糖尿病と診断されてしまったり、糖尿病の予備軍かもしれないと不安になり、改善や予防の方法が知りたくなった方も多いでしょう。
「死の四重奏」という言葉がある通り、糖尿病は肥満、高血圧、脂質異常症と並んで、放っておくと脳卒中や心筋梗塞を引き起こす危険な病気です。
すでに発症してしまった方が、今後どのような生活を心がけるべきか、まだ発症していない方が、どのような症状に着目すべきかなどを解説していきます。糖尿病にならないためにできる生活習慣なども解説いたしますので、ぜひ明日から取り組んでみてください。
インスリンとはなにか?
インスリンが、体内でどのような役割を果たしているのかを説明いたします。
インスリンの働きとは
インスリンは、膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンのことです。血糖値を下げるホルモンというイメージがありますが、インスリンの仕事は、ブドウ糖を必要としている組織にブドウ糖を送り込むことです。血糖値の下がりはその結果に過ぎません。
インスリンの働きには、主に以下のようなものがあります。
- グリコーゲン(糖)合成
- 脂肪合成
- タンパク質合成
インスリンと血糖値の関係
インスリンは何の刺激がなくても一定量が分泌されています(基礎分泌)。他方、食事をして血糖値が上がると、ここぞとばかりに基礎分泌の数倍のインスリンが分泌されます(追加分泌)。
このように、インスリンの分泌に最も関係しているのは血糖値なのです。
糖尿病ってどんな病気?
糖尿病とはインスリンの作用が不足することで、血糖値が高い状態が持続する病気です。この病気になるとどのような健康被害がもたらされるのか解説いたします。
インスリンの作用の不足
インスリンの作用の不足には、インスリン分泌障害とインスリン抵抗性があります。前者はインスリンの分泌が低下した状態です。後者は、インスリンが分泌されていても効きにくくなった状態です。どちらも血糖値が十分に下がらなくなります。
1型糖尿病と2型糖尿病の違い
2型糖尿病は中高年期以降に多く見られ、糖尿病の95%以上を占めています。遺伝的な要因に加え、食生活の乱れや運動不足といった生活習慣などの環境要因が関係しています。これらの要因がいくつも折り重なって緩徐(かんじょ)に発症します。インスリン分泌障害とインスリン抵抗性のどちらでも生じます。
一方、1型糖尿病は小児期~青年期と若年者に見られ、比較的珍しい病気です。自己免疫の異常などで膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンが絶対的に枯渇します。インスリン分泌障害によって急激に生じます。
糖尿病の症状
糖尿病は無症状のうちに健康診断などで発見される方が圧倒的に多いのが現状です。初期の頃は症状に気付きにくいため、自分では糖尿病になっていることがなかなか分かりません。
血糖値がかなり上がった段階であらわれる症状には、以下のようなものがあります。
- 尿がたくさん出る(多尿)
- よく喉が渇く(口渇)
- よく水を飲む(多飲)
- 体重が減る(体重減少)
これらは糖尿病の診断基準に用いられる典型的な症状です。
糖尿病の怖さ
糖尿病になり、高血糖に慢性的に晒されると細い血管が徐々に障害を受けます。
成人の中途失明の中で最も多い網膜症、透析原因で最も多い腎症、手足の痺れや感覚低下などを引き起こす神経症は、糖尿病の三大合併症と言われています。
これらの合併症を発症すると、日常生活に大きく支障をきたし、QOLを著しく損ないます。
※QOLとは、クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)の略称で、「生活の質」や「人生の質」という意味です。
糖尿病とインスリンとの関係を解説
糖尿病になったら、インスリンはどのように必要になってくるのでしょうか?
糖尿病の治療
糖尿病はインスリンの作用の不足によって慢性的に高血糖を来した病気です。治療として求められるのは、インスリンの補充、またはインスリンの効きやすさの改善です。
そのためには、食事療法、運動療法、薬物療法が重要です。
インスリン注射が必要な病型
1型糖尿病ではインスリンが枯渇しており、インスリン注射は必要不可欠な治療法です。一方、2型糖尿病では、食事療法や運動療法、内服薬による治療を行っても血糖コントロールが悪い場合にインスリン注射が必要となります。また、感染症や手術のストレスで、インスリンの効きやすさが下がっているような状況でも行われます。
インスリン注射の実際
インスリン製剤にはさまざまな種類があり、糖尿病の状態や合併症の有無、ライフスタイルを見極めたうえで、患者さんに合ったものが処方されます。
インスリン注射は、指示された時間に自分で打つことが多いです。注射部位は、腹部、腕、太もも、お尻など、同じ部位に続けて注射しないように注意します。
自分で注射するのは難しいイメージがあると思いますが、かなり技術が進歩したおかげで、大分簡単になっているようです。ペン型の注入器など、使い捨てのタイプもあり、患者さんが治療するうえでとても便利になっています。
糖尿病にならないために何ができる?
糖尿病にならないために、日頃から予防のための行動をすることが大切です。
糖質を控えた食事に切り替える
「暴飲暴食」「肥満」「運動不足」「ストレス」などのライフスタイルの乱れは、糖尿病の発症に大きく影響します。
特に現代社会では糖質を摂り過ぎな方が多く見受けられます。お菓子はもちろん、ご飯やパン、パスタなどの炭水化物を食べ過ぎていないか、食生活を見直してみましょう。
日々の生活では、過剰な糖質を摂らないように心がけることが望ましいです。炭水化物を減らし、野菜やタンパク質をしっかり摂りましょう。間食は甘い物ばかりではなく、栄養素が豊富なナッツや小魚に置き換えるなどの工夫をしてみてください。
適度な運動を生活に取り入れよう
運動は朝食前が理想的です。その理由は、1番元気であることと、睡眠という長時間の空腹を経た後だからです。食事をした後に運動をすると、分泌されたインスリンによって脂肪が燃えにくくなっています。
定期的な運動はあなたのインスリン抵抗性を改善します。代謝の改善のために、運動をしてから食事をするという習慣を身につけましょう。もちろん、朝だけでなく昼食前に10分だけのちょっとした運動もオススメです。習慣化すれば、1年後には筋力がさらにアップし、生活習慣病を寄せ付けない体を作ることができます。
まとめ
糖尿病が進行すると、インスリン注射が手放せなくなったり、食事制限が過酷なものになったりと生活において負担が増えることになるでしょう。
糖尿病の合併症は、あなたの生活の質を著しく低下させます。生活習慣は発症に大きく影響するため、いま一度、ご自身の食習慣や運動習慣を見直してみましょう。
今の生活に取り入れることが出来るものから少しずつ取り組んでいき、糖尿病を予防していただきたいと思います。