発酵食品が身体に良いことは知っているけれど、具体的にどういう効果があるのか知りたいと思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、発酵が身体にもたらす多様な効果やおすすめの発酵食品についてご紹介していきます。
発酵食品って何?
発酵食品の発酵とは一体どういう原理で行われているのでしょうか。発酵することによるメリットや発酵そのものの起源について詳しくご紹介していきます。
発酵食品とは?
発酵食品とは、食材を乳酸菌や麹菌、酵母などの微生物が持つ力を応用し、タンパク質や糖を分解させ別の食品に変化させた食品のことを言います。発酵食品と腐敗は発酵の過程は同じですが、この2つの違いは主に食品を摂取することで人間にとって有害な影響をもたらすかどうかという点にあります。
腐敗は悪臭を生じるほか、摂取することで下痢や腹痛などのなんらかの腹部症状を引き起こします。一方で発酵食品は、栄養素が豊富で美味しく健康的に摂取できる食品のことを示しています。
発酵食品のメリット
発酵食品の主なメリット3つをご紹介いたします。
保存性が高い
菌の繁殖は、ある一定の微生物がいる状態では繁殖しにくい特徴があります。そのため発酵食品に含まれている微生物が増殖することで、腐敗菌の増殖を防ぐ効果も発揮しています。
また、発酵によって生成される乳酸や酢酸、アルコールにも殺菌作用があります。これらの特徴や効果により、長期間食品を発酵させていても腐敗することなく安全な発酵食品が出来上がるのです。
旨味が出る
発酵させることにより、食材そのものが持つ味わいに旨味が出てきます。主にアミノ酸やイノシン酸といった成分が生み出され、味や香りが変化し深みが出て美味しさが増すのです。
栄養価が高い
発酵食品は菌の力によって原材料の倍の栄養価を作り出すことができます。菌そのものにも身体に有益な効果がたくさん含まれているため、体内から健康を目指す方にはおすすめの食品です。
発酵の歴史
発酵食品は世界中で作られており、さまざまな歴史があります。日本でも古くから親しまれていますが、そもそも発酵とはいつからどのように始まったのかご存知でしょうか?発酵の歴史は、約30億年前の生命が発生する前の段階にあると言われています。
その時代にはまだ酸素という概念がなく、酸素がない状況でも生存できる菌、微生物だけが存在していました。このような状況の中で、微生物たちはエネルギーを獲得し、繁殖をするために有機物を分解して発酵という形で生存してきたと言われています。
発酵食品の健康効果
健康の維持を目指している方には、特におすすめの発酵食品。では、発酵食品がもたらす健康効果についてご紹介いたします。
腸内環境が整う
腸内フローラを整えることが、健康の維持に重要であると言われていることをご存知でしょうか。腸内フローラは、人間の腸内には多種多様の細菌が数多く生息しており、その集団を総称してそう呼ばれています。
その細菌の代表的なものが、善玉菌や悪玉菌と呼ばれるものになります。これらの細菌バランスを整えることにより腸内環境を良い状態に整え、健康の維持増進に繋げることができるのです。
発酵食品には腸内細菌に効果的な菌をたくさん含んでおり、摂取することによりさまざまな効果を発揮します。腸内環境の改善から得られる5つの有益な効果についてご紹介いたしましょう。
免疫力アップ
病原菌と戦う免疫細胞の6割以上が腸内に存在していると言われています。腸内環境が悪い状態が続くと免疫力も低下し風邪や身体の不調を来しやすくなるため健康維持のためにも腸内環境を整えることは非常に重要であると言われています。
便秘改善
発酵食品には、善玉菌である乳酸菌が多く存在しています。継続して摂取することで善玉菌が増加し腸の運動が活性化され、便秘解消にも効果を発揮します。
アンチエイジング
老化の原因になると言われている活性酸素、これは一定量であれば問題ありませんが増えすぎると健康に影響を及ぼします。発酵食品には活性酸素を除去する働きもありバランスを整える力が備わっているため、アンチエイジングに対する効果も期待できます。
精神の安定
発酵食品には天然アミノ酸であるGABAが含まれています。この物質は自律神経を活性化させると言われており、主にリラックスしたい時や心身を落ち着かせる働きを持つ副交感神経に作用すると言われています。GABAの経口摂取による自律神経活動の活性化というテーマでの研究も行われており、実際に身体に良い効果をもたらすことが報告されています。
睡眠の質向上
睡眠の質を良くするためには、入眠時にかかせないメラトニンという睡眠ホルモンの生成が欠かせません。このホルモン生成を促す働きを活発化させるのも腸内細菌や環境によって起こります。腸内の環境が良い程にホルモン分泌も活発化し良質な睡眠を取ることができるようになります。
日本人に合う発酵食品3選
日本人の伝統的な食文化である和食は、発酵食品と共に築かれてきたと言っても良いほど、深い関わりがあります。古くから親しまれてきた食品だからこそ、体質的にも日本人にとって有益な効果をもたらす食品があります。それぞれの効果も含めてご紹介していきます。
ぬか漬け
ぬか漬けは、米ぬかに水と塩を混ぜて発酵させ、ぬか床に野菜などをつけた食品のことです。米ぬかにはミネラルやタンパク質が豊富に含まれています。野菜を漬け込むことで、糖質の代謝を促進するビタミンB1が約10倍にも増えるとも言われています。
乳酸菌には、動物性と植物性の2種がありますが、ぬか漬けには植物性乳酸菌が多く含まれており動物性と比べると体内に消化、吸収されやすくなっています。
食べる際の注意点ですが、ぬか漬けは野菜のもつ水分などにより他の発酵食品に比べ腐敗しやすくなっています。そのため、保存性を高めるために食塩を多く含んでいます。たくさん食べてしまうとその分、塩分の取り過ぎになってしまうため、適度な量を継続して摂取するようにしましょう。
発酵調味料
発酵調味料とは、麹菌や食塩などを原料とし発酵熟成されて作られたアルコール分を含む調味料のことです。主に、アミノ酸やペプチドなどがバランス良く含まれています。日常的によく使用される醤油や味噌、本枯節、酢などが発酵調味料にあたります。発酵食品を食べるのが苦手という方は、調味料を意識して変えてみてはいかがでしょうか。
酒粕
酒粕は、日本酒を醸造する際に生成されます。糖質や脂質、タンパク質などの代謝を高めてくれるビタミンB類が豊富に含まれていると言われています。
酒粕から作られる甘酒や粕漬けは飲む点滴と言われるほど、美容や健康に良いとされています。理由としては、体調不良時に人間が必要とするミネラルやアミノ酸、ビタミンが豊富に含まれているため、点滴で高濃度の栄養を取り入れているような成分内容になっているからです。
甘酒は手軽に取り入れることができ、継続しやすいので何か始めてみたい方にはおすすめの飲用物です。
まとめ
発酵という自然の力を応用して作られた発酵食品を健康的に取り入れるためには、継続して適度な量を摂取することが重要です。
発酵は材料によって発揮する効果も変わってきます。自宅で簡単にできるぬか漬けが人気なように、ご自身の状況に合わせてオリジナルの発酵食品を作ってみてはいかがでしょうか。
参照:
藤林真美.神谷智康.高垣欣也.森谷敏夫.GABA経口摂取による自律神経活動の活性化.日本栄養・食糧学会誌.2008.第61巻.第3号.p 129-133