2024.02.20

デトックス

心身が健康になるデジタルデトックスとは?|効果や具体的な方法

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野尻 綾乃

整形外科専門医

デジタル社会といわれる現代で、デジタル機器は私たちの生活にとって欠かせない存在となっています。パソコンやスマートフォン、ゲーム機器やテレビなど、誰もが使用することの多いデジタル機器ですが、過度に使用し過ぎると心身に悪影響を及ぼすことをご存知でしょうか。 

そこで、デジタル機器から身体を守るためには、適度な使用頻度を心がけることが大切です。この記事では、デジタル機器によって起こりうる健康被害を予防するために、おすすめの健康法「デジタルデトックス」について詳しく解説します。

デジタルデトックスについて

まずはデジタルデトックスとは何か、具体的な概要やデジタルデトックスが必要な理由について解説していきます。

デジタルデトックスとは?

デジタルデトックスとは、一定期間デジタル機器(パソコンやスマートフォンなど)から離れることを指します。人との直接的な関わりを増やし自然の中に身を置くことで、現実世界に目を向ける機会を増やし、ストレスの軽減を図る健康法です。

完全にデジタル機器を遠ざけることは難しいかもしれませんが、例えば就寝時間の30分前はスマートフォンを見ない、テレビは1日2時間程度を目標にするなど、デジタル機器を使用する頻度を減らしていきます。

 

デジタル機器による身体への影響

デジタル機器は現代では必需品として、なくてはならないものになっています。その便利さから私たちの生活に豊かさを与えてくれるメリットの多い機器のように思えますが、なぜデトックスをする必要性があるのでしょうか。この項目では、デジタル機器によって引き起こされる身体への影響とデトックスの必要性について解説していきます。

VDT症候群

VDT症候群とは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの表示機器(VDT)を長時間使用することによって、目の疲れや肩こり、強い不安感やイライラ、抑うつ症状など、身体的な症状だけでなく精神的にも不安定な状態を引き起こす病態です。

その中でも、特に現代病の一つとして注目されているのが「スマホ老眼」です。老眼とは、年齢を重ねるに連れて起こる視力低下のことで、目のピントを調整する力が低下することで起こります。しかし、スマホ老眼は20〜30代の若い世代の人にも起こりうるのです。

夕方になると物が見づらい」「手元が見えにくい」という症状が出ている方は注意が必要です。老眼と同じように目のピント調整力が低下しているかもしれません。スマホ老眼の場合、その症状は一時的なものであることが多く、デジタルデトックスを継続的に行うことで症状を改善させることができます。

ストレートネック

ストレートネックとは、長時間同じ姿勢でスマートフォン、パソコン、ゲームを見続けることによって首の骨の並び(頚椎)が本来よりも真っすぐになった状態のことを言います。

本来、人間の頚椎は前方に少し弯曲した並び方をしています。そのたわみによって頭の重量を分散しているのです。ストレートネックになるとたわみによる衝撃吸収の役割がなくなり、直接的に負荷がかかるため首や肩のコリ、痛み、頭痛の症状が現われます。

場合によっては頚髄神経を圧迫することにより、痺れなどの症状が出現することもあります。気付かないうちに身体は大きな負担を受けてしまっているのです。

デジタル脳

デジタル脳とは、成長期の子どもがデジタルスクリーンを利用することで脳に悪影響が及ぶことを指します。日本の研究チームは、平均年齢11歳の子ども233人を対象にインターネットの使用頻度と脳の発達に関する3年間に及ぶ追跡調査を実施しました。

その結果、インターネットをたくさん使用する子どもとそうでない子どもの脳をMRIで画像診断すると、インターネットを使用する子どもは、認知機能の役割を持つ前頭前野、記憶や学習に関与する海馬など広範囲に悪影響が見られたと発表しています。

つまり、単にデジタル機器の使用による勉強時間の短縮が学習能力の低下につながるわけではなく、成長期における脳そのものの発達に悪影響を及ぼした結果であることが証明されたのです。

デジタル機器の脳への悪影響は、子どもに限らず大人も同じです。脳は使用するほど刺激され成長していきますが、デジタル機器によって脳を使うことが少なくなると脳の活性化が阻害されてしまいます。

デジタル機器の依存性の高さは人間の心身に大きな不調を来たすことから、社会的問題として注意喚起されることが増えています。

 

デジタルデトックスの効果

デジタルデトックスを行うことで得られるメリットや健康効果について解説いたします。

時間にゆとりが生まれる

パソコンやスマートフォンを使用しているうちに「いつの間にか時間があっという間に過ぎていた」「本来しなければいけないことができなかった」「睡眠時間を削ってしまった」という経験のある方は少なくないと思います。

隙間時間に情報収集をしたり、細かい作業をすることは、時にはゆとり時間の確保につながる場合もあるでしょう。しかし、隙間時間の断続的な作業は私たちが感じている以上に脳のエネルギーを使っており、集中力を低下させる要因となります。

デジタル機器から距離を置く時間を作ると、過度に働く脳を休息させ結果的にパフォーマンス能力を向上させることができます。少しの時間でもデジタル機器から離れ現実世界に目を向けることで、時間に追われることのない有意義な時間を増やすことができます。時間に対する価値観が変わるかもしれません。

生活の質(QOL)が向上する

多くの人が日常の中でデジタル機器を使用することが習慣になっています。例えば、移動中の電車の中、目的がなくてもスマートフォンを開いていませんか?

ネット環境が身近にあると関心のある分野ばかりに目が行き、現実世界に目を向けることが少なくなります。デジタルデトックスを実践すると現実世界と向き合う機会が多くなり、いつもの日常に新たな気付きや出会いが見つかることがあります。

ある大学では、大学生を対象に食事中のスマートフォン使用による食事の満足度の関係性を調査した結果、ながらスマホをしている大学生の食事への満足度は低いことが明らかになりました。この他の研究においても、生活習慣と並行してデジタル機器を使用すると、人間にとっての満足度や幸福度は低い傾向にあるということが証明されています。

デジタル機器から離れる時間を作ることにより、その時々での充実感や満足感に繋がります。

 

デジタルデトックスの方法

デジタルデトックスの効果的で簡単な方法について、3つご紹介いたします。

環境を整える

どうしてもスマートフォンが気になって手放せないという方は、環境を整えることからスタートしましょう。

・デジタル機器を視界に入らない場所に置く 
・電源を切り、すぐに使用できない状況を作る
・デジタル機器の通知をオフにする

デジタル機器の使用頻度を減らすには、簡単に使用できない環境を作ることが大切です。

使用時間を決める

デジタルデトックスを始めたいけれど、まず何から行えばいいのか分からないという方は、使用時間やタイミングを決めてみてはいかがでしょうか。

例えば、食事中は見ない、寝る前30分以降は使わない、通勤中の電車の中はOK、など日常の行動の中でルールを決めてください。一日中使いっぱなしであることに気づくと同時に、頻度を減らすことができます。

最初は短時間だけ離れることからスタートし、慣れてきたら少しずつデトックスの機会を増やしていくと良いでしょう。

運動する

運動で身体を動かすことも、デジタルデトックスを行う上で効果的な方法の一つです。運動に集中すると、単にデジタル機器から離れる時間になるだけでなく、自分の体の感覚に意識を向ける機会になり、脳の活性化にも繋がります。

 

まとめ

デジタル機器は人間の生活に便利さと豊かさを与える便利な機器ですが、実は心身に悪影響を及ぼす側面があります。依存するのではなく、適度な距離感を持って使用すること、必要な場面に適切に使うことが大切です。

デジタルデトックスにおける効果の実感は人によって異なりますが、実践してみると新たな発見や充実感が得られるかもしれません。ぜひ一度、試してみてください。

この記事の監修者

野尻 綾乃 整形外科専門医

 
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