鉄分は貧血予防に効果的な栄養素ですが、実は美容効果も高いことをご存知でしょうか。鉄分が不足すると、心身の不調だけではなく肌や髪のコンディションも低下し、外見にも変化を及ぼします。
今回は鉄分の主な働きと美容効果にフォーカスした内容をご紹介します。効果的な摂取方法も解説しているので鉄分を取り入れている方、これから検討したい方はぜひ参考にしてください。
鉄分について
まず鉄分の基本情報と鉄分不足についてご紹介します。
鉄分とは?
鉄分は、必須ミネラルの一つで体内に約3~5g存在しています。そのうち約70%は血液中の赤血球に含まれるヘモグロビン等に存在し、残りの鉄分は貯蔵鉄という形で肝臓や骨髄などに蓄えられています。
ヘモグロビンはヘム(鉄)とグロビン(タンパク質)の結合によって構成されており、全身へ酸素を運搬する重要な働きを持っています。つまり、鉄分が不足するとヘモグロビンも減少し、貧血などの身体の不調が引き起こされるのです。
1日の推奨摂取量
鉄分の推奨摂取量は年齢によって異なります。女性の場合は月経や妊娠中によっても必要量は変わります。各年齢における推奨摂取量を表にまとめてご紹介します。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)
〜鉄の1日あたりの推奨摂取量〜
年齢 | 男性 | 女性(月経あり) | 女性(月経なし) |
18〜49歳 | 7.5mg | 10.5mg | 6.5mg |
50〜64歳 | 7.5mg | 11.0mg | 6.5mg |
65〜74歳 | 7.5mg | – | 6.5mg |
75歳以上 | 7.0mg | – | 6.0mg |
妊産婦の女性は、ご紹介した鉄分量にプラスして以下の表の量を摂取することを意識しましょう。
妊婦 初期 | 2.5mg |
妊婦 中期 | 9.5mg |
授乳期 | 2.5mg |
鉄分不足による影響
鉄不足によって起こる症状や身体的変化について、各項目ごとにご紹介します。当てはまるものはないかチェックしてみましょう。
症状
・動悸、息切れ
・倦怠感
・めまい
・集中力、意欲の低下
身体的変化
・顔色が悪くなる
・髪の乾燥
・肌荒れ
・口内炎
・爪がもろくなる、形が変形している
これらの項目以外にも、まだ詳しい原因は明らかになっていませんが、無性に氷が食べたくなる氷食症という異食症の一種が起こることがあります。
鉄不足になりやすい人
鉄分は体質や生活習慣によっても、不足しやすい人とそうでない人に分かれます。どのような人が鉄不足になりやすいのか、タイプ別にご紹介します。
女性や成長期の子供
女性は、月経による出血が定期的に起こることで貧血になりやすい傾向にあります。そして、妊娠中・授乳中・子供は、発育のために多くの血液供給・鉄分が必要となることから、鉄分が不足しやすい傾向にあります。この時期における方達は、いつもよりも意識して鉄分を摂取するようにしましょう。
高齢者やダイエット中の人
食事量の低下や偏食によって栄養バランスが崩れ、鉄分の摂取も低下しやすい傾向にあります。
スポーツをしている人
アスリートに多いスポーツ貧血をご存知でしょうか。鉄分は汗などから体外へ放出されます。また、運動時は多くの酸素供給が必要であり、鉄の消費量が多くなります。そのため、運動量が多く日常的に発汗量が多い人ほど、鉄分の消費量は大きくなります。
このように、鉄分は体にとって大きな役割を担っており、女性だけではなく幅広い年代の男女に不足しやすい栄養素であるといえます。ご紹介した項目に該当する人は、鉄分の補充を意識してみてはいかがでしょうか。
鉄分の効果
鉄分は、赤血球中のヘモグロビンと共に全身に酸素を運ぶことを冒頭でご紹介しました。酸素運搬は、全身の細胞の活性化を促進させる働きがあります。栄養素も全身に運ばれるため、肌や髪にも有益な効果をもたらします。
鉄分は、コラーゲンの生成に関わっており、健康的な肌を維持するには重要な栄養素になります。不足してしまうとコラーゲンの生成率が減少し、肌荒れや髪の乾燥といった外観的不調を引き起こす要因となることがあります。
スキンケアだけで改善されず肌荒れや血色不良に悩んでいる人は、体内の鉄分不足が問題となっている可能性もあります。鉄分の必要量を摂取し続けることは、健康を維持するだけではなく、肌や髪のコンディションを整えることにも効果を発揮してくれるのです。
効果的な摂取方法
鉄分はさまざまな方法で摂取することができ、比較的取り入れやすい栄養素ですが、一方で、吸収率が低いという特徴も持っています。サプリメントや食生活で積極的に取り入れていても効果を感じられない方は、もしかしたら摂取方法に問題があるかもしれません。鉄分の吸収率を高め、より効果を得やすくするための3つの方法についてご紹介します。
ビタミンCと一緒に摂取する
鉄分は、1つの栄養素として捉えられていることが多いですが、厳密にはヘム鉄と非ヘム鉄という2種類に分類されます。ヘム鉄とは動物性タンパク質に包まれた状態の鉄のことで、主に赤身の肉や魚に多く含まれています。体内の鉄吸収率が10〜20%と高く、他の食品と一緒に摂取しても吸収阻害されにくいため、ヘム鉄は比較的摂取しやすい鉄分です。
もう一方の非ヘム鉄は、主に小松菜やほうれん草などの野菜や豆類、海藻類に多く含まれています。吸収率は、ヘム鉄と比べると2〜5%と非常に低い特徴があります。このように、同じ鉄分でも種類によって、特徴や吸収率が異なってきます。
ビタミンCやクエン酸は、鉄分の吸収率を上昇させる働きを持っています。一緒に摂取すると効果を得やすくなるため、おすすめです。食材の特徴に応じた食べ方を意識し、吸収率アップに繋げましょう。
吸収率を下げる食品を控える
非ヘム鉄が吸収阻害されやすい食品成分を3つご紹介します。
1.タンニン
主に飲料に含まれている成分で、コーヒーや緑茶、煎茶などに含まれています。これらの飲料には、タンニンと同じく吸収を阻害するカフェインも豊富に含んでいます。極端に避ける必要はないですが、食事中や消化吸収が活発となる食直後は、できるだけ飲用を控えましょう。
2.食物繊維
食物繊維の中でも、水に溶けにくい性質を持つ不溶性食物繊維には注意しましょう。不溶性食物繊維は、腸内の水分を吸収し便の容積を増やし排便を促す働きをしています。適度な量であれば便秘の改善に効果的ですが、摂取量が多いと水分の喪失が大きいだけではなく、体内に取り込まれた鉄分も吸収されずに便と共に体外へ排出されてしまうことがあります。ただし、通常の食事内であれば、心配し過ぎる必要はないと言われています。
3.リン酸ナトリウム
主にスナック菓子やインスタント食品に多く含まれている食品添加物です。日常的に加工品を多く摂取している人は、吸収阻害の影響を受けやすくなっている可能性があります。嗜好品として、適度な頻度で楽しむ程度の摂取を目指しましょう。
腸内環境を整える
2013年医学研究で、代表的な4つの腸内細菌(ビフィズス菌、大腸菌、酪酸菌、乳酸菌)を調査した結果、全ての細菌が腸内で鉄分の吸収を助ける働きがあることが判明したと発表しています。つまり、腸内環境を整え細菌の活性化を目指すことは、鉄吸収に有益な効果を発揮することができるのです。
摂取時の注意点
鉄分は摂取方法に多様性があることから取り入れやすい反面、必要量以上の摂取には注意しなければなりません。健康のために意識して始めたものの、いつの間にか推奨量を越えてしまい、過剰摂取となっていることも少なくありません。
一時的であれば問題ないですが、長期的に過剰摂取が続いてしまうと、胃部不快感や吐き気、便秘といった胃腸障害を引き起こすことがあります。食事からの摂取で過剰症となることは少ないですが、サプリメントを服用する場合は種類によって含有量が異なるため、摂取量には注意しましょう。
まとめ
鉄分は健康を維持するだけではなく、美容への効果も高いので、アンチエイジングを目的とする人にもおすすめの栄養素です。ただ、多様な摂取方法があることから取り入れやすい反面、吸収率が低い特徴があります。そのため、より高い効果を得るためには摂取方法に注意しましょう。
また、栄養素の摂り過ぎは悪影響となることがあります。過剰摂取とならないよう、適切な量を補充することを意識して取り入れてください。