2023.07.26

睡眠

眠れないのは自律神経の乱れが原因?|グッスリ眠れる方法をご紹介

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田中 康規

麻酔科医/ヘルスコーチ

「疲れているのに、休みたいのになかなか寝付けない」という経験をしたことはありませんか?もしかしたら、自律神経の乱れが関係しているかもしれません。

今回は、睡眠と自律神経の関係と解消法についてご紹介していきます。心地よい睡眠の手助けになると嬉しいです。

睡眠と自律神経の関係

よく耳や目にする「自律神経の乱れ」という言葉。女性は月経周期の乱れなどから自覚される方も多いはず。しかし、自律神経が関係しているのはそれだけではありません。

まずは、睡眠と自律神経の関係について解説していきます。

疲れているのに眠れないのは何故?

まず、私たちの体の神経は、「中枢神経系」と「末梢神経系」に分けられます。中枢神経系は脳と脊髄からなり、全身から集まってくる情報を処理し、指令を発信する中心的な役割を担います。

末梢神経系は「体性神経系」と「自律神経系」からなり、脳や脊髄から出て、臓器や筋肉、指先や足先までを支配します。体性神経系」は、感覚神経と運動神経に分かれます。感覚神経は、外部環境からの感覚情報を中枢神経に伝え、運動神経は、中枢神経系からの指令を、筋肉に伝える神経です。体性神経系は意識的に調節される場合と、脊髄反射のように無意識的に調節される場合があります。

自律神経系は、無意識的に調整されており、身体の内部環境の調節と生命維持活動の調節を担っています。そして、興奮や緊張状態を引き起こす交感神経と休息や消化活動を促進する役割を持つ副交感神経に分かれ、2つの神経が相反する機能を担います。

色々な原因でこの自律神経のバランスが崩れてしまうと、副交感神経を優位にして体を上手にリラックスモードに切り替えることができなくなってしまいます。その結果、体を休めたり寝たりしたいにもかかわらず、交感神経が優位な状態のままであるため、寝れないということが起こるのです。

不眠症の症状・特徴

上記のように、寝たいのに寝れないという方は、まずは自分自身が不眠症の状態にあるか否かチェックしてみましょう。

不眠症とは?

「眠れない」という状態が続くと、倦怠感、意欲低下、集中力低下、抑うつ、頭重、めまい、食欲不振など、心身ともに色々な不調が現れます。夜間の不眠が続き、日中に心や体の不調を感じて、生活の質が落ちてしまうという状態があれば、不眠症の可能性があります。

不眠症には、「慢性不眠症(慢性不眠障害)」と「短期不眠症(短期不眠障害)」の2つに分けられ、不眠症の症状が週に3日以上あり、3ヶ月以上続くと慢性不眠症と診断されます。

不眠症状の特徴

不眠症状には、色々な症状があります。また、複数の症状を併せ持つ方も。以下のような症状があります。

入眠障害:就寝から30分~1時間以上寝付くことができない
中途覚醒:夜中に何度も目が覚めてしまう
早朝覚醒:起床時刻の2時間以上前に目が覚めて再度眠ることができない
熟眠障害:眠りが浅く熟睡したという感覚を得ることができない

これらの不眠症状は、不眠症以外の睡眠障害でも広くみられる症状です。また、症状の中では、入眠障害を訴える人が最も多く、高齢になるにつれて中途覚醒・早朝覚醒が増える傾向があります。 

自律神経失調症について

自律神経失調症とは、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れて、それが原因で心身に症状が現れること。自律神経失調症には、色々な原因が考えられ、不規則な生活や、ストレス、更年期におけるホルモンの乱れなどさまざまです。また、症状も様々で、以下のようなものが挙げられます。

全身症状:だるい、寝れない、疲れがとれない など
器官的症状:頭痛、動機、息切れ、めまい、のぼせ、立ちくらみ、下痢、便秘、冷え など
精神症状:情緒不安定、イライラ、不安感、うつ など

 

自律神経が乱れる主な原因

ここからは、自律神経が乱れる原因となる刺激についてご紹介していきます。

日中の過度なストレス

バランスのとれた状態の自律神経は、活動の多い日中は交感神経が優位になり、夜に向かうにつれて副交感神経が優位になります。しかし、日中のストレスが過度になり、リズムが乱れてしまうと、夜になっても交感神経が優位な状態のままになってしまいます。

人がストレスを感じる要因は、個人差が大きく様々なことが引き金となります。仕事、過程、人間関係、経済、偏った食生活や睡眠不足、運動不足など、色々なことが考えられるでしょう。

夜間のスマホ・パソコンの使用

自律神経は、私達の意思とは関係なく、24時間の周期でバランスをとっています。朝、太陽の光を浴びることで交感神経が優位になり、夜になるにつれて、副交感神経が優位な状態にシフトしていきます。

しかし、私達の生活に密接に関わるブルーライトを発する機器は、時間帯によっては脳を感違いさせてしまいます。ブルーライトの光を浴びると、脳は昼間に太陽光を浴びていると錯覚してしまいます。そのため、本来副交感神経が優位になる時間帯にスマートフォンやパソコンを触ることは、自律神経を乱す行為だと言っても過言ではありません。

睡眠時の適切でない「音・光・温度」

夜間睡眠をとるためには、寝るまでの過ごし方はもちろんですが、実は睡眠をとるための睡眠環境が整っていることも大切です。睡眠環境とは、寝室の温度、照明の明るさ、音、湿度、風、香り、そして寝具や服装などのこと。この環境が整っていないことがストレスとなり、交感神経を優位にしてしまうことも。

 

自律神経を整えてグッスリ眠る方法

最後は、自律神経を整えて、眠りやすくするための習慣をご紹介します。なかなか眠れないと感じたことがある方は、ぜひ取り入れてみて下さいね。

寝る前のルーティンを大切に

まずは生活習慣を整えることが大切です。決まった時間に食事を摂ったり、同じくらいの時刻に床に就くなど、規則正しく生活することは、質の良い睡眠をとるための基本となります。しかし、そのうえでポイントもいくつかあります。

まず気をつけたいのが食事の時刻。夜寝る前の食事や夜食は、消化活動が睡眠の妨げになってしまう可能性があります。決まった時刻に食事を摂るように心がけましょう。また、緑茶やコーヒーなどのカフェインが含まれるものも、覚醒作用があるため望ましくありません。敏感な方は、5〜6時間前から控えるのが良いでしょう。

夜のシャワー浴や入浴については、、寝つきを考えると寝る2〜3時間前がベター。また、半身浴も同様の効果があると言われています。

そして、気をつけたいのがスマートフォンやパソコンなどの電子機器との付き合い方。規則正しく生活をしていても、寝る前に電子機器を触り、ブルーライトを長時間浴びてしまうと体内時計が乱れてしまいます。寝る前のブルーライトはできるだけ避けたいところです。

腸内環境が整う食生活を

近年、腸内環境を整える「腸活」が注目されています。腸内細菌のバランスを整えることで、心身にさまざまな良い影響があると言われています。そして、実は睡眠にも関係することが分かっています。望ましい腸内細菌のバランスは「善玉菌:2 悪玉菌:1 日和見菌:7」。そして、体にとって良い働きをしてくれる「善玉菌」を取り入れ、増やすことがポイントとなります。

食事のポイント

□食事時刻を規則的にする
□食べてすぐに寝ないようにする
□カフェインが含まれる飲食物は4時間前から控える(敏感な人は5〜6時間前)
□発酵食品、水溶性食物繊維、オリゴ糖は積極的に摂る
□寝る前のアルコールを習慣にしない

睡眠環境を整える

前述しましたが、睡眠環境とは、寝室の温度、照明の明るさ、音、湿度、風、香り、そして寝具や服装などのこと。この環境を整えることが質の良い睡眠に繋がりますが、理想の環境は季節によって異なります。

理想の寝室環境

□室温:16〜19度(冬季)、26度前後(夏季)
□湿度:50〜60%(通年)
□光環境:寝室の明かりは照度30lx以下、色温度3000K以下
       睡眠中の推奨照度は0.3〜1lx(基本的には真っ暗な部屋が良い)
□音環境:衝撃音は45dB以下、連続音は30dB以下

理想の寝床内環境

□室温:32〜34度
□湿度:45〜55%
□寝姿勢:脊椎が立っている姿勢と同じ状態になり、寝返りが打ちやすい姿勢

その他のポイント

□通気性、吸水性、保温性の高い自然素材の寝具やパジャマを使用する
□夏の暑い時期は送風や氷枕で頭を冷やすことで体感温度を下げる
□冬の寒い時期は寝る前に寝具を温めておく
□鎮静作用がある香りなどを活用する(ラベンダー・オレンジスイート)

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まとめ

睡眠は、健康に生きていくために重要な役割を担っています。心身の健康を思い、食事や運動を意識していても、自分に合った睡眠をしっかりととれていないと、十分な効果を得ることはできません。睡眠に関する悩みがある方は、ぜひ何かひとつでも実践に移してみましょう。良い睡眠を味方につけ、心身共に健康でありたいですね。

参照:
北堂真子.良質な睡眠のための環境づくり-就寝前のリラクゼーションと光の活用-.バイオメカニズム学会誌,Vol.29,No.4,2005,p 194-198 
都築和代.温熱環境と睡眠.日生気誌,2014,50(4),p 125-134

この記事の監修者

田中 康規 麻酔科医/ヘルスコーチ

 
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