、心身共に良好な状態でいることができるとされています。

しかし、反対に不規則な生活で概日リズムが整っていないと、ストレスホルモンである「コルチゾール」が分泌され、空腹ホルモンが分泌され血糖値や血圧が上昇します。

睡眠が健康に及ぼす影響の大きさ

生活サイクルと概日リズムが同調していない生活が長期的に続くと、心身共に悪影響を及ぼし、心血管系疾患精神疾患糖尿病肥満、その他の代謝異常に対して脆弱になると考えられています。さらに、驚くことに離婚や交通事故の確率が上がるという研究結果まで。

また、多くの疫学研究によると、睡眠時間が総死亡と有意な関連を示したという結果もあります。睡眠時間と死亡の因果関係の機序については、まだ充分に解明されているというわけではありません。しかし、短時間睡眠による糖代謝および交感神経、免疫系の影響が示唆されています。

また、長時間睡眠は、交絡要因や併存疾患が関連しているのではないかと考えられています。つまり、睡眠と健康問題には深い関わりがあるのです。

体内時計を整える重要性

睡眠と健康に関する研究は色々あり、長時間睡眠・短時間睡眠という言葉の定義も研究によって異なります。また、睡眠時間は年齢や性差によっても異なるということが分かっています。

しかし、睡眠時間は長ければ良いというものでもありません。研究によると、6〜8時間の睡眠が最も心身の健康と関連しているという結果が。そして、睡眠時間だけでなく、質の良い睡眠をとることもまた大切です。

心身共に健康でいるためには、概日リズムを整え、質の良い適切な睡眠時間をとることが鍵となるのです。

 

睡眠を改善する方法

質の良い睡眠をとることが、心身共に重要だということが分かりましたね。ここからは、質の良い睡眠をとるための習慣についてご紹介していきます。

睡眠の質を上げる食事法

脳腸相関」という言葉があり、脳と腸はお互いに影響し合っています。人の体は概日リズムによって体の色々な働きを調整しています。また、腸管にも同様に概日リズムが存在しており、腸内細菌が大きく関わっていることが明らかになっています。

腸内細菌を味方にするためには、規則正しく食事をとり、腸内細菌の多様性日内変動(※)を保持することが大切です。腸内細菌の多様性を守るためには、腸内環境を整える食事も重要です。腸内の悪玉菌が有意になる偏った食事は控えるようにしましょう。

食事のポイント

  • 食事時間を規則的にする
  • 食べてすぐに寝ないようにする
  • カフェインが含まれる飲食物は4時間前から控える(敏感な人は5〜6時間前)
  • 発酵食品、水溶性食物繊維、オリゴ糖は積極的に摂る
  • 寝る前のアルコールを習慣にしない

日内変動:体内時計によって、体温や血圧などのバイタルサイン、精神症状などが1日のなかで変動すること。

https://possim.co.jp/preventive-medicine/uncategorized/786/

睡眠の質を上げる生活習慣

人の睡眠は、2つのシステムによってコントロールされます。

1つ目は、起きている時の疲労の蓄積により睡眠欲求が強くなるというもの。睡眠欲求は、起きている時間が長くなれば長くなるほど強くなります。

2つ目は、覚醒力。覚醒力は交感神経の活性化、ホルモンの分泌、深部体温(脳温)の上昇などにより体内時計から発信されます。覚醒力は、就床時刻の数時間前に最も強くなり、その後メラトニンという睡眠を促すホルモンが分泌されて覚醒力が低下します。

つまり、睡眠のためには概日リズムが崩れないということが大切です。そして、そのためには覚醒している時にしっかりと活動すること、寝る前に深部体温がスムーズに下がること、メラトニンの分泌を妨げないことが鍵となるのです。メラトニンは明るい光の下では分泌が停止してしまうため、夜間の光に注意が必要です。

生活習慣のポイント

  • 生活リズムを整える
  • 起きたらカーテンを開ける
  • 昼間は明るい光を浴びるようにする
  • 有酸素運動の習慣をつける(寝る前の運動は逆効果)
  • 入浴は寝る2〜3時間前にする
  • 寝る前のストレッチでリラックス
  • 夜の明かりは暖色系の蛍光灯を使用する
  • 寝る前のブルーライトは避ける

寝室環境の整備

食事や生活習慣以外にも、温度騒音明るさが原因となって睡眠が妨げられる場合も。このようなことが睡眠の妨げにならないようにするためには、寝室環境を整えるということも大切な要素です。

寝室環境のポイント

  • 寝室の明かりは照度30lx以下、色温度3000K以下が望ましい
  • 睡眠中の推奨照度は0.3〜1lx
  • 通気性、吸水性、保温性の高い自然素材の寝具やパジャマを使用する
  • 夏の暑い時期は送風や氷枕で頭を冷やすことで体感温度を下げる
  • 冬の寒い時期は寝る前に寝具を温めておく
  • 鎮静作用がある香りなどを活用する(ラベンダー・オレンジスイート)

 

睡眠を妨げる嗜好品・習慣

良質な睡眠をとるためのポイントについてご紹介しましたが、ここからは良質な睡眠を妨げてしまうNG習慣について解説します。

睡眠を妨げる嗜好品

カフェインやアルコールを摂ることが習慣化している方もいらっしゃると思います。しかし、この習慣がもしかしたら睡眠の妨げになっているかもしれません。

カフェインの摂り方に注意

カフェインが眠気覚ましに有効であることは、ご存知の方も多いはず。カフェインは、眠気を抑制し、覚醒する作用があります。そのため、摂取時間によっては睡眠の質を下げ、中途覚醒を誘発してしまうという結果が。カフェインを摂るときは、寝る4時間以上前に摂るようにしましょう。

カフェインを含むもの:コーヒー、緑茶、紅茶、清涼飲料水、チョコレートなど

寝る前のアルコールは逆効果

寝る前にアルコールを飲んで、寝つきが良くなると感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、アルコールは入眠は促すものの肝臓で代謝した後に中途覚醒熟眠障害早朝覚醒などの覚醒作用が認められます。

また、アルコールは睡眠薬と比較して依存性耐性が強いと言われています。寝つきが悪く寝る前の飲酒が習慣化している方は、睡眠クリニックなどで相談してみても良いかもしれませんね。

夜間のブルーライトに要注意

質の良い睡眠のためには、睡眠ホルモンのメラトニンの働きが重要です。メラトニンは明るい光の下では分泌が抑制・停止されるため、私達は朝の光を浴びて覚醒したり、眠たくなったりするのです。そのため、朝に光を浴び、夜になると暗い部屋で過ごすことが大切です。

しかし、私達の生活の一部になっているスマートフォンタブレットなどの電子機器はブルーライトを発しています。夜間にこれらの画面をみると脳が昼間と錯覚し、メラトニンの分泌を抑制してしまうのです。寝る前は電気を落とし、電子機器には触れないようにしたいですね。

セルフケアの不足

良質な睡眠のためには、副交感神経が優位な状態になっていることが大切です。心身共に緊張した状態や興奮している状態では、交感神経が有意になりがちです。自分で自分のことをリラックスさせる方法を持っておくと良いでしょう。

お風呂でゆっくり筋肉の緊張を解したり、学校や仕事のことを忘れてリフレッシュすることも大切です。運動ですっきりするのも良いですし、マッサージ、音楽、香りなども良いでしょう。ストレスの緩和には泣くことも良いと言われています。泣ける映画などを見るのも良さそうですね。

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まとめ

私達が心身共に健康に過ごすためには、質の良い睡眠をとることはとても重要です。睡眠に関する悩みをお持ちの方は、現時点で健康問題が現れていなくても、継続することで問題が出てくる可能性があります。

まずは、自分のNG習慣を見直してみるところから始めてみましょう。

参照:
​土井由利子< 総説 > 日本における睡眠障害の頻度と健康影響.保健医療科学.Vol.61 No.1 p.3-10,2012
岡村 尚昌.津田 彰.矢島 潤平.堀内 聡.松石 豊次郎.睡眠時間は主観的健康観及び精神神経免疫学的反応と関連する.行動医学研究.15巻.1号.2009,p 33-40
香坂雅子.<総説> 女性の睡眠と健康.保健医療科学. Vol.64 No.1 p.33-40,2015
​​北堂真子.良質な睡眠のための環境づくり -就寝前のリラクゼーションと光の活用-.保健医療科学 2015 Vol.64 No.1 p.33-40
都築和代.温熱環境と睡眠.日生気誌.50(4).p 125-134.2014

 

この記事の監修者

玉井 基弘 歯科医師/ヘルスコーチ

 
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