「ケトジェニックダイエット」と聞くと、あまり聞き慣れない言葉にイメージがしにくい方も多いでしょう。また、糖質を制限する方法でもあるため、デメリットや危険が伴う印象もあると思います。
減量するだけが目的というより、体質から改善していくことで知られるダイエット方法です。今回は、ケトジェニックの意味から基本的なやり方などを詳しく解説していきます。
さまざまな食品であふれる現代で、ケトジェニックダイエットを行うことは簡単ではありませんが、自身の生活に取り入れられるかをぜひ判断してみてください。
ケトジェニックダイエットを解説
「ケトジェニックダイエット」の意味や効果がわかるように、基本からご説明いたします。
ケトジェニックってどういう意味?
ケトジェニックは、低糖質・高脂肪食のことです。糖質制限と同義語のように捉えている方も多いと思いますが、違いは「糖質制限の厳格度」にあります。
もともとは、心臓病の手術を肥満患者が受けるための食事療法として取り入れられていたこともあり、短期間ですぐに減量できるのが特徴です。
それから一般の方も減量目的で取り入れるようになり、ダイエットと合わせて「ケトジェニックダイエット」と呼ばれ広く知られるようになりました。
ケトジェニックダイエットの凄さとは?
ケトジェニックダイエットは、炭水化物や甘いものなどの「糖質」を大幅に減らすことで、体のエネルギー源を糖質から「脂肪」に切り替えることを目的としたダイエット方法です。よって、脂肪を燃焼しやすい体になることが期待できます。
糖質を制限する代わりに、多くの健康的な脂質、自然に育てられた肉、魚、卵、発酵食品を食べることを重視します。
人間は飢えと戦うため、体に蓄えた脂質をエネルギー源にして生きてきました。穀物を栽培して主に糖質からエネルギーを得るようになったのは、人類の歴史においてわずか約1万年前のことなのです。
このような歴史から見ても、私達の体は元々、糖質ではなく脂質を燃焼してエネルギーに変える「ファットバーニング(脂質燃焼型)」に合わせてつくられている、と言えるでしょう。
この仕組みを取り戻そうとする方法が、ケトジェニックダイエットです。
脂質燃焼型の方が良いの?
炭水化物ではなく、主に脂質をエネルギー源として代謝し「ケトン体」を生成する状態を「ケトーシス」と呼びます。
ブドウ糖は紙と葉のようなもので、すぐに利用されエネルギーを素早く高めるエネルギー源です。それに対しケトン体は、ゆっくりと効率的に燃焼するという点では木炭をイメージしていただけると良いでしょう。
このケトーシス状態の方が、エネルギーの持久力がアップし、空腹感を感じにくくなったり、集中力が長続きしたりします。また、生活習慣病を予防し、さまざまな疾患を軽減する効果もあります。
現代人は、「シュガーバーニング(糖質燃焼型)」の方が多いため、疲れやすかったり、ダラダラ食べ続けてしまったり、集中力が続かないことが多いと言われています。
ケトジェニックダイエットは危険なの?
ケトジェニックダイエットは、炭水化物などの糖質を制限することで脂質を燃焼させようという方法ですが、ここでやり方を間違ってしまう方がいます。それは何かと言うと、脂質を十分に摂取しないことです。
つまり、糖質に変わるエネルギーを補給しない状態を続けることで、逆に体のバランスを崩してしまうのです。糖質制限を行い、さらに脂質のタンクのエネルギーも使い切ってしまうと、当然エネルギーは空っぽになってしまいます。ケトジェニックダイエットで倒れるという事例があるとしたら、脂質の摂取が少ないことが原因です。
なので、ケトジェニックダイエットが危険という訳ではなく、糖質制限に加えて脂質の摂取も十分でない状態が危険ということです。
ケトジェニックダイエットのメリット
ケトジェニックダイエットには、減量できるだけでなくさまざまな役立つメリットがあります。
肌荒れが改善される
とくに、甘い物やパンなどが大好きで、肌荒れに悩まされている方は効果が表れやすいかもしれません。ニキビや吹き出物などの原因は、糖質の過剰摂取であることが多いからです。
ケトジェニックダイエットは、その糖質を制限する方法なので、皮脂が少なくなったり腸の状態が整い肌荒れが改善されることが期待できるのです。
空腹感がなくなる
ダイエットは「空腹に耐えるのが辛い」というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、ケトジェニックダイエットは脂質をしっかり摂る方法のため、意外と空腹感を感じないことに気づくと思います。
グラスフェッドバターやMCTオイルを、コーヒーやスープに入れて朝食として摂るだけで、お昼までお腹が空かなかったり間食をしたくなくなったり、以前との違いを感じるでしょう。
頭が冴える
昼食後、眠くなったことがある方は多いのではないでしょうか?これは、主食がご飯やパンなどの炭水化物だから起こる現象です。炭水化物などの糖質は、摂取すると血糖値が上昇し、体内でブドウ糖へと変化します。そこで、ブドウ糖を分解するために膵臓からインスリンが分泌されるのです。
糖質を過剰に摂取すると、インスリンが働きすぎてしまうため正常よりも血糖値の値が低くなり、一時的に低血糖状態に陥ります。
この一連の流れが食後の眠気と関係しており、糖質制限をするケトジェニックダイエット中は低血糖状態に陥りにくいため、眠気を感じにくくなり頭が冴えるようになるのです。
体重が落ちやすい
ケトジェニックダイエットは、体重が増える原因となる糖質を制限し脂肪が燃えやすい体に近づけるため、体重が落ちやすいことがメリットです。
また、炭水化物は水分を保持しているため、摂取を控えると水分量が減り体重にも影響が出ます。そのせいで、痩せたことを実感しやすいのかもしれません。
単純に食べる量を減らすダイエットとは違い、きちんと脂質を摂取することであまりストレスを感じず、頭がボーッとするなどのデメリットもありません。ただし、体質によっては合わないこともあるので様子を見ながら行いましょう。
ケトジェニックダイエットのデメリット
ケトジェニックダイエットを始める前に、とくに初期に出る症状などを把握しておきましょう。
甘い物への欲求が出る
とくに、今まで甘い物が大好きだった方は、ケトジェニックダイエットを行ううえで多少の我慢は必要でしょう。しかし、ストレスをため込みすぎると継続が難しくなってしまうため、置き換えることを考えてください。
例えば、砂糖の代わりに蜂蜜やラカントなどの自然由来の甘味料を使い、バターはグラスフェッドのものを選んで自家製ケーキを作ってみたり、オートミールクッキーを焼いてみたり。手作りのおやつを選べば、食べられないことによるストレスを回避できます。
気分にムラが出る
炭水化物を極端に減らしすぎてしまうと、頭痛や倦怠感などの症状を引き起こしてしまう方がいます。これは、体が今まで糖質を主要なエネルギー源にしていたところから、脂質がエネルギー源に変わったことが理由だと考えられます。
このケトーシス状態に慣れるまでに、大体1〜2週はかかると言われています。2週間を過ぎたあたりから、気分に変化はないかをセルフチェックしてあげましょう。
お金がかかる
ケトジェニックダイエットでは、良質な脂質やたんぱく質がメインの食生活を送ることが必要なため、食費が高くなります。炭水化物や質の良くない菓子やジュースは安価で購入できるため、最初はオーガニック食品などの価格設定に戸惑うかもしれません。
しかし、自然由来の食品は大量生産の食品のように安価で多く出回ることは本来あり得ません。自分の食に対する基準が変わる、良いきっかけになるでしょう。
ケトジェニックダイエットの方法
ケトジェニックダイエットを行ううえで、知っておくべきことをお伝えいたします。
1日の食事のとり方
ケトジェニックダイエット中は1日あたりの炭水化物摂取量を約20〜50gに制限します。そして、オーガニックで自然飼育や自然に捕獲されたたんぱく質源を多く摂取します。
外食よりも基本は自炊で、調理の際は良質なバターやギー、オリーブオイルやココナッツオイルを使いましょう。たくさんの油を摂取したいからといって、質の悪い植物油を使ったり、古い油の使い回しなどは絶対に避けてください。
総カロリーの60〜80%以上を脂質から摂取し、残りのカロリーは野菜とたんぱく質からの摂取となるでしょう。調理以外にも、コーヒーや紅茶などにバターやMCTオイルをテーブルスプーン1杯程度を入れて飲むと、しっかり脂質を摂取することができ、エネルギー不足に陥りません。
外食するときのコツ
レストランに行ったときは、肉や魚などのたんぱく質の料理を選び、単純糖質(米、とうもろこし、じゃがいもなど)の代わりに野菜を追加しましょう。
ソースやドレッシングは砂糖や添加物が入っていることが多いので、、エクストラバージンオリーブオイルまたはバターを別に持ってきてもらえたらベストです。
また、脂質だからといって揚げ物を選ぶことはやめましょう。飲食店の油は、ほとんどが加工された植物油を使って調理されているうえに、使い回している可能性が高いです。健康に害があるとされる「トランス脂肪酸」も多く含んでいると考えられるので、ケトジェニックダイエット中は、なるべく揚げ物は避けてください。
ケトジェニックダイエット1日のメニュー例
ケトジェニックダイエットを行う際の、1日の食事メニューの一例をご紹介いたします。
朝起きたら/緑茶、白湯、レモン水、ハーブティ、バターコーヒー
11時:間食/プロテインシェイク、ボーンブロススープ
13時:昼食/120gのタンパク質(魚、鶏肉、牛肉、卵)、アボカドサラダや豆腐わかめサラダ、大さじ2杯の良質な油
16時:おやつ/ナッツ類(くるみ、アーモンド、カシューナッツ、ピーカンナッツ)、種子類(かぼちゃの種、ひまわりの種)、小魚(食塩無添加)、ベリースムージー
18〜19時:夕食/120gのタンパク質(魚、鶏肉、牛肉、卵)、大さじ2杯の良質な油、食物繊維が豊富な豆類(豆腐、納豆)
デザートは食べても良いの?
どうしてもデザートを食べたいときは、高タンパク質低糖質のスイーツを手作りしましょう。例えば、アボカドのチョコレートムースやおからクッキー、豆乳プリン、果実のゼリーなど。
あまり我慢し過ぎてストレスをため込むより、工夫して手作りしたり、オンラインショップやオーガニックショップで適したものを探してみましょう。
食べるべき食材・避けるべき食材
ここでは、食べるべき食材・避けるべき食材を具体的にご紹介していきます。
食べるべき食材
多様な色の、オーガニックで血糖を上げにくい野菜や果物を食べましょう。
低糖質の野菜 | 玉ネギ、長ネギ、緑の葉野菜、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、アスパラガス、アーティチョーク、大根、ニンニク、セロリ、ルッコラ、ピーマン、きゅうり、かぶ、レタス、白菜、トマト、もやし、ズッキーニ、生姜、海藻 |
低糖質の果物 | グレープフルーツ、ベリー系果実、青リンゴ、アボカド |
タンパク質 | 天然の魚、天然の赤身肉・鶏肉・豚肉、オーガニックの卵、豆類 |
良質な脂質 |
エクストラバージンオリーブオイル、ココナッツオイル、アボカドオイル、グラスフェッドバター、ギー、動物性脂肪、ナッツ類、種子類 |
調味料 | 塩、コショウ、バジル、オレガノ、タイム、ローズマリー、ターメリック、シナモン、カルダモン |
避けるべき食材
成分表示が載ったラベルをいつも確認して、不健康な脂質、人工甘味料、砂糖などを避けましょう。
多糖質野菜・豆類 | じゃがいも、さつまいも、にんじん、エンドウ豆、インゲン豆、レンズ豆、ひよこ豆 |
多糖質果物 | 上記で挙げた以外の果物、ドライフルーツ |
不健康な脂質 | 工業性植物油、サラダドレッシング、マヨネーズ、スナック菓子 |
無糖ダイエット食品 | 無糖キャンディー、ダイエット飲料、シロップ、プリン、ゼリー |
アルコール | ビール、ワイン、お酒を混ぜた飲み物 |
自分がケトーシスかを知る方法
自身がケトーシス状態になっているのかを知る方法がありますので、以下を参考にしてみてください。
空腹感で判断する
体が、脂肪をより効率的に燃焼するにつれ、空腹感が軽減されていきます。
尿意で判断する
体が、過剰なナトリウムとアセト酢酸を排泄している可能性があり、より頻繁に尿意を催すことがあります。
息や汗の状態で判断する
アセトンの影響で、息や汗がマニキュアや果実のような臭いになることがあります。
まとめ
ケトジェニックダイエットは、主要なエネルギー源として脂肪を摂取することを重視し、ケトンの生成と利用ができる身体への移行を促す食事療法です。
ケトーシスは多くの病態や症状に有効であることが明らかになっており、治療法としてケトジェニックダイエットが利用されている研究報告は少しずつ増えてきています。
一流のスポーツ選手や、有酸素系運動の選手も研究している食事法、ぜひ無理のない範囲でチャレンジしてみてください。