2023.10.11

食事・栄養

アルツハイマー病の意外な原因|予防するための生活習慣を解説

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植田 祐己

美容皮膚科医

アルツハイマー病は、認知症のうちのひとつです。なんとなく目や耳にしたことがある方が多い病気のうちのひとつだと思います。しかし、この病気の原因や予防するための生活習慣を知っている方は多くないのではないでしょうか。

今回は、アルツハイマー病について詳しく解説していきます。

アルツハイマー病とは

まずは、アルツハイマー病がどのような疾患なのか解説していきます。

認知症について

認知症とは、「一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態」を言います。

そして、認知症には色々な種類があり、以下の4種類が代表的です。

認知症の種類 原因 症状
アルツハイマー型
認知症
脳にたまった異常なタンパク質により、神経細胞が破壊され、脳に萎縮が起こる。 昔のことは覚えているが、最近のことは忘れてしまう。軽度のもの忘れから徐々に進行。
血管性認知症 脳細胞に十分な血液が送られずに、脳細胞が死んでしまう。生活習慣病が主な原因。 脳血管障害が起こるたびに段階的に進行。障害を受けた部位によって症状が異なる。
レビー小体型認知症 脳内にたまったレビ-小体という特殊なたんぱく質により脳の神経細胞が破壊されおこる。 幻視や、 手足が震えたり筋肉が固くなるといっ た症状が現れる。歩幅が小刻みにな り、転びやすくなる。
前頭側頭型認知症 脳の前頭葉や側頭葉で、神経細胞が 減少して脳が萎縮する。 感情の抑制がきかなくなったり、 社会のルールを守れなくなる。

アルツハイマー病の特徴

アルツハイマー病は、認知症の最も一般的な原因であり、高齢者の認知症の60〜80%を占めています。さらに、アルツハイマー病の有病率は加齢と共に上昇します。

実はアルツハイマー病の症状が顕在化するまでには、10年以上の年月がかかると考えられています。つまり、症状がない間に、ゆっくりとアルツハイマー病の原因となる脳の病変が進んでいるということです。

アルツハイマー病では、アミロイド蛋白とタウ蛋白という異常な蛋白が沈着し、神経原繊維変化が起こり、もともと元気だったニューロンが効率よく機能しなくなってしまいます。そして、時間の経過と共にニューロンは相互に機能して連絡し合う脳力を失い、最終的には死滅してしまいます。さらに、病変は記憶の中枢と知られる「海馬」という構造体に拡がります。ニューロンの死滅に伴い、影響を受けた脳領域は萎縮していきます。

アルツハイマー病の症状

アルツハイマー病の最も頻度の高い初期症状には以下のようなものがあります。また、アルツハイマー病は徐々に進行しますが、長期にわたって安定することもあります。

短期記憶の障害

同じ質門を何度もする、物の置き場所を頻繁に忘れる、約束を忘れる など

推論能力および複雑な課題を処理する能力の障害ならびに判断力の低下

銀行口座を管理できない、金銭管理がずさんになる など

言語機能障害

一般的な言葉を思い出せない、話すときおよび / または書くときの間違い

視空間認知障害

人の顔や一般的な物を認識できない

行動障害

徘徊、興奮、わめく、被害妄想 など

 

アルツハイマー病の原因

アルツハイマー病の原因はまだ完全には解明されていません。しかし、長い期間をかけて脳の中で生じる複雑な一連の事象によって発症することが少しずつ明らかになってきています。どのようなことが原因と考えられているか解説してきます。

年齢

アルツハイマー病はほとんどが孤発性(病気が散発的に起こること・家族には遺伝しないということ)です。そして、65歳以上の高齢者に発症するという特徴があります。そのため、加齢がアルツハイマー病の発症リスクとなると考えられています。

遺伝

ほとんどの場合は孤発性で、親からの遺伝による家族性アルツハイマーは5%未満と言われています。通常のアルツハイマー型認知症は70歳~80歳代に発症することが多いですが、家族性アルツハイマーは発症年齢が早く、20歳代後半~50歳代に好発するとされています。人は、23組の染色体を持っていますが、第1,12,14,19,21染色体上に位置する少なくとも5つの遺伝子座がアルツハイマー病の発症と進行に影響しています。

その他のリスクを高める要因

遺伝因子以外にも、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの血管危険因子がアルツハイマー病の発症と進行に影響している可能性も示唆されています。

また、これらの危険因子に対して中年期から積極的な治療を行うことで、高齢期に認知障害を発症するリスクが低下すると考えられるようになってきています。

 

アルツハイマーを予防するための生活習慣

アルツハイマー病の発症原因については、まだ研究段階なものも多く明らかになっていないことも多々あります。しかし、​​アルツハイマー病のリスクが低下しうることを示唆する予備観察のエビデンスもあります。

やりがいのある精神活動

脳機能の活性化に繋がる刺激が、アルツハイマーの予防に効果的だと考えられています。特に、他者とのコミュニケーションは認知症予防に効果的です。また、脳が喜ぶワクワクするような体験を積極的にしましょう。

適度な運動

運動は認知症予防に有効であるとされています。動物実験レベルでは、運動により、神経炎症の減少、血管新生、神経内分泌反応などが、認知機能に対して良い影響を及ぼすことが示唆されています。

また、認知症予防の観点からは、アミロイドの蓄積を抑制する酵素の脳内活性が身体活動と密接な関係があり、アルツハイマー病の予防に運動が有効であると考えられています。

健康的な食事

緑色の葉野菜や魚などの健康的な食品を多く摂る習慣のある高齢者は、脳年齢が若い可能性があると考えられています。また、健康的な食事法である地中海食MIND食のいずれかに近い食事を摂っていた高齢者では、アルツハイマー病に特徴的な脳内でのアミロイド蛋白とタウ蛋白の神経原繊維変化が少なかったという報告もあります。

地中海食とMIND食では、体内の炎症を抑え、細胞をダメージから守る作用を持つさまざまな栄養素や化学物質を含む植物性食品を多く摂り、赤肉や砂糖、加工度の高い食品の摂取は避けるという共通点があります。

普段の生活に簡単に取り入れるためには、魚や鶏肉、豆腐製品から良質なタンパク質を摂り、ハムやウインナーなどの加工食品やインスタント食品を控えるよう意識するのが良いでしょう。

地中海式食事法

20世紀中頃のギリシャやイタリア南部の人たちの食生活を取り入れた食事法。魚、野菜、フルーツ、オリーブオイル、ナッツ、赤ワインなどの食品を中心とした食事。

ダッシュ食(DASH食)

高血圧予防を目的として、アメリカで考案された食事法。脂肪分やコレステロールを減らして、野菜、果物、豆類、魚介類の摂取を増やす。

マインド食(MIND食)

アメリカで考案されたマインド食は、地中海式食事法とダッシュ食を組み合わせた食事法。脳の健康におすすめの食材10項目と、控えたい5項目を提示した食事法。

【おすすめ食材】
緑黄色野菜、その他の野菜、ナッツ類、ベリー類、豆類、全粒穀物、魚、鶏肉、オリーブオイル、ワイン

【控えたい食材】
加工食品、インスタント食品、ファストフード、甘過ぎるお菓子・ジュース

適度なアルコール

適量の飲酒であれば、アルツハイマー病の予防に有効であると考えられています。具体的には、1週間あたり、350mLのビール1本~6本以内の飲酒は、認知症リスクを低下させるといわれてます。

しかし、過度な飲酒は認知症リスクを明らかに増大させます。また、もともと飲酒の習慣がない人が、飲酒の習慣をつけることで認知症予防になるエビデンスはありませんので注意しましょう。

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まとめ

アルツハイマー病に関しては、まだ分かっていないことがたくさんありますが、他者とのコミュニケーションをとるなど、脳がワクワクするようなことをすることが何より大切です。また、バランスの良い食事をとることで脳の環境を整えてあげることも意識すべきことです。普段の生活習慣でできることから取り入れてみましょう。

参照:
1.大田勇気.アルツハイマー病予防に関するゲーム要素の研究.学士学位論文梗概.2014
2.島田裕之.牧迫飛雄馬.認知症予防のための運動療法.日本基礎理学療法学雑誌.2015.第18巻2号,p 13-18

この記事の監修者

植田 祐己 美容皮膚科医

 
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