2023.10.03

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酸化ストレスは病気や不調を引き起こす?|予防するための方法を解説

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竹内 久美

産婦人科医/ヘルスコーチ

活性酸素によって引き起こされる「酸化ストレス」という現象をご存知でしょうか?長期的に酸化ストレスにさらされている状態が続くと、生活習慣病やガンを発症するリスクが高めると言われています。

活性酸素は身体に悪いイメージを持たれることが多いですが、実際は健康維持に重要な働きを持っており、活性酸素そのものが悪いのではなく過剰に増え過ぎることが問題となります。

この記事では活性酸素の基本的な知識に基づいて酸化ストレスがもたらす身体への影響や、酸化から身体を守る予防策について詳しくご紹介いたします。

酸化ストレスについて

酸化ストレスを理解するためには、活性酸素と抗酸化力についての知識が必要です。この2つの効果や身体にもたらす影響の理解を深めると共に、酸化ストレスになることでどのような症状を引き起こすのかご紹介します。

酸化ストレスとは?

人が呼吸をして酸素を取り入れる過程の中で、大半は純粋な酸素として全身を巡ります。しかしそのうちの数%は、他の物質と結びつきやすい活発な特性を持つ酸素として「活性酸素」と呼ばれる物質が体内で作られています。

活性酸素は、主に細胞伝達や免疫機能の向上に活躍する物質であり、健康を維持するにあたって必要不可欠な存在です。しかしこの物質が体内で大量に生成され処理が追いつかずに蓄積した場合は、細胞を攻撃し組織を傷つけ健康に悪影響をもたらす物質へ変化してしまうという特性を持っています。

とくに脂質やタンパク質、糖などに結合しこれらの物質を酸化させてしまうことで、糖尿病生活習慣病を引き起こしやすくしていると言われています。酸化とは科学反応の一種であり、リンゴの色が変色するのも酸素にさらされることによって「酸化」という劣化が始まっているのが理由です。

この原理が、体内でも同じような現象として起こっています。活性酸素が過剰な状態になることにより身体にも酸化が起こり、機能的な細胞の老化に近い状態となるのです。

ここで活躍するのが、人間が本来持っている抗酸化力です。さまざまな要因によって増えすぎた活性酸素を適度な量に戻すために、抗酸化防御機構という体内システムが大きく働きます。

通常は、この一連の流れで活性酸素の量を調整し健康を維持していますが、さまざまな要因により過剰になり過ぎた活性酸素の処理が追いつかずバランスが崩れた状態、活性酸素量が通常よりも上回ってしまった状態を「酸化ストレス」と言います。

酸化ストレスがもたらす病気・症状

酸化ストレスの状態が長期間続くと、以下のような病気や症状を引き起こす可能性が高くなります。

病気

・ガン
・動脈硬化
・高血圧
・心疾患
・糖尿病

症状

・不眠
・倦怠感
・集中力の低下
・頭痛

 

酸化ストレスが増える原因とは?

酸化ストレスを引き起こす要因はさまざまですが、その中でも特に注意すべき3つの要因について解説します。

タバコ・アルコール

タバコの煙の成分には、有害な物質が数多く含まれています。喫煙によって身体が煙の成分を有害物質と判断し、肺に取り込まれた物質を取り除こうと働くことで白血球が増殖します。その過程の中で多くのエネルギー消費が行われることから酸素供給もより活発になり、活性酸素が増えやすい状態が作り出されます。

喫煙本数が多い人ほど成分による影響を多く受けるため、非喫煙者と比較すると活性酸素の保有量は非常に高いと言われています。アルコールも同様で、肝臓がアルコール成分を解毒しようと働くため飲酒の量が多い程エネルギー代謝が活発になります。嗜好品の一つとして楽しむ程度であれば問題ないですが、できるだけ喫煙本数や飲酒の量は少なくすることがおすすめです。

紫外線・大気汚染

活性酸素を発生させる要因として、紫外線や大気汚染などの外部環境も大きく関係します。特に紫外線の中でも波長の長いUV-Aは皮膚の表面を直接刺激し、いわゆる光老化(肌の老化)を引き起こします。強い紫外線が肌を直接攻撃し表面に存在するコラーゲンなどの組織に影響を与えることで、皮膚の老化が進みシミやしわ、たるみの原因になると言われています。

夏の紫外線の強い時期に美白ケアとしてビタミンCの商品が推奨されているのも、紫外線によって受けたダメージを皮膚表面からも抗酸化ケアし、活性酸素によって引き起こされるダメージに対応する働きを行うためです。

それだけではなくUV-Aは皮膚を介してその奥の真皮にも作用し、活性酸素を発生させます。そうすることで細胞やDNAなどを損傷させ体内にも影響を及ぼします。

紫外線が強くなる時期はもちろんのこと、天候が悪い日でも紫外線は存在しています。できるだけ外出の際は日焼け止めや日傘を用いて紫外線対策を心がけましょう。

そして、大気汚染であるダイオキシンの一部にも活性酸素を発生させやすい性質を持つ物質が存在しており、外気に長時間さらされていると大量に発生しやすくなると言われています。仕事や生活の都合上、大気汚染の多い地域や場所を拠点としている場合は特に体調管理に注意しましょう。

激しい運動

日頃からトレーニングをしていて、継続的に負荷の強い運動を行っている場合と突発的に激しい運動を行う場合では身体にかかる負担は大きく異なります。激しい運動を行うことにより、エネルギーの消費が大量になることから多くの酸素を身体は必要とし、酸素をたくさん取り入れようと脈拍が上昇し呼吸回数も早くなります。酸素供給が多ければ多い程、活性酸素の発生率も高まります。

日常的に健康目的で運動を行う場合は、できるだけ負荷の強いものではなく有酸素運動(ウォーキングやジョギング、水泳など)がおすすめです。激しい運動を行う時はいつも以上に入念に準備体操を行い、身体のコンディションを整えてから開始するようにしましょう。

運動強度を理解して運動すべき理由|行動別エネルギー消費量も解説

 

酸化ストレスを予防する方法

酸化ストレスを予防するために必要なことは、原因物質である活性酸素を除去することではなく予防し抗酸化力を高めることです。その中でもおすすめの3つの予防策についてご紹介します。

バランスの取れた食事

抗酸化力を高めるためには栄養バランスも重要です。食品の中には抗酸化作用の高い成分を含むものが数多く存在しています。特に抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンA、C、E(エース)は活性酸素の発生を抑制し、除去する働きや過酸化脂質を抑制する働きを持っているため高い効果を得ることができます。積極的にフルーツやナッツ類、ブロッコリーなどを意識して日常に取り入れてみましょう。

酸化されやすい脂肪を多く含むスナック菓子や、インスタントラーメンのような加工品を摂取すると活性酸素と結合しやすい脂質が増加し、活性酸素が増えた場合と同じような影響があると言われてます。栄養素を取り入れるだけではなく食生活そのものを見直し、より健康的な食事を意識することが大切です。

良質な睡眠

睡眠の効果は多様であり、健康を維持するためにさまざまな場面で活躍しています。自律神経にも大きく関与しており、交感神経が活発な日中と比べ夜間の入眠時は副交感神経が優位に働き、心身共にリラックスした状態を得ることができます。

良質な睡眠をとることは成長ホルモンの分泌の促進を良好にすることから免疫機能、細胞修復にも活躍します。活性酸素によって受けたダメージの修復も促すことができ、予防に役立ちます。 

活動と休息のバランスをしっかりとり、活性酸素によって引き起こされる酸化ストレスから身体を守る土台作りは欠かせません。良質な睡眠の獲得を目指し睡眠環境を整えてみてはいかがでしょうか。

ストレスケア

人はストレスを感じると、副腎皮質からコルチゾール(ストレスホルモン)という物質を過剰に分泌します。コルチゾールは主に血圧や脈拍の上昇に働きかけ血糖値にも関与する物質です。このホルモンが多く分泌されることによって多くのエネルギー代謝が活発となるため、ここでも酸素供給が通常よりも多く必要となります。

ストレス社会の現代でストレスを感じずに過ごすことは難しいですが、日々の生活の中でリラックスできる習慣を身につけ、心を落ち着かせる環境作りやご自身にあったストレス解消方法を見つけることがおすすめです。

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まとめ

酸化ストレスによって引き起こされる症状や病気のリスクを軽減させるために重要なことは原因物質である活性酸素そのものを除去することではなく、過剰に増えすぎないように予防することです。

活性酸素は自然現象の一部であり、常に酸素と共に生成されています。増え過ぎないことを意識し、上手にバランス良く付き合っていく必要があります。そして加齢と共に減少していく抗酸化能力を高め、体内から健康的な身体作りを目指しましょう。

 

この記事の監修者

竹内 久美 産婦人科医/ヘルスコーチ

 
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