「ラクチュロース」という言葉を聞いたことがありますか?腸活に興味のある方は、もしかしたら知っていたり、すでに摂り入れていらっしゃる方もいるかもしれません。また、聞いたことも見たこともないという方もいらっしゃると思います。
今回は、ラクチュロースにどのような効果があるか、摂り過ぎによる危険性、そして実際にどのような摂り方があるのかについて解説していきます。また、ラクチュロースをおすすめしたい方についてもご紹介していきますので、気になる方は是非チェックしてください。
ラクチュロースの基本
まずは、ラクチュロースが一体どのようなものなのかというところから解説していきます。
ラクチュロースとは
ラクチュロースとは、難消化性オリゴ糖の一種です。難消化性オリゴ糖とは、消化酵素によって分解されないため、小腸から吸収されずに大腸に運ばれる難消化性の糖です。難消化性オリゴ糖には、母乳に含まれるガラクトオリゴ糖や、アスパラガスや玉ねぎなどに含まれるフラクトオリゴ糖などがあります。
ラクチュロースは、炭水化物に分類されます。一般的な炭水化物のエネルギー量は4kcal/gですが、ラクチュロースは1.5〜2kcal/gと低カロリーであり、さらに血糖値や血中フルクトース濃度、インスリン濃度に影響を与えないという性質があります。ラクチュロースは、乳糖を原料として工業的に作られており、一般的には天然には存在しないとされています。しかし、生乳を殺菌して得られる牛乳等には微量に含まれています。
ラクチュロースの効果と副作用
基本的なことを知ったうえで、気になるのは働きです。ここからは、ラクチュロースがどのような働きをしてくれるのかについて解説していきます。
ラクチュロースとビフィズス菌
私達の心身の健康を保つためには、腸内環境が大きく関係しています。そして、この腸内環境の鍵となるのが腸内細菌です。私達の体には沢山の菌が存在していますが、その中でも最も多くの細菌が存在しているのが腸です。その数、なんと100兆個!この100兆個のバランスが良いことが重要です。
【腸内に棲む菌】
善玉菌:体にとって良い働きをしてくれる菌(ビフィズス菌、乳酸菌など)
悪玉菌:増え過ぎると体に悪さをしてしまう菌(ウェルシュ菌、ブドウ球菌、大腸菌の有毒株など)
日和見菌:優勢な菌に加勢する菌(バクテロイデス、大腸菌の無毒株、連鎖球菌など)
本題はここからになりますが、ラクチュロースは腸内の善玉菌であるビフィズス菌の増殖を促進する働きがあります。ラクチュロースは小腸で消化・吸収されず大腸に到達し、そこでビフィズス菌などの腸内細菌によって発酵されます。この過程で生成される短鎖脂肪酸(酢酸や乳酸)が腸内環境を酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑えるとともに、ビフィズス菌が増加します。適量のラクチュロースを継続して摂取することで、腸内フローラが改善され、腸内環境が整います。
ラクチュロースの有効性
ラクチュロースが、善玉菌であるビフィズス菌を増やしてくれる働きがあるということが分かりましたね。ここからは、その他にラクチュロースを摂ることで体にどのような効果があるのかついて解説していきます。
腸内環境改善
最も期待できる効果として、上記の腸内の善玉菌であるビフィズス菌の増殖があります。ビフィズス菌が増えることにより、便中に排出される腐敗産物や有害産物を作る酵素の濃度が低下したり、便の状態や量や回数の変化がみられ、腸内環境の改善が期待できます。結果として、便秘の予防や改善のみならず、大腸がんのリスクを減らすことにも繋がります。また、腸内環境の悪化が原因で起こる肌荒れや体臭・口臭などの臭いに関する悩みの解消も期待できそうです。
骨粗鬆症の予防
ラクチュロースは、動物実験においてカルシウム及びマグネシウムの吸収及び体内保持率を高めることが確認されています。骨粗鬆症のラットに対する実験においても、一定量のラクチュロースを摂取することが骨の強化に繋がることが示されています。ただし、これらの結果が人間にも同様に適用されるかについては、さらなる研究が必要です。
免疫力の向上
腸内環境は、免疫やアレルギーに関係していることが知られています。これは、善玉菌が産生する短鎖脂肪酸が大きく関わっています。短鎖脂肪酸の働きにより、腸内細菌のバランスが整い、腸のバリア機能や過剰な免疫反応を抑える制御性T細胞が増えます。その結果として、免疫機能が調整され、炎症性腸疾患やアレルギー性疾患の抑制に繋がることが期待されます
生活習慣病の予防
肥満や糖尿病などの生活習慣病にも腸内環境が関係していることが分かっています。腸内細菌のバランスが崩れることにより、良い環境下ではポジティブな働きをしてくれる短鎖脂肪酸が脂肪の貯蓄やエネルギーの保持を誘導してしまいます。実際に、肥満や糖尿病患者の腸内細菌のバランスは、そうでない人に比べ悪玉菌が占める割合が高くなっている傾向があります。すなわち、腸内環境を整えることが、生活習慣の予防や治療に繋がることになります。
肝疾患の改善
肝臓は門脈という太い血管によって、腸管と直接繋がっています。そして、肝臓と腸管の状態は深く関係しているということが分かっています。高脂肪食や様々なストレスにより腸管のバリア機能が破綻すると、炎症シグナルを誘導し、肝繊維化や肝臓がんを促進させてしまいます。また、腸内細菌のバランスが崩れアンモニアが増加すると、高アンモニア血症や肝性脳症を引き起こす可能性も。血液中のアンモニアを低下させる治療薬としてラクツロース(ラクチュロースが薬剤となったもの)が有効であることが分かっています。
副作用
ラクチュロースは通常、適量であれば安全ですが、過剰に摂取すると便が緩くなったり、下痢を引き起こすことがあります。薬剤として使用される場合、稀に下痢、悪心、嘔吐、腹痛、腹鳴、鼓腸、食欲不振といった副作用が報告されています。また、ガラクトース血症の患者には禁忌ですので、自己判断での使用は避け、医師の指示に従うことが重要です。
おすすめな人と効果的な摂り方
最後は、おすすめな人と摂り入れ方を簡単にご紹介します。
おすすめな人
以下のような症状がある方は、もしかしたら腸内環境が乱れているかも知れません。腸内環境が整うことで改善される可能性もあるので、一度試す価値ありです。
・便秘や下痢などお通じに関する悩みがある
・食事、運動、睡眠などの生活習慣が乱れがち
・風邪などで体調を崩しやすい
・アレルギー 症状がある
・肌荒れが気になる
・気分の浮き沈みが激しい
・更年期
・もっと元気に過ごしたい など
含まれる食品と選ぶポイント
ラクチュロースが含まれる食品をご紹介します。ラクチュロースは乳糖を原料として工業的に作られているため、ラクチュロースを取り入れる際には野菜や果物からの摂取ではなく既製品からの摂取となります。
ヨーグルト
手軽に摂りやすいもののうちのひとつにヨーグルトがあります。普段からヨーグルトを食べる習慣のある方は摂り入れやすいでしょう。注意点としては、乳糖不耐性や乳製品のアレルギーがある方には不向きです。
シロップ
ラクチュロースが含まれるシロップも比較的取り入れやすいもののひとつです。普段の料理で使う甘味料として使用することもできます。その他、飲み物やデザートなどにかけて食べることもできます。注意点としては、ヨーグルト同様に乳製品のアレルギーの人には向かないという点と、腸に良いからと糖分の摂り過ぎには気を付けましょう。
ドリンク
ラクチュロースが含まれた飲み物も摂りやすいでしょう。箱買いすると、毎日の習慣にもなりやすく、手軽に摂ることができます。気を付けたいのが、成分表の内容です。ラクチュロースを摂りたかったのに、肝心のラクチュロースの量が少なかったり、他の人工甘味料や保存料などの添加物がたくさん含まれているということも。
サプリメント
ラクチュロースが含まれるサプリメントという方法もあります。サプリメントを常用することに抵抗がある方には不向きかも知れませんが、元々サプリメントを摂っている方やとにかく手軽に!という方にはおすすめです。サプリメントを選ぶ際も同様に、成分表をしっかりとチェックすることが大切です。
サプリメントを選ぶときには、価格帯や成分等、自分自身の基準を持っておくと良いでしょう。天然成分100%であること、できる限りオーガニックのもの、添加物の使用がないもの・少ないもの、認証を受けており安心できるものなどがお勧めです。
まとめ
近年注目を集める「腸活」の知識が、またひとつ増えたのではないでしょうか。忘れてはいけないのは、心身共に健やかでいるためには毎日の生活習慣が何より大切だということです。そして、健やかな腸のためには毎日の食事が本当に重要です。まずは毎日発酵食品を一品取り入れるところからスタートしても良いかもしれませんね。
参照:
1.鈴木和春,遠藤幸江,上原万里子ら、日本栄養・食糧学会誌38,39(1985)
2.溝田輝彦,多様な側面を持つラクチュロース:開発と生理効果に関する最近の研究動向,Milk Sience,Vol.50,No 2,2001
3.田妻進,生活習慣病と腸内細菌叢,生物工学会誌,第99巻,第11号,p 573–576,2021