2023.06.16

食事・栄養

生活習慣病を予防するためにすべきこと|病を引き起こすNG習慣は?

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玉井 基弘

歯科医師/ヘルスコーチ

生活習慣病」とは、さまざまな生活習慣が深く関わり発症の要因となる様々な疾患のこと。生活習慣と健康は、切っても切り離せません。普段の生活に気をつけて、いつまでも元気に歳を重ねていきたいですよね。

今回は、「生活習慣病」のこと、そして、生活習慣病に関係する「良い生活習慣」「悪い生活習慣」について解説していきたいと思います。

生活習慣病について

よく耳や目にする「生活習慣病」というワード。そもそも生活習慣病とは、どんな疾患のことを指すのでしょうか。

生活習慣病とは?

生活習慣病とは、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」とされています。

過去には、現在の「生活習慣病」は、「成人病」と呼ばれていました。しかし、成人であっても生活習慣の改善により予防ができ、成人でなくても生活習慣が要因となり発症の可能性があることから改称されました。

そして、生活習慣が発症要因であることが分かり、早期発見・早期治療(二次予防)に加え、健康増進・発症予防(一次予防)に重きをおいた対策が必要であると考えられています。

主な病気には何があるの?

生活習慣病の範囲や定義には、はっきりと定められたものはありません。しかし、健康増進法では「がん、心臓病、脳卒中、糖尿病等」とされています。また、不健康な生活習慣が以下のような症状や疾患を招くことが明らかになっています。

食習慣:インスリン非依存性2型糖尿病、肥満、高脂血症(家族性のものを除く)、高尿酸血症、循環器病(先天性のものを除く)、大腸がん(家族性のものを除く)、歯周病等
運動習慣:インスリン非依存性2型糖尿病、肥満、高脂血症(家族性のものを除く)、高血圧等
喫煙:肺扁平上皮がん、循環器病(先天性のものを除く)、慢性気管支炎、肺気腫、歯周病等
飲酒:アルコール性肝疾患等

日本人の死因の○%が生活習慣病?

2021年の日本人の死因は、以下のようになっています。

1位:悪性新生物(26.5%)
2位:心疾患(14.9%)
3位:老衰(10.6%)
4位:脳血管疾患(7.3%)
5位:肺炎(5.1%)

この中の1、2、4位の悪性新生物、心疾患、脳血管疾患は生活習慣病と言われるものです。実に、主な死因の半分くらいが生活習慣が要因となっている可能性があるということになるのです。

 

生活習慣病を予防するための習慣

生活習慣病にならないためには、一次予防である健康増進、発症予防のための健康的な生活習慣を送ることが大切です。ポイントとなる生活習慣は、「食事・運動・睡眠」です。

ここからは、健康的な生活習慣についてご紹介していきます。

健康的な食習慣

心身共に健康であるためには、健康的な食習慣が大切です。また、体に良いものを摂ることはもちろん、消化・吸収・排泄をスムーズに行うことができる状態であることが大切です。

良い食習慣のポイント

良い食習慣のためには、何をどう食べれば良いのでしょう。以下を参考にしてみて下さい。

規則正しい食事時間
1日3食、決まった時間の食事が望ましいです。夜遅い食事は、肥満や睡眠の質の低下にも繋がるため避けるのがベター。

食事はバランス良く
「○○が体に良い!」と聞くと、そればかり選んでしまいがちですが、バランス良くが基本。主食、副食、主菜、果物などをバランス良く摂りましょう。1日を通して、満遍なく栄養を摂ることを意識できると良いですね。

腸内環境を整える食事を意識する
腸内細菌は、肥満、糖尿病、大腸癌、動脈硬化、炎症性腸疾患などの疾患と密接な関係があります。これらの疾患の人は腸内細菌が著しく変化していることが知られています。腸内環境を整えるためには、善玉菌(体にとって良い菌)を取り入れ、善玉菌のエサとなる食べ物を摂ることが大切。発酵食品や水溶性食物繊維やオリゴ糖の含まれる食品を意識して摂るようにしましょう。

発酵食品:味噌、納豆、漬物、ヨーグルト、キムチ、チーズなど
水溶性食物繊維:海藻類、ごぼう、キノコ類、寒天、オクラ、キウイなど
オリゴ糖:玉ねぎ、キャベツ、アスパラガス、とうもろこし、バナナ、はちみつなど

効果的なファスティングを取り入れる
私達は、体調の悪い時や体調を崩しそうなとき、栄養を取り入れようという意識になりがちです。しかし、そういうときほど消化器を休める時間をとることがおすすめ。また、体調の良いときでもしっかりと空腹の時間を持つことで体にとって良い効果が。

ファスティングをすることで毒素の排出が促され、体内の炎症の鎮静、機能の回復、環境毒素の影響の軽減などたくさんのメリットが期待できます。しかし、ファスティングは、間違った方法で行うと返って悪い影響になる場合もあるため、正しく行いましょう。

初心者もできるファスティング|実践的なスケジュールや注意点を解説

適度な運動

適度な運動は体にとって嬉しい効果がたくさん。実際に、身体活動の多い人や運動を習慣的に行っている人は、生活習慣病などの罹患率や死亡率が低いことが認められています。さらに、メンタルヘルスにも良い効果をもたらすことが分かっています。普段の生活の中で意識して動くことや、歩くことから始めてみても良いかもしれませんね。

激しい運動は老化の要因となる活性酸素を産生してしまうため、軽めの有酸素運動がおすすめです。また、寝る前の運動は睡眠の導入の妨げになってしまう可能性があるため、寝る3時間前までに行うのが良いでしょう。

おすすめの運動

散歩、ストレッチ、ヨガ、ピラティス、水泳、ダンスなど

良質な睡眠

私達が心身共に健康であるために「睡眠」は欠かせません。そして、私達の体は寝ている間もホルモンを分泌させています。中でも、成長ホルモンは睡眠時に分泌が増加するホルモン。成長ホルモンは、特にノンレム睡眠(深い睡眠)の時に分泌が増加し、成長を促す他、疲労の回復や身体修復の働きを担っています。

不規則な生活で良質な睡眠がとれていないと、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、空腹ホルモンが分泌され、血糖値や血圧が上昇してしまいます。

良質な睡眠のためのポイント

・朝起きたら陽の光を浴びる
・日中は明るい環境で適度に活動する
・夜は暖色系の優しい電気にする
・寝る前にブルーライトを浴びないようにする
・パジャマは体温調整しやすい自然素材のものを選ぶ

睡眠の質を改善する方法とは?|眠れなくなるNG習慣もご紹介!

 

生活習慣病を引き起こす習慣

ここまで読み進めると、「良い生活習慣」がどんなものかお分かりいただけたと思います。では、反対に生活習慣病を引き起こす可能性のある悪い生活習慣とはどのようなものなのでしょう。

乱れた食生活

生活習慣病のうち、発ガン性を高める生活習慣として、喫煙、大量飲酒、食生活(塩分過多、動物性脂肪の多量摂取)、肥満などがあげられます。また、ガン以外の生活習慣病にも影響していることが分かっています。

喫煙に関しては、喫煙者は肺年齢が高い傾向があり、更に​​男性においては、実際の年齢と肺年齢の差が大きい人ほど、中性脂肪と腹囲が高値という結果も。これは、動脈硬化が進みやすく、心疾患脳血管疾患などの生活習慣病の危険因子となり得ます。

飲酒に関しては、1日当たり1合以下の少量の飲酒は動脈硬化に対して抑制的に作用すると考えられています。しかし、1日当たり1合以上の飲酒は、血圧上昇、中性脂肪・尿酸・空腹時血糖を上昇させ、動脈硬化を促進させます。お酒は完全な悪ではありませんが、程々にするのが良さそうですね。

運動不足

運動や活動量が低下すると、消費エネルギーが減ってしまいます。その結果として、肥満内臓脂肪型肥満が起こりやすい状態になってしまいます。更に、肥満や内臓脂肪型肥満になると、高血圧、糖尿病、脂質異常症などを引き起こしかねません。

日本は車社会のため、意識しなければ歩かない環境にある方もいらっしゃると思います。しかし、日常の中で活動・運動することはとても大切です。

睡眠不足

慢性的な睡眠不足は、体内のホルモン分泌や自律神経系にも大きな影響を及ぼします。寝不足が続くと、食欲を抑えるホルモン「レプチン」の分泌が減少し、食欲を亢進させるホルモン「グレリン」の分泌が増えます。そのため、慢性的な寝不足の人は糖尿病冠動脈疾患などの生活習慣病になりやすい状態になってしまうのです。

さらに、睡眠障害の方もまた生活習慣病になりやすいことが分かってきています。質の良い睡眠をとることは、想像以上に大切なことなのです。

ストレスを溜め込む

過度なストレスがかかったり、ストレス状態が続くと「コルチゾール」というストレスホルモンが分泌されます。コルチゾールは、空腹ホルモンの分泌を促進し、結果として血糖値や血圧が上昇してしまいます。また、コルチゾールにより交感神経が有意な状態になるため、睡眠に悪影響を及ぼす可能性も。

ストレスを溜め込んでしまうと、心身共に悪い影響が出てしまいます。ストレスを発散する方法や溜め込まないための自分なりの方法があると良いでしょう。例えば、運動、深呼吸、瞑想、ヨガ、良好な睡眠習慣などがストレス管理に有効です。

 

まとめ

生活習慣病は、その名の通り「生活習慣」が大きく関係することが分かりましたね。毎日何気なくとっている行動が、疾患の予防にも原因にもなります。いつまでも健康で生き生きと過ごすためには、良い生活習慣を積み重ねることが大切です。今日からひとつでも良い習慣を増やしていきましょう。

参照:
今野谷美名子.照井 一幸.佐々木司郎. 荻原忠.林雅人.肥満のタイプと生活習慣病危険因子の関連性 について.人間ドッグ Vol.20,No 1,2005,p 61-66
市川由理.深草元紀.服部加奈子.武田京子.石田也寸志.肺年齢と喫煙、生活習慣病の関係.総合健診.42巻 (2015) 2 号p 253-260
古賀正史.向井幹夫.斎藤博.飲酒習慣が動脈硬化危険因子に及ぼす影響.人間ドッグ.Vol 22,No 3,2007,p 36-41

この記事の監修者

玉井 基弘 歯科医師/ヘルスコーチ

 
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