2024.11.28

食事・栄養

エルダーベリーの効能は?|入手方法・毒性・副作用も解説

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竹内 久美

産婦人科医/ヘルスコーチ

エルダーべリーは、ヨーロッパでは石器時代から食べられており、ギリシャ・ローマ時代には「万能の薬箱」「田舎の薬箱」と呼ばれ、風邪などの感染症予防や歯の鎮痛剤として使用されてきました。

そんなエルダーベリーの効能・毒性などを中心に、詳しく解説していきます。

エルダーベリーとは

エルダーベリーの基本から、ご紹介していきます。

エルダーベリーの基本情報

エルダーベリーは、スイカズラ科ニワトコ属の「エルダー」という落葉低木植物の果実のことで、初夏になるとエルダーフラワーと呼ばれる小さな白い花を枝先に一斉に咲かせます。

この花が咲いた後に「ビルベリー」によく似た黒色を帯びた紫色の果実をつけますが、この果実こそが「エルダーベリー」です。日本のエルダーベリーは完熟すると赤くなりますが、ヨーロッパのエルダーベリーは完熟すると黒くなるという違いがあります。

植物名/花名/果実名 エルダー / エルダーフラワー / エルダーベリー
原産地/自生地 北米・ヨーロッパ / フランス中部のトゥーレーヌ地方
名前の由来 エルダーは、アングロ・サクソン語で「炎」を意味する「エルド」から来ており、エルダーベリーの芯を抜き、ストロー状にしたものを火おこしの道具として使用していたことから名づけられました。日本ではエルダーベリーの木の枝・幹などを打撲・骨折・打ち身などの時に使用する湿布薬として使用していたため、「接骨木」という名前でも呼ばれています。
調理法 酸味が強いため生で食べることはなく、パイ・フルーツソース・シロップ・ジャム・ゼリーなどに加工されたり、ワインの材料として使われたり、着色料として使われたりします。
食べられない部分 生・未熟な果実・種子・葉・樹皮には人体に有毒な成分が含まれているため、熟した果実・花以外は食べられません。

エルダーベリーに含まれる成分および性質

エルダーベリーには「万能の薬箱」と呼ばれるように、実にたくさんの成分が含まれています。多くの成分が含まれているということは、それだけ様々な効能を持っているといっても過言ではありません。

成分 成分の説明 効能
ポリフェノール イソケルセチン 様々な植物に含まれている成分 骨粗しょう症の改善
ルチン 強力な抗酸化作用を持つフラボノイド化合物の仲間。 心臓疾患・動脈硬化・高血圧などの生活習慣病の予防。高血圧・血糖値の回復作用。炎症・出血の抑制。
アントシアニン 「アントシアニン」と「糖」で構成された青紫色の天然色素。植物が身を守るために作り出したファイトケミカル。 強い抗酸化作用
ビタミン ビタミンA 油脂に溶ける脂溶性ビタミンの一つ。多く摂取しすぎると肝臓に蓄積し、不調を起こす原因になる。 目の健康維持・皮膚を清浄に保つ働き
ビタミンC 皮膚・血管の老化を防ぎ、免疫力を高める働きを持つ抗酸化ビタミン コラーゲンの合成により骨を丈夫にしたり、肌にハリを持たせる効果・シミ予防などの美肌効果・抗ストレス効果

 

エルダーベリーの効能

エルダーベリーを摂取すると得られる効果について詳しく解説いたします。

生活習慣病予防効果

エルダーベリーに含まれている「イソケルセチン」には、血液サラサラ効果・アレルギーや脂肪の吸収を抑制する効果があります。また「ルチン」には血管を強化し、血流をスムーズにすることで血圧を下げるという働きもあります。

このことから、エルダーベリーには血管が詰まることで発病する動脈硬化・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病を予防する効果が期待できます。

視機能維持効果

エルダーベリーには目に良い効果をもたらすとされる「アントシアニン」「ビタミンA」が豊富に含まれています。これらの栄養素は、目から脳への情報伝達を行う働きをする成分で、ものをスッキリ見るために大切な働きを担っている成分です。

そのため、アントシアニン・ビタミンAが含まれているエルダーベリーは、疲れ目予防・疲れ目改善に優位に働き、視機能の維持効果に期待できます。またエルダーベリーにはブルーベリーの約8倍ものアントシアニンが含まれているため、目への効果はより強力といえます。

感染症予防・改善効果

エルダーベリーには「ビタミンC」が豊富に含まれているため、摂取することで体内に侵入した細菌・ウイルスなどの異物を撃退する白血球を強化する効果を得られます。

そのためビタミンCを摂取することで、免疫力向上・風邪などの感染症予防・感染症からの回復力向上などの良い効果が期待できます。またエルダーベリーに含まれるポリフェノールの強い抗酸化作用により、インフルエンザの予防効果も併せて確認されています。

抗ストレス効果

エルダーベリーに含まれているビタミンCには、抗ストレスホルモンの「副腎皮質ホルモン」を合成したり、神経伝達物質の合成を助ける働きがあります。これらの働きによりストレスへの抵抗力を高め、強化する効果もあります。

美肌・美白効果

エルダーベリーに含まれる「ポリフェノール・ビタミンC」の働きにより、紫外線などから肌を守り、シミ・シワの形成を防ぐ効果があります。紫外線を浴びると肌の内部でシミ・そばかすの原因となる「メラニン色素」が生成されます。

メラニン色素はアミノ酸の一種である「チロシン」から作られますが、ポリフェノール・ビタミンCにはこのチロシンの働きを抑制し、シミ・そばかすの原因になるメラニン色素の沈着を防ぐ効果があります。

またビタミンCにはメラニン色素を素早く分解する働きもあるため、日焼け後の肌の再生効果も向上することから、エルダーベリーは美肌・美白に効果の高い果実とされています。

健康体維持効果

エルダーベリーに含まれているビタミンCは、体の組織・細胞をしっかり結びつける接着剤としての役割を担っている「コラーゲン」の合成に必要不可欠な成分で、コラーゲンの働きにより丈夫な血管・筋肉・骨・肌などを保てています。

ビタミンCにはコラーゲンの合成を助け、骨粗しょう症・懐血病(ビタミンCの不足により、体内の各器官に出血性の障害が生じる疾患)などを予防する効果もありますし、エルダーベリーに含まれる「ビタミンA」には目・鼻・口などの粘膜保護、肌・髪・爪を健康な状態に保つ働きもあります。

 

エルダーベリーの毒性および副作用

エルダーベリーの毒性および副作用について解説いたします。

エルダーベリーの安全性

エルダーベリーには「毒」があると聞いたことがある方も多いと思います。上記の表でも少し触れましたが実は、生の熟していないエルダーベリーの葉・幹など、果実以外の部分には「サンブニグリン」などの毒性物質が含まれています。

もしエルダーベリーの熟していない果実・葉・幹などを口にすると、嘔吐・下痢などの症状が現れ、大量に摂取すると重篤な症状を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。もちろんエルダーベリーを調理すればこれらの毒性は取り除かれるため、生のエルダーベリーを摂取するのは控える方が無難です。

また妊娠中・授乳中にエルダーベリーを摂取した場合の安全性については、現段階ではほとんど分かっていません。

エルダーフラワーとエルダーベリーの違い

エルダーフラワーは、エルダーベリーが果実として実る前の花の呼び名です。エルダーフラワーはイギリスの初夏の訪れを告げる花で、マスカットのような甘い香りを放ち、様々な薬効があることからハーブとして利用されています。

ヨーロッパでは、病気・悪霊を寄せ付けないために、家の側にエルダーを植える習慣があったようです。

 

エルダーベリーを摂取する方法

エルダーベリーを効率よく摂取する方法について解説いたします。

エルダーベリーが配合されたサプリ

昨今では、エルダーベリーの成分が入ったサプリが多く市販されています。ネット通販でも購入できますし、自宅近くの薬局でも販売されている場合もあるため、入手しやすいサプリとして広く知られています。

これらのサプリは、風邪・インフルエンザおよび様々な症状・疾患に良いとされていますが、COVID-19(新型コロナウイルス)に対する効果は証明されていないため、COVID-19の予防・治療には使用しないようにしてください。

エルダーベリーシロップ・ジャム

エルダーベリーシロップ・ジャムもネット通販で簡単に手に入れられますし、自宅でも簡単に作れるためおすすめです。エルダーベリーシロップは、ヨーロッパでは昔から家庭の民間薬として常備されていました。

日本ではオーガニック・自然食品店・ハーブを取り扱うお店でエルダーベリーのドライタイプが入手できます。

エルダーベリーシロップの作り方

エルダーベリーシロップを手作りし、普段から摂取することで免疫力がアップします。エルダーベリーはそのままでは苦味のある味をしていますが、シロップ・ジャムのように甘味をプラスすることで美味しくいただけます。

【材料】
ドライのエルダーベリー 10g
シナモン 3g(1本)
クローブ 2g
生姜スライス 2枚程度
水 800㏄
砂糖 200g

ドライのエルダーベリー・シナモン・クローブ・生姜スライス・水を鍋に入れて弱火にかけ、じっくり煮込んで水分を飛ばします。鍋の中の液量がおよそ1/3~1/4になったところで火を止め、ザルで濾し抽出した液のみ小鍋に入れます。小鍋に入れた抽出液の中に砂糖を加え、再び小鍋を火にかけ、溶けるまで5分ほどかき混ぜると完成です。

出来上がったシロップは、煮沸した瓶などに詰めて保管してください。透明の空き瓶もしくは遮光瓶なら、日の当たらない涼しい場所で4~5か月ほど保存が可能です。砂糖は煮詰めた後の液量により変化させ、その液量と同じ分量の砂糖を入れると、程よい味になります。

エルダーベリージャムの作り方

エルダーベリージャムは、コーヒー・紅茶に入れて飲む方法やスコーン・クッキーなどに乗せて食べる方法、ヨーグルトに入れたり焼き菓子の材料として活用する方法もあります。

【材料】
ドライのエルダーベリー 100g
きび砂糖 30g
水 100㎖
はちみつ 1/4カップ(約50㎖)
レモン果汁 少々

小鍋にドライのエルダーベリー・水を入れ弱火で煮込み、煮立ってきたらきび砂糖を加え、鍋の縁面に焦げがつかないように時々かき混ぜながら丁寧に煮詰めていく。水分が減り、トロミが出てきたらレモン果汁を加え火を止める。

消毒済みの瓶に移し、その上からハチミツをたっぷり加えて蓋をし、冷蔵庫で保管する。冬が来る前に作り、ひと冬で使い切れる量を作るようにしてください。

何度も蓋を開け閉めして空気に触れさせたり、取り出すときのスプーンに細菌が付着しているとカビの原因になるため小分けして冷凍し、使う分だけを冷蔵庫に移動させて1~2週間で使い切るのもおすすめの方法です。

取り出した後、瓶の縁や蓋についたジャムは、できるだけ奇麗に取り除き、ジャムの面を平らに整えてから蓋をしっかり閉めて冷蔵庫に戻して保管するようにしてください。

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まとめ

エルダーベリーには私たちの健康に欠かせない良い成分がたくさん含まれていますが、摂取部分や摂取方法を間違えると重篤な症状を起こす果実です。エルダーベリーの正しい摂取方法に対する理解を深め、「万能の薬箱」と称されるエルダーベリーを食生活に取り入れてみてくださいね。

この記事の監修者

竹内 久美 産婦人科医/ヘルスコーチ

 
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