2023.07.05

食事・栄養

脂質を多く含む食品を一覧でご紹介|控えるべきキケンな脂質は?

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植田 祐己

美容皮膚科医

脂質」と聞くと、どのようなことをイメージしますか?脂質はあまり摂らない方が良いと思っている方や、「太る」「体に良くない」と思っている方もいらっしゃると思います。しかし、脂質そのものが体に悪いわけではありません。

今回は、脂質についての理解を深め、健康維持に役立つ脂質選びのポイントをご紹介していきます。

脂質のきほん

まずは、「脂質」の基本を理解しましょう。

脂質とは

「三大栄養素」という言葉を聞いたことがありますか?三大栄養素とは、私達の体の成長発達や健康の保持増進に欠かせない栄養素で、「糖質」「タンパク質」「脂質」の3つの栄養素のことを言います。

中でも脂質は、糖質やタンパク質が、1gあたり4kcalであるのに対して、脂質は倍以上の9kcalもあり、高カロリー。そのため、効率良くエネルギーを摂ることができます。しかし、摂り過ぎると中性脂肪として体内に蓄えられ、さらに過剰になると肥満を招き生活習慣病の原因になることも。

肉類やバターなどの固形の脂、オリーブオイルなどの液体の油、そして動物の体内にある脂肪。種類はさまざまですが、これらの油脂は全て「脂肪酸」からできており、総称して「脂質」と呼ばれています。

脂質の種類

「脂質」と一言で言っても、全て同じものだというわけではありません。脂質は、主に「脂肪酸」を主成分とし、主に「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類に分けられます。

それぞれにどのような性質があるのでしょう。

飽和脂肪酸

パルミチン酸、ステアリン酸など動物性食品に多く含まれ、常温で固形になる脂質。摂りすぎると、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を増やし生活習慣病のリスクを高める可能性が。

【多く含む食品】
ギー、バター、ラード、生クリーム、肉類の脂身など

不飽和脂肪酸

植物油や魚油・大豆油などに多く含まれる、主に常温で液体の脂質。体内で合成できないため、摂取する必要がある必須脂肪酸はこれに含まれます。不飽和脂肪酸は、血液中の余分な中性脂肪やコレステロールを減らし、血液をサラサラにする働きがあります。特に青魚の油に多い多価不飽和脂肪酸は、心疾患のリスクを下げると言われています。

不飽和脂肪酸は、さらに「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分けられます。

不飽和脂肪酸 一価
不飽和脂肪酸
オメガ9系 オレイン酸など オリーブオイル
アボカドオイル
パーム油など
多価
不飽和脂肪酸
オメガ6系 リノール酸など ゴマ油
紅花油
ひまわり油
グレープシードオイル
オメガ3系 αリノレン酸、
DHA、EPAなど
亜麻仁油
えごま油
魚の油
ヘンプシード
オイル

脂質の主な働き

糖質やタンパク質が1gあたり4kcalなのに対し、脂質は1gあたり9kcalのエネルギーを産生できるため、体内の重要なエネルギー源です。また細胞の膜や、ホルモンなどの構成成分であったり、脂溶性ビタミンの吸収を助けるなど、生命活動のための様々な役割を果たしています。

【脂質の働き】
・細胞膜の主要な構成成分
・エネルギー産生の主要な基質
・脂溶性ビタミンやカロテノイドの吸収促進
・優先的なエネルギーの蓄積物質
・肝臓で脂質の吸収を促進する胆汁酸になる
・ホルモンやビタミンDのもと
・皮下脂肪として体温維持、内臓保護

脂質の1日の摂取量目安

厚生労働省の定める脂質の食事摂取基準は、以下のようになっています。
(脂質の総エネルギーに占める割合(脂肪エネルギー比較):%エネルギー)

性別 男性 女性
年齢等 目標量 目安量 目標量 目安量
0〜5(月)   50   50
6〜11(月)   40   40
1〜2(歳) 20〜30   20〜30  
3〜5(歳) 20〜30   20〜30  
6〜7(歳) 20〜30   20〜30  
8〜9(歳) 20〜30   20〜30  
10〜11(歳) 20〜30   20〜30  
12〜14(歳) 20〜30   20〜30  
15〜17(歳) 20〜30   20〜30  
18〜29(歳) 20〜30   20〜30  
30〜49(歳) 20〜30   20〜30  
50〜64(歳) 20〜30   20〜30  
65〜74(歳) 20〜30   20〜30  
75〜(歳) 20〜30   20〜30  
妊婦(付加量)    
授乳婦(付加量)  

 

脂質は、性別や年齢関係なく1日の摂取エネルギーのうちの20〜30%が目標量となっています。さらに、その摂取量のうち、飽和脂肪酸は7%以下が目標量となっています。また、脂質の中でもオメガ6系脂肪酸オメガ3系脂肪酸に関しては、摂取目安量の基準が設けられています。

オメガ6系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)

性別 男性 女性
年齢等 目安量 目安量
0〜5(月) 4 4
6〜11(月) 4 4
1〜2(歳) 5 5
3〜5(歳) 7 6
6〜7(歳) 7 7
8〜9(歳) 9 7
10〜11(歳) 9 8
12〜14(歳) 12 10
15〜17(歳) 13 10
18〜29(歳) 11 8
30〜49(歳) 10 8
50〜69(歳) 10 8
70〜(歳) 8 7
妊婦(付加量)   9
授乳婦(付加量) 9

オメガ3系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)

性別 男性 女性
年齢等 目安量 目安量
0〜5(月) 0.9 0.9
6〜11(月) 0.8 0.8
1〜2(歳) 0.7 0.8
3〜5(歳) 1.3 1.1
6〜7(歳) 1.4 1.3
8〜9(歳) 1.7 1.4
10〜11(歳) 1.7 1.5
12〜14(歳) 2.1 1.8
15〜17(歳) 2.3 1.7
18〜29(歳) 2.0 1.6
30〜49(歳) 2.1 1.6
50〜64(歳) 2.4 2.0
65〜74(歳) 2.2 1.9
妊婦(付加量)   1.8
授乳婦(付加量) 1.8

脂質が不足するとどうなるの?

「脂質」がダイエットの大敵と思っている方もいらっしゃると思います。もちろん、過剰な脂質の摂取は色々な肥満や高脂血症など生活習慣病のリスクとなります。しかし、控えれば良いというわけではありません。脂質は体の中でエネルギーとなる以外にも、先に述べたような生命維持に必要な役割を担っています。

これらの働きが阻害されると、エネルギー不足になったり、体のあらゆる細胞や、性ホルモンなどのさまざまなホルモンを生成できなくなったりするため、生命活動の維持が困難になります。具体的には以下のような影響が出るでしょう。

【脂質の不足で起こり得る症状】
・免疫機能が低下して抵抗力が落ちる
・エネルギー不足により疲れやすくなる
・細胞膜や血管壁が脆弱になる
・低体温
・便秘や肌荒れの原因になる
・肌や髪の乾燥の原因になる
・月経トラブルの原因になる

質の悪い脂質と質の良い脂質の違い

不飽和脂肪酸の中には「トランス脂肪酸」という種類のものが存在します。多くのトランス脂肪酸は、油脂の加工・精製で作られます。生活習慣病の予防の観点からも多く摂らないことが推奨されています。

しかし、​​日本ではトランス脂肪酸の表示義務はありません。食品表示を見る際に「加工油」「植物性油脂」「食用調合油」などといった表示を見つけた際には避けるのがベター。

また、マーガリンやショートニングなどに含まれており、安価で手軽に摂りやすいファストフードや菓子パン、スナックなどに含まれていることが多い成分です。頼りたくなることもあるかも知れませんが、健康のためには避けたいものです。

トランス脂肪酸って危険なの?|健康を害する理由と控えるべき食品

 

良質な脂質を含む食品とは?

では、反対に健康の維持のためにおすすめの脂質にはどのような食品があるのかご紹介していきます。

良質な脂質を含むおすすめ食品

食品 飽和脂肪酸 オメガ6系脂肪酸 オメガ3系脂肪酸
オリーブオイル 13.29 6.64 0.6
アマニ油 8.09 14.5 56.63
えごま油 7.64 12.29 58.31
バター/無発酵 50.45 1.86 0.33
ラード 39.29 9.35 0.46
えごま(種実/乾) 3.34 5.12 23.7
あまに(種実/炒り) 3.62 5.63 23.5
鶏卵/乾燥全卵 12.29 5.84 0.29
魚介類
(あんこう/きも)
9.29 1.63 100.00
米ナス/素揚げ 1.22 3.14 1.27

 

※表の中の数字は、100gあたりの量になっています。

油脂類は、熱を加えることで酸化が進んでしまうため、非加熱の状態で使用することによって良質な脂肪酸を摂ることができます。サラダのドレッシングや、パンに付けたりして摂るのがおすすめ。また、上記以外にもMCTオイルやココナッツオイルも良いでしょう。

種実類は、上記以外にも良質な脂肪酸を含んでいるものが多くあります。くるみや落花生、チアシードなども良いでしょう。小腹が空いたときに、おやつの代わりに食べるのがおすすめです。

野菜類では、ほうれん草や枝豆、アボカド。魚介類では、魚の缶詰にはオメガ6系脂肪酸が多く含まれているものがたくさん。いわし、かつお、まぐろなどの缶詰も良質な脂質を摂取することができます。

MCTオイルの美容・健康効果がスゴイ!|守るべき注意点も解説

 

まとめ

嫌厭されがちな脂質ですが、体にとって重要な働きを担っていることが分かりましたね。また、脂質の中にも、私達の体にとって良いものと悪いものがあるということもお分かりいただけたと思います。健康に過ごすためには、トランス脂肪酸は控えていきたいですね。

また、オイルは酸化を避けるためにも、なるべく新鮮なものを選び、開封したら早めに使い切るというのも大切なポイントです。脂質選びをマスターし、嫌われがちな「脂質」も味方につけて健康づくりをしていきましょう。

この記事の監修者

植田 祐己 美容皮膚科医

 
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