
「ヤマブシタケ」というきのこを見たり聞いたりしたことはありますか?とても珍しい形をしたヤマブシタケですが、実はたくさんの栄養素が含まれており、心身に良い効果があることが知られています。
この記事では、ヤマブシタケに含まれる栄養素や効果、そして効果的な食べ方について紹介していきます。
ヤマブシタケの基本
まずは、ヤマブシタケがどのようなきのこなのかについて解説していきます。
ヤマブシタケとは
ヤマブシタケ(学名:Hericium erinaceus)は、白く球状の形をした特徴的なキノコで、日本、中国、欧米、北アフリカなどの温帯地域に自生します。傘や柄がなく、糸状の突起が垂れ下がる独特の見た目が、修験者(山伏)が身に着ける「梵天(ぼんてん)」に似ていることから、この名前が付けられました。
日本では自生しているものを見つけるのが難しいため「幻のキノコ」とも呼ばれることがあります。一方、中国では古くから食用や薬用として珍重され、伝統医学の文献にも記載されています。
こんな人におすすめ
- 加齢による認知機能の低下が気になる方
(ただし、認知症の治療や予防を保証するものではありません) - 健康維持のために免疫をサポートしたい方
- エイジングケアを意識している方
ヤマブシタケに含まれる栄養素
ヤマブシタケには、色々な栄養素が含まれていますが、中でも代表的な栄養素について解説していきます。
β-グルカン
β-グルカンは、キノコ、酵母、真菌、麦、海藻などに含まれる水溶性食物繊維の一種であり、多糖類の一つです。体内で消化吸収されることなく、腸内の免疫細胞に作用することで、免疫機能の調整に関与すると考えられています。
【期待される効果】
・免疫細胞(マクロファージやナチュラルキラー細胞)を活性化し、免疫機能を調整する可能性がある
・コレステロールの吸収を抑制し、血中コレステロール値の低下に関与する可能性がある
β−グルカンはきのこに多く含まれており、きのこを製造・販売する会社による比較では以下のようになっています。比較すると、ヤマブシタケに含まれるβ−グルカンの多さが際立っています。
種類 | βグルカン含有量(100g当たり) |
ヤマブシタケ | 18.0g |
マイタケ | 2.3g |
ブナピー | 2.0g |
エリンギ | 1.9g |
ぶなしめじ | 1.8g |
霜降りひらたけ | 1.5g |
生どんこ | 3.8g |
へリセノン
ヘリセノン類は、ヤマブシタケに含まれる特有の天然成分で、神経成長因子(NGF: Nerve Growth Factor)の産生を促進する可能性が示唆されています(※3)。
【期待される効果】
・神経細胞(ニューロン)の成長や修復を促進する可能性がある
・加齢による認知機能低下の予防に関与する可能性がある
エリナシン
エリナシン類は、ヤマブシタケの菌糸体から発見された成分で、ヘリセノン類と同様にNGFの産生を促進する可能性があると報告されています(※4)。
【期待される効果】
・ヘリセノン類と同じく神経細胞の保護や再生に関与する可能性がある
・認知機能維持の補助的な役割を果たす可能性がある
食物繊維
ヤマブシタケには、不溶性・水溶性の食物繊維が豊富に含まれています。
【期待される効果】
・腸内環境の改善(腸内細菌のエサとなる)
・便通の促進
・血糖値の上昇を抑制
・コレステロール値の低下
近年、日本人の食物繊維摂取量は減少傾向にあるため、キノコ類を積極的に摂取することは健康維持に役立つ可能性があります。食物繊維は、きのこ類を始めとして海藻類、野菜などに多く含まれています。
種類 | 食物繊維含有量(100g当たり) |
こんにゃく | 79.9g |
乾燥あらげきくらげ | 79.5g |
乾燥白きくらげ | 68.7g |
乾燥干しわらび | 58.0g |
乾燥しいたけ | 51.8g |
ヤマブシタケ | 37.1g |
その他、ヤマブシタケにはビタミンやミネラルも多く含まれています。
ヤマブシタケの効果効能とは
ヤマブシタケには、固有の栄養素を始め、多くの栄養素が含まれていることから様々な効果があることが分かっています。特によく知られている効果について紹介していきます。
免疫力アップ
ヤマブシタケには、免疫機能の調整が期待されています。特に、β-グルカンや食物繊維が関与すると考えられています。
【期待される効果】
・腸内環境の改善
ヤマブシタケに含まれる食物繊維やβ-グルカンは、腸内細菌のエサとなり、腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを整える可能性があります。
・免疫細胞の活性化
腸には全身の免疫細胞の約70%が集中しており、腸内環境が整うことで免疫機能の調整に寄与する可能性があります。
・感染症リスクの低減
いくつかの研究では、β-グルカンが免疫細胞(マクロファージ、ナチュラルキラー細胞など)の働きを活性化し、感染症に対する防御機能を高める可能性が示唆されています。
認知症予防
ヤマブシタケに含まれるヘリセノン類やエリナシン類は、神経成長因子(NGF: Nerve Growth Factor)の産生を促進する可能性が示唆されています。
【期待される効果】
・神経細胞(ニューロン)の減少を抑える可能性
・神経の成長や修復を促進する可能性
・加齢による認知機能低下の予防に寄与する可能性
ある研究では、軽度認知機能障害(MCI)を有する高齢者にヤマブシタケの粉末を継続的に摂取させたところ、一部で認知機能の改善が見られたと報告されています。
生活習慣病予防
ヤマブシタケに含まれる食物繊維やβ-グルカンは、生活習慣病に影響を与える可能性があります。
【期待される効果】
・血糖値の上昇を抑える可能性
食物繊維が糖質の吸収を遅らせ、食後の血糖値上昇を抑える可能性が示されています。
・血中コレステロールの低下
食物繊維がコレステロールの排出を促進し、血中脂質の改善に寄与する可能性がある。
・高血圧リスクの低減
食物繊維の摂取が多い人ほど、心血管疾患リスクが低い傾向があることが報告されています。
ヤマブシタケの食べ方
ヤマブシタケには、色々な健康効果があることが分かっていますが、効果的に摂るにはどのような方法があるかについて解説していきます。ヤマブシタケの旬は、春から初夏にかけてです。食べる際には、旬のものを選ぶのがおすすめです。スーパーやデパ地下、ネット販売などで取り扱われています。
加熱処理が必要
ヤマブシタケは、クセのない薄味であるためどのような料理にでも比較的合うと言われています。しかし、生食で食べることはできません。食べる際には、加熱処理して食べるようにしましょう。加熱しすぎると苦味が強くなりすぎることがあるため、さっと火を通すのがおすすめです。
また、保存期間は、冷蔵で1週間〜10日程度です。冷凍する際には、石突きの部分を切り落とし、一回に使う量を小分けにしてラップに包んで、フリーザーバッグに入れて保存するのが良いでしょう。使用する際は、特別な下処理の必要はなく、そのまま使うことができます。
汁物料理がおすすめ
ヤマブシタケに含まれる栄養素と旨みをしっかり摂ろうと思ったら、出し汁までしっかりと摂ることができるスープがおすすめです。味噌汁や中華スープのレシピが特におすすめです。炒め物の場合も、ヤマブシタケの形状により味が絡みやすく美味しく調理することができます。ヤマブシタケ以外のきのこと同じ要領で料理すると良いですよ。
手軽に粉末を使う
ヤマブシタケに含まれる栄養素をもっと手軽にしっかりと摂りたいという方には、粉末やサプリでの摂取が良いでしょう。粉末は、水やお湯に溶かして摂るのが良いでしょう。粉末やサプリメントは、色々な商品があるため成分をしっかり確認しましょう。サプリメントを選ぶ際には、体に不必要なものが含まれておらず、オーガニックのものを選ぶのがおすすめです。
また、ヤマブシタケを摂って重篤な副作用が起こった症例は確認されていませんが、摂りすぎには注意しましょう。パウダーやサプリメントを摂る際には、目安量を守るようにしましょう。
まとめ
ヤマブシタケは、きのこの中でも一般的ではない種類のものかも知れません。しかし、古くから知られる栄養価の高いきのこです。ヤマブシタケ固有の栄養素を含み、脳の健康や生活習慣病の予防に効果的です。また、多く含まれる食物繊維により腸内環境を改善する働きも期待できます。腸内環境は、心身の健康にも大きく関係しています。認知症の予防や生活習慣病の予防、そして健康維持のための食材として活用してみてもいいかも知れませんね。