皆さんは、「フリーラジカル」という言葉を聞いたことはありますか?フリーラジカルは私たちの体内の細胞や代謝活動で作られ、生命を維持する上で必要不可欠なものです。
この記事では、そんなフリーラジカルの身体への働き・影響力を中心に解説していきたいと思います。
フリーラジカルについて
そもそもフリーラジカルとは、一体どのような働きをしているのかを解説いたします。
フリーラジカルとは?
分子は「原子核」と電子という原子の組み合わせで構成されていますが、通常では対になっている電子が対にならず一つだけ離れて存在する電子(不対電子)を持つ原子や分子のことを「フリーラジカル」と呼んでいます。
フリーラジカルを語る上で念頭に置いておかないといけないことは、活性酸素との違いです。それでは、フリーラジカル・活性酸素それぞれの働きについて簡単にみていきましょう。
フリーラジカル | 普通ならペアを組む電子が対にならず単独で存在している状態の電子を指し、単独であるため反応性が高く不安定な動きをする原子や分子が集まっています。そして、体内では有害な作用をもたらす物質。 |
活性酸素 | とても反応性の高い酸素分子のことで、体内で脂質と結合することで有害な過酸化脂質を作り出す。 |
いずれも物質も体内に入れば有害な作用をもたらし、さまざまな病気や嬉しくない変化を私たちに生じさせます。例えば動脈硬化・シミ・シワ・脳神経系の病気・循環器系の病気など、ありとあらゆる器官の病気に関係します。
体の「酸化」にはフリーラジカル・活性酸素が大きく関わっていることが研究により明らかになり、体の酸化こそが老化促進に大きく起因していると知られるようになりました。
酸化ストレスについて
酸化ストレスとは、活性酸素の生産が抗酸化防御機構を上回った状態のことを指します。その結果、通常なら細胞伝達物質や免疫機能として良い働きをしてくれているものが、細胞を壊したり、ガン・心血管疾患や生活習慣病などのさまざまな疾患をもたらすことに繋がります。
活性酸素は私たちの体内で常に作り出されている物質ですが、過剰になると悪さをする活性酸素が体内に合っても維持できているのは、活性酸素から自己防御を行ってくれている抗酸化防御機構が正常に働いているからです。
つまり抗酸化防御機構は、活性酸素の生産量を抑制したり生じたダメージを修復・再生を促す働きをすることで上手くバランスを保ってくれています。このバランスが崩れると抗酸化防御機構の働きが失われ、酸化ストレスが引き起こされます。
酸化ストレスは、紫外線・放射線・大気汚染・たばこ・薬剤・酸化した物質の摂取などが要因となり起こります。酸化ストレスを引き起こさないために、日頃から適度な運動・十分な睡眠・バランスの取れた食事を行うことで、抗酸化防御機構をベストな状態に保ち、酸化ストレスを緩和させられます。
フリーラジカルの体への悪影響
それではフリーラジカルが関係して体にもたらす病気や症状について解説していきましょう。フリーラジカルが体にもたらす影響として、主に以下の症状が挙げられます。
- 酸化ストレスのバランスが崩れることで、慢性疾患の発症や体調不良に繋がる
- 認知症・アルツハイマーを引き起こす要因になる
- シワ・シミなどの肌の老化現象を引き起こす
- 抜け毛・白髪が増える
風邪や体調不良を起こしたときなどの、一時的な酸化ストレスの上昇は、活性酸素が病原菌を殺菌し感染や病気から身体を守る有益な作用を行ってくれます。
一方、長期的な酸化ストレスは体の細胞・タンパク質・DNAに損傷を与え、体のサビとも言える「老化」を引き起こし、さまざまな病気の発症に影響を与えている可能性があると言われています。以下に、慢性的に酸化ストレスが高い場合に起こり得る100以上の疾患のうち、代表的なものをご紹介します。
- 生活習慣病(高血圧・糖尿病・高脂血症・肥満・動脈硬化)
- ガン
- 白血病
- 脳血管疾患(脳梗塞・脳卒中)
- 心臓疾患
- 白内障
- 認知症・アルツハイマー病・パーキンソン病
- 慢性腎不全
- 内臓疾患
- 関節リウマチ
- 慢性疲労症候群
これらの病気以外にも、数多くの疾患が酸化ストレスによりさまざまな症状を引き起こすことが研究によりわかっています。酸化ストレスは炎症反応の引き金にもなるため、酸化ストレスによる慢性炎症は糖尿病・心血管疾患・関節炎などいくつかの病気を引き起こす可能性が高いと言われています。
フリーラジカルが体内で過剰に作られる原因
ここからは、フリーラジカルが発生しやすい習慣について解説いたします。体内で過剰に作られる原因を知って、フリーラジカルを日々増やさない生活習慣を身に付けてくださいね。
生活習慣の乱れ
フリーラジカルは体内でも作られる物質ですが、体外での環境でもフリーラジカルが増えます。その要因として、タバコ・アルコール・インスタント食品の食べ過ぎ・質の低い食事・睡眠不足・ストレスなどが挙げられます。
これらの要因を排除したり改善することで、フリーラジカルの増加を抑制できます。例えば、タバコには抗酸化物質であるビタミンCを破壊してしまう作用があり、煙には大量のフリーラジカルが含まれています。
またアルコールを過剰摂取すると、肝臓自体がアルコールを分解できなくなり、フリーラジカルが発生します。食品添加物・脂質などを摂り過ぎると体内の酸化が促進し、フリーラジカルが発生するため質の低い食事は避けるべきです。
さらに睡眠不足・不規則な睡眠リズムの生活をしているとフリーラジカルが増加しますし、ストレスを貯めることで血管が収縮して血行障害が起こり、酸素の循環が滞ることでフリーラジカルの発生を招くという悪循環に陥るためストレスのない規則正しい生活習慣が大切です。
紫外線・大気汚染
紫外線・大気汚染もフリーラジカルが発生しやすい要因です。紫外線にあたると皮膚にフリーラジカルが大量発生し、シミ・シワなどの皮膚の変化や見た目の老化が顕著に現れます。
トラックなどのディーゼルエンジンによる排気ガスなどの大気汚染自体にもフリーラジカルが含まれており、それらに触れることで体内のフリーラジカルも増加してしまいます。そのため、空気の汚染された環境にはなるべく行かないよう気を付けるようにしましょう。
激し過ぎる運動
アスリートのように激し過ぎる運動をすると、体内の酸素摂取量が多くなるため、体内にフリーラジカルを過剰に吸収してしまいます。そのため、一般の方が健康や美容のために運動をする場合は、自分にあった無理のない適度な運動を心掛けることが大切です。
健康・美容を損なわないための習慣
それでは健康・美容を損なわないためには、どのような正しい習慣を身に付ければ良いのか解説いたします。
バランスの取れた食事
バランスの取れた食事とは、タンパク質・脂質・炭水化物(糖質)・ビタミン・ミネラルなどを適量摂取している食事のことを意味します。
必要な栄養素量は年齢や活動量により違いがありますが、主食・主菜・副菜を上手く組み合わせて食べることが大切です。また摂取する栄養素が偏らないように、さまざまな種類(和食・洋食・エスニックなど)の食事を食べることも意識してみましょう。
まずは、食卓の定番である汁ものを具だくさんにしてみると、簡単にバランスのとれた栄養満点の食事を実現できるので、工夫して汁ものをバリエーション豊かにしてみてください。
適度な運動
運動を行うと体全体の酸素消費量は10~15倍になり、活動筋への酸素流入量は約100倍に増えます。そのため、激しい運動を行うことで体内のフリーラジカルの発生が格段に増えることは既にご紹介した通りです。
ところが適度な有酸素運動を行うことで、自分自身の抗酸化能力を高められ、逆に酸化ストレスを軽減させられるという嬉しい現象が起こります。そして、単発で運動を行うよりも持続することで効果が発揮されます。
つまり、適度な有酸素運動を持続的に行うことで、フリーラジカルの発生を軽減させられるのです。
良質な睡眠
睡眠中に疲労した細胞や組織を修復してくれるため、質の高い睡眠を行うことで血圧の安定・脂肪の燃焼・ストレスの解消などの良い影響を与えてくれます。
もちろん良質な睡眠を取ることで、フリーラジカルで起こった損傷を抑える一助にもなります。良質な睡眠とは、寝つきが良い・ぐっすり眠る・寝起きすっきりという「よい睡眠三箇条」を網羅している睡眠のことを指します。
睡眠の質を上げることで、フリーラジカルの状態の体を回復させる効果があり、私たちが感じ取れる疲労のみならず目に見えない部分に蓄積している疲労も取り除けます。
まとめ
フリーラジカルは、私たちの体内で作られるもの以外にも外的要因によっても増加します。そのため、外的要因で作られるフリーラジカルをなるべく避け、私たちの健康に良くない物質を除去することが大切です。
フリーラジカルを寄せ付けない正しい生活習慣を身に付け、病気・老化を予防していきましょう。
参照:
井上正康.活性酸素と病気.化学と生物.Vol.30, No.3,p 184-190