みなさんは、睡眠に関する悩みはありませんか?多くの方が、心配や緊張や興奮などで「寝たいのに寝付けない」というような不眠体験をお持ちだと思います。一時的な不眠体験なら問題ありませんが、それが長期に渡ると心身共に悪影響が及んでしまうため要注意です。
今回は、睡眠に関する内容の中でも「不眠」にフォーカスした内容をお届けします。
不眠症について
まずは、「不眠症」とはどのような症状なのか知っておきましょう。
不眠症とは?
「眠れない」という状態が続くと、倦怠感、意欲低下、集中力低下、抑うつ、頭重、めまい、食欲不振など心身共に色々な不調が現れます。夜間の不眠が続き、日中に心や体の不調を感じて、生活の質が落ちてしまうという状態があれば、不眠症と診断されます。
不眠症には、「慢性不眠症(慢性不眠障害)」と「短期不眠症(短期不眠障害)」の2つに分けられ、不眠症の症状が週に3日以上あり、3ヶ月以上続くと「慢性不眠症」と診断されます。
不眠症状の種類と症状
実は、「不眠症」と一言でいっても実際には様々なタイプがあります。そして、いくつかのタイプを併せ持つ人も。ここからは、不眠症状の種類について解説していきます。
入眠障害
就寝から30分~1時間以上寝付くことができない
中途覚醒
夜中に何度も目が覚めてしまう
早朝覚醒
起床時刻の2時間以上前に目が覚めて再度眠ることができない
熟睡障害
眠りが浅く熟睡したという感覚を得ることができない
不眠症状は、女性に多いと言われています。また、これらの症状の中でも入眠障害を訴える人が最も多く、高齢になるにつれて中途覚醒・早朝覚醒が増える傾向があります。
不眠症の原因
不眠症は、1つの病気ではありません。多くの場合、他の原因があり、その結果として「不眠症状」が現れます。そのため、原因により対策や治療も異なります。原因には以下のようなものがあります。
- 加齢、認知症
- 睡眠時無呼吸症候群
- 精神疾患(うつ病、不安障害、統合失調症など)
- カフェイン、アルコール、スマートフォンの不適切な使用
- 交代制勤務や時差ボケ
- 頻尿(前立腺肥大、利尿作用のある飲食物)
- 生理不順、更年期障害
- レム睡眠行動障害
- 甲状腺機能低下症
- レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
- 周期性四肢運動障害
- アトピー性皮膚炎
- 歯ぎしり・食いしばり など
不眠症の治療について
不眠の対策として、睡眠時無呼吸症候群、レストレッグ症候群、精神疾患など、何か原因疾患がある場合、まずそちらの治療を行うことが重要です。
一方、原因疾患がない場合は、生活環境を改善したり、睡眠薬の処方が必要となることもあります。不眠症状が長く続く慢性不眠症に陥ってしまうと、より不眠症が長引くリスクが上がります。結果として、薬の量が増えてしまうことも少なくありません。
そのため、不眠症の治療は、できるだけ早期に始めるのがベター。具体的には、薬物療法に合わせて生活習慣の改善や認知行動療法を行うことが推奨されています。
生活習慣の改善
もしかしたら、知らず知らずのうちに自ら睡眠の妨げになる行動をとっているかも知れません。まずは、以下のようなセルフケアで生活習慣や環境を整えてみましょう。
- 定期的な運動を取り入れる
- 寝室環境を整える
- 規則正しい食事を心がける
- 就寝前の水分は程々に
- 就寝前のカフェインは控える
- 就寝前の飲酒は逆効果
- 就寝前の喫煙は避ける
- 寝床では考えない
薬物療法
不眠症の薬物療法は、睡眠衛生指導、認知行動療法と組み合わせて実施することが勧められています。また、時間をかけて薬剤の漸減・中止を検討することが重要です。
不眠症の治療に使われる薬剤には以下のようなものがあります。
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬:脳の抑制性神経伝達物質であるGABAの神経伝達を亢進させ、情動中枢を抑制させます。副作用として、持ち越し効果(翌朝まで薬の効果が持ち越す)、筋弛緩作用、前向性健忘、反跳生不眠、退薬症状などがあげられます。
- 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:ベンゾジアゼピン系睡眠薬と同様にGABAの神経伝達を亢進させますが、薬の化学構造がベンゾジアゼピン系睡眠薬とは異なります。
- メラトニン受容体作動薬:睡眠に深く関わるメラトニンというホルモンの受容体に作用し、自然に近い生理的睡眠を誘導します。
- オレキシン受容体作動薬:脳の覚醒を促進するオレキシンの受容体を阻害することで、脳を睡眠状態へ移行させます。
認知行動療法
睡眠に対する思い込みや強迫観念を正し、自分に合った睡眠習慣を身に付けていくことです。
- 睡眠に対する正確な知識を身に着ける
- 睡眠スケジュールを作成・調整する
- リラクゼーションの方法を身に付け、副交感神経を優位にする
不眠症状の改善方法5つ
ここまで、不眠症や不眠症の治療法について解説してきました。もちろん不眠症状があるときや、不眠症になると積極的な治療が必要になることもあります。しかし、まずは快眠のための習慣を持つことが大切です。
ここからは、不眠症状を撃退するための習慣について解説します。
太陽の光を浴びる
人間の体内時計は、実際は24時間より少し長めにあるとされていますが、朝日に含まれる青色の成分は体内時計を調節し、24時間にリセットする働きがあります。
朝に、眠たくてもカーテンを開け朝日を浴び、日中明るい環境で過ごすことが、体内時計を整える助けとなります。安眠のために遮光カーテンを使用している方もいらっしゃると思いますが、体内時計を整えることを考えると、完全な遮光より光が入るくらいのものを選んでも良さそうです。
適度な運動をする
睡眠は、体内時計に合わせたホルモン分泌や体温調整の影響と、日中の活動による疲労により促されます。そのため、日中に適度に活動・運動することも大切です。快眠のためには軽めの有酸素運動を習慣にすることがおすすめです。
寝る前の運動は、交感神経を優位にしてしまうため、逆効果になってしまうので要注意。睡眠のために運動を取り入れるのであれば、特に夕方から夜(寝る3時間前くらい)がより効果的です。
夕食後などに散歩やランニングも良さそうですね。また、寝る前に心身の緊張を緩めることができるヨガやストレッチもおすすめです。お風呂上がりだと体もほぐれているため、効果を最大化できるでしょう。
湯船につかる
寝る前にぬるめのお湯につかることで、副交感神経が優位になり、眠りに入りやすくなります。半身浴でゆっくりつかるのも良いです。熱すぎるお湯につかってしまうと、逆に交感神経神経優位になってしまうので、リラックスできる程度の温度にすることが大切です。
また人の体は、日中に体温を上げますが、夜は熱を放散させて体温を下げることで、入眠しやすい状態をつくっています。湯舟につかって一旦体温を上昇させることで、その後体温が下がりやすくなりますので、より入眠しやすい状態へ移行できるのです。熱を放散させるのには時間がかかりますので、寝る1~2時間くらい前には入浴を済ませ、体温が下がる時間を確保しましょう。
夜間はスマホやパソコンを控える
質の良い睡眠のためには、睡眠ホルモンのメラトニンの働きが重要です。メラトニンは、明るい光の下では分泌が抑制・停止されます。太陽の光と同じように、スマートフォンやタブレットなどの電子機器のブルーライトでもメラトニンの分泌は抑制されてしまいます。
つまり、なかなか寝付けずスマートフォンを触ってしまうと、どんどん覚醒してしまうということになるのです。寝る前にスマートフォンなどの電子機器を触るのは控えたいところ。また、夜間は部屋の照明も明るすぎない暖色系のものがおすすめです。
自律神経を整える
スムーズに入眠するためには、副交感神経が優位な状態になっていることが大切です。心身共に緊張した状態や興奮している状態では、交感神経が有意になりがちです。
リラックスして、副交感神経が優位になる状態をつくってあげましょう。お風呂でゆっくり筋肉の緊張を解したり、学校や仕事のことを忘れてリフレッシュすることも大切です。
また、寝る前にノンカフェインのハーブティーを飲んだり、鎮静作用のあるラベンダーやオレンジスイートなどのエッセンシャルオイルの芳香浴や寝具へのスプレーもおすすめです。意識して深い呼吸をするだけでも、緊張が解れ心が穏やかになっていくのを感じるでしょう。
まとめ
睡眠は、私達が生きていく上で欠かせないもののひとつです。生理的欲求であり、適切な睡眠をとることにより心身の状態が保たれています。そのためには、適切な睡眠をとるための習慣を持つことが必要です。また、不眠症状があるときや不眠症になってしまったときには、意識してセルフケアから取り組んでみましょう。
参照:
遠藤拓郎.睡眠障害.総合健診.45巻.2号.2018,p 34-40