皆さんは、「コルチゾール」というホルモンを聞いたことがありますか?コルチゾールは、ストレスと大きく関係していることで知られています。
今回は、このコルチゾールの働きや、ストレスとの関係などについて解説していきます。また、ストレス緩和の方法についてもご紹介していきます。この記事を読むことで、ストレスとうまく付き合っていくためのヒントが見つかると嬉しいです。
コルチゾールについて
まずは、コルチゾールというホルモンについて解説していきます。
コルチゾールとは
コルチゾールについて解説する前に、知っておきたいのがコルチゾールが分泌される臓器である「副腎」のこと。副腎とは、尿を作る臓器である左右2つの腎臓の上に位置する、2〜3センチの臓器です。副腎は二重の構造になっており、内側を副腎髄質、外側を副腎皮質といいます。それぞれの場所で生命維持に関係するホルモンが作られており、血圧・血糖・水分量などの体内環境を一定に保つための働きをしています。
コルチゾールが分泌されるのは、副腎皮質という外側の部分です。ここではコルチゾール以外にもアルドステロンやDHEAなどのホルモンも作られます。これらのホルモンは、まとめて「ステロイドホルモン」とも呼ばれます。
コルチゾールの働き
コルチゾールは、ストレスに曝された時に分泌されるため「ストレスホルモン」とも呼ばれますが、ストレスに対抗するだけでなく、生命維持のために不可欠な働きをしています。コルチゾールは、早朝が最も多く分泌され、1日のリズムの調整をしています。具体的には、以下のような働きをしています。
抗ストレス作用
ストレスを感じたときに、ストレスに対処するための働きをします。交感神経を刺激し、脈拍や血圧を上昇させ、身体の緊張状態を保ちます。
血糖値の上昇(糖新生)
血糖値が低下しているときにブドウ糖を合成し、血糖値を上昇させる働き。肝臓で自ら糖を生成するよう働きかけます。
脂肪の分解
脂肪を分解して代謝を促進し、エネルギーの供給を促します。
抗炎症作用・免疫抑制作用
体内に細菌やウイルスが侵入してくると、免疫反応が起こり、体内に炎症が引き起こされます。コルチゾールは、この炎症や免疫を抑える働きをします。
コルチゾールとストレスの関係
ここからは、コルチゾールの「抗ストレス作用」を詳しく解説していきます。
ストレス時のホルモンのしくみ
人がストレスに曝されるとストレスホルモンが分泌されます。ストレスホルモンには、アドレナリン、コルチゾール、βエンドルフィンなどがあります。その中でも、特に大きく関係するのが、コルチゾールです。
コルチゾールの増加で起こること
急激なストレス状態になってしばらくすると、血液中のコルチゾールの上昇を視床下部が感知し、コルチゾールの分泌を抑制します。しかし、ストレス状態が続くと、コルチゾールの分泌を抑える働きが失われ、過剰に分泌され続けてしまいます。
その結果、慢性的に免疫機能が抑制され、細菌・ウイルス・がんなどへの免疫力が低下してしまいます。最近の研究では長期間に渡りコルチゾールが過剰分泌されると、海馬の萎縮など脳に障害を与えたり、コルチゾールが傷ついた神経細胞の修復を妨げることも分かってきています。
コルチゾール過多にならない方法
ストレスと上手に付き合い、コルチゾール分泌が過多にならない方法をご紹介します。今日から簡単に取り入れられるので、ぜひ参考にしてみて下さい。
睡眠リズムを整える
睡眠が不足している人は、しっかりと睡眠がとれている人に比べて、ストレス耐性が低くなる傾向があります。コルチゾールは睡眠中にも分泌されますが、睡眠中は低く抑えられています。そして日中のストレスに対処する準備として明け方に最も多くなります。しかし、不眠などで十分に睡眠がとれていないと、分泌のリズムが崩れてしまいます。
対処方法としては、睡眠リズムを整えるための行動が必要です。睡眠のリズムを整えるためには、朝日をしっかりと浴びること、寝る前にはブルーライトなどの光を浴び過ぎないことが大切です。起きたらまずカーテンを開けることを習慣にしたいですね。
腸内環境を整える
脳腸相関という言葉があるように、脳の機能と腸は関係があると言われています。ストレスが多いと、腸内細菌のバランスが変化し、腸内細菌の多様性が低下することが分かっています。結果として、便秘や下痢などの症状が出てくることも。
逆に、腸内環境が乱れているとその情報は脳へ伝わり、自律神経の乱れをきたし、ストレスへの耐性が低くなると言われています。つまり、ストレスと上手く付き合っていくためには、腸内環境を整えることも大切と言えます。腸内環境を整えるためには、善玉菌を体に取り入れ、増やす事が必要です。善玉菌が含まれる発酵食品と、善玉菌のエサになるオリゴ糖や食物繊維を毎日少しずつコツコツと取り入れるようにするのがおすすめです。
【簡単なおすすめメニュー】
・わかめやオクラなどの入った納豆
・フルーツやオリゴ糖入りヨーグルト
・野菜たっぷりのお味噌汁
適度な運動をする
運動がストレス低減効果があることは、さまざまな研究で明らかになっています。運動をすることにより、ネガティブな感情が減り、ポジティブな感情が増える傾向があることが分かっています。運動の中でも、強度の高い運動はかえって交感神経を優位にしてしまい、ストレスとなってしまう可能性があります。
そのため、ストレス緩和の目的で行う運動は自身が心地良さを感じるレベルにするのがおすすめです。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が良いでしょう。
リラックスタイムをつくる
ストレス発散やストレス緩和のためには、自分自身がリラックス、リフレッシュできる時間を持つことも大切です。ストレス緩和には、音楽を聴くことやアロマテラピーなどが有効です。また、深く複式呼吸をすることもストレスの緩和になります。
呼吸だけを意識しても良いですし、ヨガなどと組み合わせても良さそうですね。また、涙を流すこともストレス発散に良いとされているので、泣ける本や、映画の鑑賞も良いでしょう。自分に合ったリラックスタイムを過ごしてください。
まとめ
コルチゾールはストレスホルモンと言われていますが、私達の生命維持のために大切な働きをしてくれています。また、決してストレス全てが悪いわけではありません。大切なのは、ストレスと上手に付き合っていくことです。
また、ストレスにより心身が不健康にならない状態を保っていくことです。ストレス耐性を上げるために、取り入れることができそうなものを習慣にしていきましょう。
参照:
佐藤苑子.渡部誠二.柳本憲作.宍戸道明.ストレス緩和のための聴覚・嗅覚刺激が前頭前皮質に及ぼす影響.科学技術研究.6巻1号.p 25-30,2017