2023.06.09

アレルギー

乳糖不耐症だと食べられないものは?|症状や原因について

            EARNS
            サプリ

田中 康規

麻酔科医/ヘルスコーチ

乳製品を摂取するとお腹の調子が悪くなる、または身体に合わないからできるだけ避けて生活をしているとお悩みの方もいるのではないでしょうか?もしかしたら、その症状は乳糖不耐症によるものかもしれません。

この記事では、なぜこのような症状が起こるのか、そのメカニズムをご解説するとともに、具体的な対策についてご紹介します。思い当たる症状がある方はぜひチェックしてみてください。

乳糖不耐症について

乳糖不耐症とは一体どういう病気なのでしょうか。具体的な概要についてご紹介していきます。

乳糖とは?

乳糖とは乳製品に含まれる糖の一種です。砂糖ほどではない、ほんのりとした甘みが特徴です。牛乳にわずかな甘みを感じるのは、乳糖の持つ甘味によるものです。

乳糖は、小腸で分解吸収されてエネルギー源になります。主に乳製品に含まれているカルシウム、マグネシウム、鉄分の吸収を高める役割を担っています。

そのほかにも、小腸で分解しきれなかった残りの乳糖は腸内細菌のエサとなり、腸内で発生する有害な細菌の繁殖を抑制し、腸内環境を整える働きがあります。    

乳糖不耐症とは?

乳糖不耐症とは、乳糖を適切に消化吸収できない病気のことです。乳糖を含んだ乳製品を摂取すると、体内で乳糖を十分に分解や吸収ができず、腹痛や下痢などの消化器系の症状を引き起こします。

乳糖不耐症は、先天性、新生児性、二次性、成人発症型の4種類に分類されます。「先天性乳糖不耐症」では、遺伝子異常で乳糖を分解する酵素が生まれつきありません。通常は乳糖を与えず、何らかの栄養補給をしないと、生き延びることができません。

新生児性乳糖不耐症」では、未熟児で生まれたために酵素の活性が不十分となっています。満産期の新生児では酵素の活性が十分にあるため、この病気は見られません。

二次性乳糖不耐症」では、何らかの原因で小腸が障害され、酵素の分泌が減っています。乳幼児では、ウイルス性腸炎に罹ったのちに発症するパターンが多いようです。腸炎が回復するにつれて、乳製品の摂取が再び可能になります。

本来、乳幼児は母乳やミルクを飲むことで、エネルギーを補充し成長していきます。しかし、このような乳糖不耐症の乳幼児では乳糖を消化吸収できません。何らかの対策を講じなければ、エネルギーを補充できず、下痢や体重減少を引き起こし、発育に悪影響が出てしまいます。

大人で発症する成人発症型乳糖不耐症については、後ほど詳しく解説していきます。

乳糖不耐症の症状

乳製品を摂取したのちに、次のような消化器症状が起こります。

  • お腹が張った感じ(腹部膨満)
  • 腹痛
  • 下痢 
  • お腹がゴロゴロと鳴る(腹鳴)
  • 吐き気
  • 2時間以内に生じる強い便意

特に腹部膨満、腹痛、下痢は、乳糖不耐症の3大症状と言われています。これらの症状が繰り返し見られる場合は、乳糖不耐症の可能性が高いと言えます。

 

乳糖不耐症だと食べられないもの

乳糖不耐症の場合、どのような食品を控える必要があるのでしょうか。食事における対策について、乳幼児と成人に分けてご紹介します。

乳幼児の場合

乳幼児は体内の水分量が成人に比べて非常に多くなっています。そのため、下痢や嘔吐を起こすと、体内の水分バランスが崩れやすく、容易に脱水になるという特徴があります。

そうならないために、乳糖を含む食物を完全に除去して、発症の予防に努めることが重要です。

【乳糖を含む食べ物】
牛乳、ミルク、ヨーグルト、牛乳を含む食品(ビスケット、パン、お菓子、ケーキなど)

とはいえ、乳児は主要なエネルギー源であるミルクを摂取しなければ発育できません。そこで、母乳あるいはミルク(一般調整粉乳)を摂取している乳児では、乳糖を除去した特殊調整粉乳に切り替える必要があります。離乳期以降は、乳製品でも乳糖を含まなければ、必ずしも制限の必要はありません。

成人と比べて、乳幼児の治療は非常に難しいため、必ず医師の診断と正しい指示に基づいて行動するようにしましょう。

成人の場合

乳糖不耐症であるからといって、乳糖を含む食物を全て控える必要はありません。程度にもよりますが、対策を行うことで、症状を抑えることができる場合もあります。

乳糖不耐症の方におすすめなのは発酵乳製品(ヨーグルト、チーズ)です。これらの食物に含まれる乳酸菌には、乳糖を分解する酵素があらかじめ含まれています。

ヨーグルトでは乳糖の20〜40%が分解されて減少しています。チーズでは、製造工程で排出されるホエイ(乳清)に移行して乳糖が除去されています。こうした食物は摂取しても、比較的消化器症状は起こりにくいと言われています。

日常的に摂取することを推奨できる乳製品は、バターギーです。バターは牛乳の脂肪分が主な原料なので、乳糖はありません。また栄養価も高いことから、安心して使用できる食材のひとつです。

牛乳を飲んでも症状が出にくいポイント3つ

①数回に分けて飲む
一気に飲むのではなく、飲む回数を増やして少しずつ飲むことで、小腸で乳糖が分解しやすくなります。腸内への刺激も少なくて済むためおすすめです。

②毎日少量ずつ飲む
毎日飲み続けることで、乳糖を分解する腸内細菌が増加して、乳糖の分解や代謝が増進します。身体を乳糖に慣れさせて、乳糖に対する耐性を獲得する方法です。

③温めてゆっくり飲む
牛乳を温めることで腸への刺激が弱まり、ラクターゼの働きも盛んになります。その結果、牛乳を冷やした時よりも、乳糖が消化吸収されやすくなります。

これらのことに留意することで、牛乳を飲んでも症状が出にくくなります。健康のために乳製品を摂取したいと思われている方は、試してみてはいかがでしょうか。

 

乳糖不耐症・乳製品のQ&A

乳製品に関するさまざまな疑問についてご紹介します。

乳糖不耐症になる原因は?

乳糖不耐症は、主にラクターゼとよばれる酵素の不足によって引き起こされます。ラクターゼは、乳糖(ラクトース)をより小さな糖(グルコースとガラクトース)に分解して、栄養素を体が吸収できるようにする役割があります。

乳幼児はもともと母乳やミルクが主な栄養源であるため、大人に比べてラクターゼの活性が高いと言われています。離乳食が始まり、食事内容が母乳やミルクから離れていくにつれて、成長とともにラクターゼの活性が低下していきます。

成人発症型乳糖不耐症は、年齢とともにラクターゼの活性が低下するために起こります。乳糖に対する身体の耐性が低くなることで、症状が起こりやすくなります。

子どもの頃に牛乳が好きで毎日飲んでいたのに、最近では全く飲めなくなったというのはこのタイプです。乳糖不耐症の頻度は人種や民族で異なります。一般的に北欧の人々は乳糖耐性が高い傾向にあり、アジア系やアフリカ系、先住アメリカ人の人々は、乳糖不耐症の頻度が高いとされています。

牛乳アレルギーとの違いは?

乳糖不耐症と牛乳アレルギ—は症状が似ていますしかし、作用機序が異なるため全く別の病気です。

牛乳アレルギーは、外敵から身体を守る免疫細胞のエラーによって引き起こされます。消化器症状も見られますが、症状の多くが痒みや発赤、蕁麻疹といった皮膚症状です。

食物アレルギーには重症度のレベルがあります。レベルが高ければ高いほど、わずかな摂取でも重篤な症状を引き起こすため注意が必要です。重篤な場合、呼吸困難や意識障害、アナフィラキシーショックなどがみられます。

離乳食を開始して間もない乳幼児に多く見られますが、大人になってから発症することもあります。前述した消化器症状の他に、皮膚症状や呼吸症状などを伴う場合は、乳糖不耐症ではなく牛乳アレルギーの可能性が考えられます。

気になる症状がある場合は、できるだけ医療機関を受診して、医師から正しい診断を受けることをおすすめします。

乳製品は体に悪いものなの?

乳製品はアレルギーの原因になることがありますが、頻度と量がその人の許容範囲内であれば体に悪影響が出ることはあまりないでしょう。ただし、和食文化である日本人は、あくまで嗜好品として楽しむ程度に留めておいた方が良いとも言えます。

牛乳の飲み過ぎ、乳製品の食べ過ぎは控えましょう。

乳製品を摂らなくても健康でいられるの?

日本人は、乳製品を摂取しなくても栄養不足になることはありません。その理由は、日本人特有の和食文化にあります。

日本人はもともと農作物を中心とした食生活を行ってきました。西洋人のような酪農文化とはかけ離れた生活をしています。最近では食の欧米化で、日本人のカルシウム不足が指摘されています。和食のみで生活していた時代では、必要な栄養素は食事に含まれていたため、乳製品を摂取しなくても十分に健康を維持できたのです。

乳製品が合わない体質なのか知る術は?

基本的には2〜3週間、乳糖を含む食物を完全に除去し、消化器症状の有無を確認します。乳糖を含む食物を摂取しなければ、消化器症状が出ないという状況であれば、乳糖不耐症である可能性が高いです。

正確な診断を希望される場合は、医療機関で呼吸器検査が行われます。この検査では摂取する乳糖の量をあらかじめ測定し、摂取前と摂取後で、吐く息に含まれる水素ガスの量を1時間毎にチェックする方法です。トータルで4時間程かかります。

水素ガスの量を測定することで、腸内に含まれている消化酵素であるラクターゼの量を確認することができます。

奇跡のオイル・ギーの健康効果と栄養価がスゴい|バターとの違いとは?

 

まとめ

乳糖を消化吸収する酵素であるラクターゼは、年齢とともに活性が低下していきます。日本人は、欧米人に比べて乳糖の耐性が比較的低いとされています。

乳糖不耐症に対する根本的な治療法はないため、いかに乳糖を含んだ食物の摂取量を抑え、ご自身の身体に合った適切な量を取り入れるかが重要です。乳製品ではなく、乳製品に含まれている乳糖が原因ですので、乳製品に含まれる栄養素が必要な場合は、加工食品などを上手く使用することをおすすめします。適度に必要量を取り入れながら、今後の健康増進にぜひ役立てて下さい。

この記事の監修者

田中 康規 麻酔科医/ヘルスコーチ

 
サプリ EARNS