皆さんはFODMAPという言葉を聞いたことはありますか?近頃とても話題になっているFODMAPですが、一体FODMAP食とはどんなものなのでしょう。
この記事ではそんなFODMAP食について解説するとともに、摂取時のポイントや注意点も併せてご紹介します。
FODMAPとは?
FODMAPとは、小腸で吸収されにくい発酵性糖質のことを指し、これらの頭文字をとって作られた言葉です。それではFODMAPについて詳しく解説していきましょう。
FODMAPについて
先ほどFODMAPは頭文字をとって作られた言葉と紹介しましたが、実際には以下の言葉の頭文字を組み合わせて作られました。
・F:Fermetable(発酵性の)
小麦・パン・パスタなどに含まれている糖質
・O:Oligosaccharides(オリゴ糖)
豆類に含まれているガラクトオリゴ糖、小麦や玉ねぎ等に含まれているフルクタン
・D:Disaccharides(二糖類)
ヨーグルト等に含まれている乳糖
・M:Monosaccharide(単糖類)
果物やはちみつ等に含まれている果糖
・A:And
・P:Polyols(ポリオール)
キシリトール・ソルビトール・マンニトール等の糖アルコール
FODMAPには、ヨーグルトや納豆など腸の健康維持につながる食べ物があります。しかし、人によって摂取し過ぎるとお腹の不調(腹痛・膨満感・下痢など)を引き起こすこともあるため、注意が必要です。
通常の糖質は小腸で吸収されますが、FODMAPは小腸で吸収されにくく、そのまま大腸に送られます。腸内の糖質濃度を高めるため、水分が腸内に漏れて来やすくなり、下痢や腹痛を起こしやすくなります。また、発酵しやすいため、腸内でガスを産生し、腹部膨満感の原因となります。
FODMAPは、過敏性腸症候群(IBS)の原因の1つとして考えられており、低FODMAP食で症状が改善したという報告もあがっています
過敏性腸症候群(IBS)とは
過敏性腸症候群(IBS)とは、腸が精神的ストレスや自律神経失調症などが原因で刺激に対し過敏な状態になり、便通異常を起こす病気のことを指します。腸の検査をしても潰瘍や腫瘍などの異常を認めず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を感じたり、下痢・便秘などの便通異常がみられたりします。
これは、腸の内臓知覚神経が何らかの原因で過敏になっていることで引き起こされていると考えられており、その症状の現れ方で「下痢型」「便秘型」「混合型」の3つに分類されます。
過敏性腸症候群(IBS)の型 | 症状 |
下痢型 | 突如起こる下痢が特徴で、若い男性に多い |
便秘型 | 腸で便が停滞し、便意があってもコロコロとした固い便になる。年配女性に多い |
混合型 | 下痢と便秘を交互に繰り返す |
暴飲暴食、過度の飲酒、不規則な食生活などが原因になっていることが多いため、まずは生活習慣の改善を行うことが大切です。また、ストレスが原因とみられる場合は、その原因をはっきりさせてストレスを緩和していくことも必要です。
高FODMAPと低FODMAPとは
FODMAPについて理解を深められたところで、今度は「高FODMAP」と「低FODMAP」について解説していきたいと思います。高FODMAPはFODMAPが大量に含まれている食べのもののことを指し、低FODMAPはFODMAPの含有量が少ない食べのもののことを指します。
摂取する人の体質により程度の差はありますが、FODMAPは、腹痛・下痢・ガスがたまった感じなどお腹の症状を引き起こすことがあります。過敏性腸症候群の方は、FODMAPをたくさん摂取することで症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。
ここで重要なことは、どの食品によってどのような症状が出るかは個人差が大きく、食べても症状が出ない食品まで避ける必要はないということです。摂取する食品を制限し過ぎると、栄養バランスの偏りなどを招きかねないので、加えて注意が必要です。
FODMAPが体にもたらす影響
大量に摂取したFODMAPがそのまま大腸内に流れていくことで、大腸内でガスの産生・水分の増加が起こり、その結果腹痛・下痢・ガス溜まりなどの症状が現れます。
これらの症状に心当たりがある方は、FODMAPの含有量が少ない食事を最低3週間は心がけることで、改善される可能性があります。とはいえ、一体どのようなサインが出ていたらFODMAPを気にすれば良いのでしょう。
セルフチェックポイント
日常生活において以下のサインが出ていたら、FODMAPを心掛けた食生活を送ってみてください。
・思い当たるストレスやお腹を壊す食事をした覚えがないのに、便秘や下痢を繰り返す
・お腹にガスが溜まって張っているようで苦しい
・胃や腸にもやっとした不快感がある
・食べすぎや飲みすぎ、消化不良を起こすような食べ方をしていないのに、胃がもたれる
これらの症状を感じる場合、適量を超えた際に不調を引き起こす可能性の高い糖質(FODMAP)が原因かもしれません。要因となる食べ物は人によって様々で、その人にとって相性の悪い食べ物を大量に食べてしまうと現れる症状のため、適正量を理解した上で摂取できれば、これらの不快症状に遭遇することなく健康でストレスなく暮らせます。
高FODMAP食摂取によって起こり得る不調
高FODMAP食を摂取することで、どのような不調が起こり得るのでしょう。
通常の糖質は小腸で吸収されますが、FODMAPは小腸で吸収されにくく、そのまま大腸に送られます。腸内の糖質濃度を高めるため、水分が腸内に漏れて来やすくなり、下痢や腹痛を起こしやすくなります。また、発酵しやすいため、腸内でガスを産生し、腹部膨満感の原因となります。
もし期限切れの食べ物を食べたり、腐りかけの食材を調理に使ったりなどの心当たりがないのに、下痢・軟便・便秘・腹痛・膨満感などの諸症状が出ている場合は、高FODMAPによる影響も考えられます。そのため、FODMAPを専門的にみている医療機関を一度受診し相談するとよいでしょう。
FODMAP食一覧をご紹介
ここからは、「高FODMAP食」及び「低FODMAP食」を分かりやすく一覧でまとめます。ぜひ参考にして、日々の食生活の中に摂り入れてみてくださいね。
高FODMAP食一覧
高FODMAP食は、吸収されにくく腸で発酵しやすい「炭水化物(糖質)」を多く含む食材のことで、小腸で吸収されにくく腸内の糖質濃度を薄めるため腸内に水分が集まることで腹痛や下痢の原因になることは既にご紹介した通りです。
高FODMAPの食材は身近な食べ物に意外に多くあるため、低FODMAPだけの食事に長期にわたりこだわってしまっては返ってストレスになってしまう可能性もあります。
そのため、高FODMAP食を取り除いた食事は最低限の期間だけ続け、その後は上手く高FODMAP食を取り入れつつ、自分に合わない食材は何かを知る努力をすることが大切です。
種類 | 食材 |
果物 | リンゴ・梨・マンゴー・さくらんぼ・イチジク・スイカ・ドライフルーツ・桃・プラム など |
野菜 | ニラ・ニンニク・ネギ・玉ねぎ・カリフラワー・ゴボウ・アスパラガス など |
シリアル・穀物類 | パン・ライ麦・パスタ・シリアル など |
豆類 | インゲン豆・そら豆・ひよこ豆 など |
乳製品 | プロセスチーズ・クリームチーズ・ブルーチーズ・ヨーグルト など |
肉類 | ソーセージ・魚の缶詰 など |
ナッツ類 | カシューナッツ・ピスタチオ など |
調味料・ソース類 | トマトケチャップ・バーベキューソース・オリゴ糖・果糖ブドウ糖液糖 など |
低FODMAP食一覧
FODMAPを活用した食事療法で使われている方法で、FODMAPの摂取量を減らしていきながら、その人にとっての不調の原因になる食材を見つけ、食事により引き起こされる消化器系の不調の改善を目指すために使われいてる低FODMAP食のベースとなる食材です。
種類 | 食材 |
果物 | キウイフルーツ・バナナ・パイナップル・オレンジ・レモン・イチゴ・ブルーベリーなど |
野菜 | 人参・ピーマン・カボチャ・キュウリ・ほうれん草・ジャガイモ・なす・トマト・ブロッコリーなど |
シリアル・穀物類 | 米・玄米・そば・オートミール・コーンスターチ・タピオカなど |
乳製品 | バター・マーガリン・モッツァレラチーズ・パルメザンチーズ・カマンベールチーズ・チェダーチーズなど |
肉類 | 肉類全般・魚介類全般 |
ナッツ類 | アーモンド(10粒以下)・ピーナッツ・くるみなど |
調味料・ソース類 | マヨネーズ・オリーブオイル・酢など |
低FODMAP食を心がけよう
それでは低FODMAP食を心がけるには、一体どのようなポイントに注意を払いながら進めていけば良いのかを解説していきましょう。
低FODMAP食の実践時のポイント
低FODMAP食は、食事を制限するためのツールではなく、あくまで自分の消化器症状の原因となり得る食材を探すためのものです。さらに低FODMAP食の実践を成功させるカギとなるポイントは、「制限期間」「チャレンジ期間」「維持期間」の3つのプロセスをやりきることにあります。
では、これらの3つのプロセスを詳しく解説していきましょう。
①制限期間(3週間ほど)
FODMAPが含まれる食品を一度全て取り除いてみる期間で、この期間を過ぎても症状が改善しない場合は、FODMAPを上手く食事から取り除けていない・食事以外の要素が原因で消化器症状を引き起こしているということが考えられます。
そのため、効果が見られない場合は、低FODMAP食にこだわるのではなく、他のアプローチを試してみることが大切です。
FODMAPが含まれる食材の制限を長期間続けることで、身体に必要なビタミン・ミネラルなどの栄養素が不足するばかりではなく腸内細菌への悪影響もあるため、この期間で成果が見られない場合は、低FODMAP食に執着する必要はありません。
②チャレンジ期間(6~8週間ほど)
この期間は再導入期間とも呼ばれ、低FODMAP食を続けながらFODMAPの「F・O・D・M・P」のどのグループの食材を摂取した時に、消化器症状が出るかを確認する期間です。
この過程を経て症状がでなければ、その食品を摂取しても体調面で問題ないということが分かると共に、もし症状が出た場合は、どれくらいの分量を食べれば身体に不調が生じるかの目安を知ることにも繋がります。
とはいえ、全ての食材で反応をチェックするとなると、気が遠くなるほどの時間を要すため、普段自分が高頻度で食べていた食材から試していくことをおすすめします。また、既に自分に合わない食材を認識している場合は、その食材で試す作業は不要です。
③維持期間
身体に合わない食材や許容範囲を超える分量が分かったら、次はその食材を避けつつ栄養バランスのとれた食事を維持していきます。消化器の不調のみを念頭に置き、バランスの取れた食事を怠れば、健康的な食生活の乱れにつながりかねません。
そのため、消化器症状を防ぎながらもバランスの取れた食事を摂取することが、生活の質を高める上で欠かせないポイントです。
低FODMAP食を選ぶときのポイント
低FODMAPを選ばないといけないという事だけ気にしていては返ってストレスが溜まり、これまで不調の要因ではなかったはずの事柄で体調不良を引き起こしてしまいかねません。
そこで、日常生活で簡単に実践できる低FODMAP食を選ぶときのポイントを知ることで、普段の食生活から少し意識することで簡単に低FODMAP食が叶います。
①パンなどの軽食よりもおにぎりを選ぶ
小麦・ライ麦・大麦などを使って作られている惣菜パンではなく、おにぎりを選ぶことで低FODMAP食を実現できます。おにぎりに使われている米・海苔・魚介類は低FODMAP食なので、鮭のおにぎりなどを選ぶことをおすすめします。
②パスタやラーメンより蕎麦やビーフンを選ぶ
麺類が食べたい時には、十割蕎麦や米が原料のビーフンを選ぶことで低FODMAP食が実現できます。
③ナッツ類は量と種類で選ぶ
おやつにナッツ類を選ぶことは良いですが、種類や量によっては高FODMAP食になってしまうため、注意が必要です。例えば、アーモンドは10粒以下に抑えることで低FODMAP食になりますが、ピスタチオやカシューナッツは高FODMAP食です。
④紅茶・緑茶・ココアを選ぶ
口当たりが良い甘い飲み物に含まれる果糖ブドウ糖液糖は高FODMAPで、お腹に優しいといわれているオリゴ糖・てんさい糖が含まれている飲み物も避けた方が無難です。紅茶・緑茶・ココアは低FODMAPの飲み物のため、安心して摂取して大丈夫でしょう。
まとめ
高FODMAP食は栄養価が高く、私たちの身体に欠かせない栄養素を含んでいる食材も多いため、完全に排除すると栄養バランスが崩れてしまいます。そのため、自分に合わない高FODMAP食は何かを見つけ、その食材や許容分量を知った上で避けるべきかどうかの判断をすることが大切です。
また同じ食材でも調理方法で低FODMAPにも高FODMAPにも変わるため、身体と食材および調理方法の相性を確かめながら避けるべき食品を見分け、バランスの取れた食生活を送るように心がけてください。