皆さんは甲状腺ホルモンを増やす食べ物にはどんな種類があるかご存知ですか?甲状腺ホルモンは、私たちの身体の新陳代謝を調節する重要なホルモンの一種です。
この記事では、甲状腺ホルモンの役割と、それを増やす食材について解説します。
甲状腺ホルモンとは?
まず、甲状腺ホルモンについて理解を深めましょう。
甲状腺ホルモンの役割
甲状腺ホルモンの役割は、一言で表すと「身体の新陳代謝を調節する働き」を司っていますが、このほかにも以下の役割を担っている臓器です。
・エネルギーの消費力を高める
・身体全体の新陳代謝を促進する
・自律神経の働きを調節し、脈拍や体温を一定にキープする
・脳の働きを活性化させ、認知症や鬱の予防をサポートする
甲状腺ホルモンは様々な働きを行っていますが、このホルモンが過剰になっても減少しても、身体に様々な問題が発生します。細胞・身体の活動を調節する化学物質を脳の指令を受けて作り、量を調節してくれる甲状腺ホルモンを一定に保つことで、私たちの身体のバランスは保たれているのです。脳の指令を受けて量を調整することで、私たちの身体のバランスは保たれているのです。
甲状腺ホルモンが製造されている臓器
甲状腺は、首の中央にあり、喉ぼとけのすぐ下に位置する、大きさが約4~5㎝の蝶が羽を広げたような形をしている臓器のことです。約15gほどしかない大変小さな臓器ですが、この臓器で私たちの身体に有益な甲状腺ホルモンを作り出しています。
甲状腺ホルモンの量が多過ぎたり少な過ぎたりしないように通常はバランスが保たれていますが、甲状腺の働きに異常が現れるとバランスが崩れてしまい、様々な病気や症状となって現れます。
甲状腺ホルモンを増やす食べ物と効果
次に、甲状腺ホルモンを増やす食べ物と摂取すると得られる効果について解説します。
甲状腺ホルモンを増やす食材
甲状腺ホルモンを増やす食材は、主に以下の2種類に分けられます。ヨウ素を増やす食べ物として良く知られているのは「海藻類」ですが、このほかにもヨウ素を含む食べ物があります。では、順に紹介します。
植物性食品
甲状腺は海藻などに含まれている栄養素である「ヨウ素(ヨード)」を取り込み、これをもとに甲状腺ホルモンを作ります。甲状腺ホルモンを増やすヨウ素を多く含んでいる植物性食品を、ランキング形式で表でまとめるので是非参考にしてください。
ランキング | 食品名 | ヨウ素含有量(100gあたり) |
1位 | 刻み昆布 | 230,000㎍ |
2位 | ながこんぶ(素干し) | 210,000㎍ |
3位 | 真こんぶ(素干し・乾燥) | 200,000㎍ |
4位 | 干しひじき(ステンレス釜) | 45,000㎍ |
5位 | 干しひじき(鉄釜) | 45,000㎍ |
6位 | 昆布茶 | 26,000㎍ |
7位 | 真こんぶ(素干し・水煮) | 19,000㎍ |
8位 | 昆布だし(煮だし) | 11,000㎍ |
9位 | 昆布の佃煮 | 11,000㎍ |
10位 | 乾燥わかめ | 10,000㎍ |
特に「刻み昆布」にヨウ素が多く含まれているため、毎日昆布を食べる習慣がある場合は注意が必要です。
動物性食品
動物性食品でのヨウ素含有量が多い食べ物は「魚類」ですが、「だし巻き卵」にも多く含まれています。以下の表で、動物性食品中にヨウ素がどれくらい含まれているのかをランキング形式で紹介しますので、日々の食生活の参考にしてくださいね。
ランキング | 食品名 | ヨウ素含有量(100gあたり) |
1位 | たまご豆腐 | 770㎍ |
2位 | 厚焼きたまご | 540㎍ |
3位 | だし巻きたまご | 450㎍ |
4位 | しめさば | 430㎍ |
5位 | まだら | 350㎍ |
6位 | 黒あわび | 200㎍ |
7位 | 卵黄(ゆで) | 200㎍ |
8位 | めがいあわび | 190㎍ |
9位 | まだかあわび | 190㎍ |
10位 | 生ハム | 180㎍ |
ヨウ素を含む植物性食品および動物性食品を上手に献立に取り入れることで、甲状腺ホルモンを増やす食べ物を効果的に摂取できます。
甲状腺ホルモンが増えた時の影響
ここからは、甲状腺ホルモンが増えた時に起こり得る影響について解説していきたいと思います。
メリット
甲状腺ホルモンは「元気ホルモン」とも呼ばれ、全身の代謝を調節する働きを担っています。代表的な甲状腺ホルモンは「サイロキシン」「カルシトニン」と呼ばれ、これらの甲状腺ホルモンが増えることで、全身の多くの細胞の代謝が活発になります。
そのため甲状腺ホルモンの分泌が増えることで、血液にのって運ばれてくる甲状腺ホルモンが全身に行き渡るというメリットがあります。甲状腺ホルモンの分泌が増えると血液を通じて全身に運ばれ、全身の細胞に影響を及ぼします。
さらに甲状腺には自律神経も豊富に分布しており、神経の調節では電気信号が使われますし、自律神経には交感神経・副交感神経という相反する作用を持つ2つの神経があり、これら交感神経と副交感神経ののバランスが程よく保たれることで、私たちの健康が維持できるというメリットもあります。
デメリット
甲状腺ホルモンが過剰になると、心臓がドキドキする・暑がりになる・汗がたくさん出るなどの症状が現れます。これは「甲状腺機能低下症」「甲状腺機能亢進症(バセドウ病)」と呼ばれる病気で、特に女性に多く見られます。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている状態を放置しておくと、低栄養状態に陥り心房細動から心不全を起こすリスクが高まります。また黄疸を伴うような肝臓の病気が現れたりする可能性があるため、適切な治療が必要です。
食事と副交感神経の関係
甲状腺ホルモンが司っている働きの1つに、交感神経・副交感神経のバランスを保つというものがありますが、この副交感神経は食物の消化を良くするのに大切な役割を担っている神経です。
食事を摂取するとき、副交感神経の働きが高まり、唾液の分泌が増し、その結果胃腸の働きも活発化して口から摂取した食物の消化がスムーズに行われます。つまり、食事を取るタイミングで副交感神経も活発化させるために、甲状腺から出るホルモンの分泌が増えるといえるのです。
甲状腺とヨウ素
では、甲状腺とヨウ素の関係について解説します。ヨウ素は甲状腺ホルモンを作るうえで欠かせない成分ですが、少し注意すべき点があります。
ヨウ素とは
ヨウ素は私たちの健康を維持するために欠かせない微量ミネラルの一種で海洋中に多く存在し、海藻・魚介類に多く含まれます。私たちの体内の70~80%ものヨウ素が甲状腺に集まっており、ここで成長およびエネルギー代謝に重要な役割を果たす甲状腺ホルモンの原料となります。
ヨウ素は甲状腺で甲状腺ホルモンが作られ、全身の臓器に運ばれ体内の新陳代謝の調節を行うのみならず、胎児の脳・抹消組織・骨格などの発育にも非常に重要な役割を果たしています。
ヨウ素の過剰摂取で起こり得る影響
ヨウ素を日常的に過剰摂取すると、甲状腺ホルモンの合成が抑制され、甲状腺の機能低下を引き起こす恐れがあります。この場合の過剰摂取は、ヨウ素を多く含む食べ物を摂取した結果生じるもののみならず、ヨウ素が含有されているうがい薬などにも注意する必要があります。
例えば昆布を毎日摂取するとヨウ素過剰になってしまいますが、昆布を毎日食べるという習慣を改めるとヨウ素の過剰摂取は自然に回復します。
ヨウ素の摂取に注意すべき病気
ヨウ素を必要以上に接種すると、甲状腺の組織が破壊され「橋本病(慢性甲状腺炎)」を発症する恐れがあります。日本人の食生活において、ヨウ素が多く含まれる食べ物を自然に口にする文化が根付いています。
そのため、あえてヨウ素が含まれている食べ物を選んで料理しなくても、知らないうちに必要量もしくはそれ以上のヨウ素を摂取出来ている極めてまれな民族なのです。
甲状腺ホルモンの分泌を促進させる方法
最後に、甲状腺ホルモンの分泌を促進させる方法について解説します。
口から摂取する
甲状腺ホルモンを多く分泌させるためには、口からヨウ素を多く含んだ食べ物を摂取することで甲状腺ホルモンを増やせます。これは、以下の「喉の刺激」の部分でも詳しく解説しますが、口から食べ物を入れ、飲み込むときに喉からの情報で甲状腺につながっている副交感神経を活性化させる反射が起こることで、甲状腺ホルモンの分泌が高まっていると考えられています。
喉の刺激
口から食べ物を入れ、喉(咽頭)を刺激することで甲状腺からのホルモンの分泌が約2倍に増加することも研究で明らかになっています。この反応は、喉に物が触れたことを脳に伝える神経が刺激され、甲状腺につながる副交感神経が活性化することで起こる現象です。このように喉の刺激によって自動的に起こる反応のことを「反射」と呼びます。
まとめ
甲状腺ホルモンは私たちの健康を維持するうえで欠かせないホルモンですが、多過ぎても少な過ぎても悪影響を及ぼします。)(どのホルモンも過剰や不足で悪影響を及ぼすので、甲状腺ホルモンのみが特殊というわけではありません。)そのため、適切なバランスを保ちながら食生活に取り入れることを意識してくださいね。