2024.02.14

食事・栄養

「ペプチド」って何?|気になる種類や効果的な取り入れ方をご紹介

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野尻 綾乃

整形外科専門医

みなさんは、近年話題の「ペプチド」についてご存知ですか?なんとなく体に良いと聞いたことがあるという方も少なくないと思います。簡単に説明すると、ペプチドはタンパク質アミノ酸の仲間です。

今回は、ペプチドがタンパク質やアミノ酸とどのように違うのか、ペプチドの特徴や効果についても分かりやすく解説していきます。

ペプチドの特徴

まずは、ペプチドがどのようなものか解説します。

ペプチドとは?

ペプチドは、2〜49個のアミノ酸が結合したものであり、ホルモン作用、神経伝達作用、抗菌作用など様々な生理活性作用を持っています。ペプチドの中でも、2個のアミノ酸が結合したものをジペプチド3個のアミノ酸が結合したものをトリペプチドと呼びます。また、ペプチドには自然由来のものと人工的に作られたものがあります。

タンパク質が体内に入ると、消化酵素により分解されペプチドとなり、最終的にアミノ酸として吸収されます。アミノ酸が連鎖している数や連鎖の仕方によって吸収されるスピードや停滞する時間が異なりますが「タンパク質よりも吸収されやすく、アミノ酸よりも活性作用が持続する」という特徴があります。

タンパク質について

タンパク質は三大栄養素のうちのひとつであり、20種類のアミノ酸が約50〜1,000個結合した化合物です。全ての動物や植物の細胞を構成する主要な成分です。私達の筋肉、臓器、皮膚、毛髪などの構成成分というだけでなく、ホルモン、酵素、抗体などの体の機能を調整する成分の材料となります。

アミノ酸について

アミノ酸は全部で20種類あり、ひとつでも欠けるとタンパク質を合成することができません。20種類のうち、人や動物が体内で合成することができないものを「必須アミノ酸」と呼び、合成できるものを「非必須アミノ酸」と呼びます。アミノ酸は、消化の必要がなく吸収されやすい形となっています。

【必須アミノ酸】
イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン、セリン、ヒスチジン

【非必須アミノ酸】
チロシン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、アルギニン

 

ペプチドの種類と効果

ペプチドには色々な種類があり、種類により効果も異なります。ここから、ペプチドの中でも代表的なものをご紹介します。

イミダゾールペプチド

イミダゾールペプチドは、主に動物の骨格筋や脳に含まれ、人の体にはカルノシン、鳥類や魚類にはアンセリン、クジラやイルカにはバレニン、と異なる種類が存在します。

このペプチドは抗酸化作用をもち、人では主に筋肉中に存在するため、運動機能向上効果抗疲労効果が確認されています。イミダゾールペプチドは、ドリンクやサプリメントとして販売されています。疲労を感じている方や、運動時に摂取するのが良いでしょう。

ホエイペプチド

ホエイペプチドは、ホエイタンパク質が分解されて作られるペプチドです。ホエイとは、乳から乳脂肪やカゼインタンパク質を取り除いたもので、消化吸収が早く、分岐鎖アミノ酸などの必須アミノ酸を豊富 に含むことから栄養学的に優れたタンパク質源です。

運動後の水分補給として、疲労感や筋肉痛、腹部膨満感を軽減させる効果があります。また、抗炎症効果腸管保護作用も認められています。ホエイペプチドの多くはパウダーで販売されています。運動や発汗を伴う活動時、活動後に摂るのが良いでしょう。

大豆ペプチド

大豆ペプチドとは、脱脂大豆から調整された大豆タンパク質を原料に微生物由来酵素を用いて加水分解により製造されます。軽度高血圧の方の血圧を下げる効果や、コレステロール低減効果、トリグリセリド濃度調整作用、血中インスリン濃度の低下作用などがあり、生活習慣病予防に効果があると考えられています。

また、脳の健康維持にも関与する可能性を指摘されています。大豆ペプチドは、パウダーやカプセルで販売されています。健康維持のため日常的に摂るのが良いでしょう。

イワシペプチド

イワシペプチドとは、イワシの筋肉タンパク質由来のペプチドです。必須アミノ酸が多く含まれており、その中でも多く含まれるバリルチロシンにより、降圧効果が期待できます。

イワシペプチドは、サプリメントとして販売されています。血圧が気になる方に効果的です。

 

ペプチドの活用方法

最後は、ペプチドの効果的な活用方法についてご紹介します。

食事から摂取する

自然由来のペプチドは、食事からの摂取が可能です。摂りたいペプチドが含まれるタンパク質を選びましょう。ペプチドの種類を意識するあまり、タンパク質の種類が偏らないようにバランス良く摂取しましょう。

【含まれる食品】
イミダゾールペプチド:肉や魚など。中でも鶏胸肉に豊富。
ホエイペプチド:牛乳、発酵乳、プロテインなど。
大豆ペプチド:納豆、味噌、醤油などの発酵した大豆食品。(※豆腐、油揚げ、湯葉などには含まれない。)
イワシペプチド:イワシ。

サプリメントを摂る

サプリメントからのペプチド摂取も可能です。食品から摂取することが大変だと感じる方や、習慣的にペプチドを摂りたいと考えている方には、サプリメントが便利です。

タブレットやドリンクなど色々なタイプがあります。選ぶ際は、ペプチドの量が多く、余分な添加物(増粘剤、着色料、甘味料、香料、保存料)が含まれていないもの、もしくは少ないものを選ぶようにしましょう。

医療

ペプチド療法やペプチドワクチンなどとして、医療の現場でも活用されています。

ペプチド点滴

一部の美容クリニックで、創傷の治癒加齢に伴う病気やアンチエイジングを目的として取り扱われています。症状に合わせたペプチドを点滴により体内に取り入れます。ペプチドはもともと体内に存在するものですので、副作用が起こる心配がほとんどなく、安心して取り入れることができる治療です。

点滴により直接血液内に取り入れるため、比較的効果が早く出ます。現段階ではまだ一般的な治療ではなく、自費診療となるため高額であることが多い状況です。

がんペプチドワクチン

がんワクチン療法として、「がん抗原」となるペプチドを免疫反応を促進する物質と共に皮膚または皮膚の下に投与します。抗原提示細胞がペプチドを食し「がん抗原」を提示し、がん抗原に対するT細胞が増殖・活性化してがん細胞を障害します。その結果として、がんの進行を抑える効果を期待できます。

化粧品

ペプチドはタンパク質と比較して肌への吸収速度が早く、保湿力が高いという性質があり、美容液に含まれる他の活性化成分の働きを助ける性質もあります。そのため、コラーゲンやエラスチンなど美肌に欠かせない成分の生成を助け、エイジングケア効果が高いと言われています。

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まとめ

近年注目されているペプチドについて、理解が深まりましたでしょうか。ペプチドの種類によって得られる効果は異なりますので、ご自身の目的にあったペプチドを取り入れていきましょう。

ペプチドの素晴らしい力を借りながら、より良い健康を目指すためには毎日の食事、運動、睡眠を整えることも忘れずに実践してください。

参照:
1.西谷真人 他.新規抗疲労成分:イミダゾールジペプチド.日本補完代替医療学会誌.第6巻第3号.2009年10月.p 123–129
2.靍知光.健常成人を対象とした運動による軽度脱水症に対するホエイペプチド配合飲料の有効性.薬理と治療.47巻11号.2019.p 1861 – 1869 
3.芦田欣也.ホエイペプチド配合流動食の腸管組織に対する効果.外科と代謝・栄養57巻1号2023年2月.p 22-26
4.新開省二.虚弱高齢者を対象とした運動 vs. 運動+栄養介入(大豆ペプチド)の効果に関する 無作為化比較試験.栄養学雑誌 Vol.67 No.2.2009.p 76-83
5.松元沙樹.大豆ペプチドによる老齢脳神経伝達物質代謝亢進作用の検討.大豆たん白質研究.Vol. 21.2018.p 65-70
6.末綱邦男 他.イワシ筋肉由来ペプチドのin vivoにおける血圧降下作用ならびに血管拡張作用について.日本栄養・食糧学会誌.42 巻 1 号.1989.p 47-54
7.師井美樹 他.ポリ(トリペプチド-6),ヒアルロン酸 Na を配合する溶解性シート化粧品の目尻の小ジワに対する有用性.西日本皮膚科.78 巻 4号.2016.p 414-421
8.関根孝.化粧品有効成分としての大豆ペプチドの皮膚透過性と その効果に関する研究.大豆たん白質研究.Vol. 11.2008.p 127-131

この記事の監修者

野尻 綾乃 整形外科専門医

 
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