次世代エネルギー源として注目を集めている水素。実は健康にも非常に有益な効果をもたらすことから、水素を用いた治療が話題となっています。
水素が美容や健康に良いことは耳にしたことはあるものの、なぜ健康になるのか、本当に効果があるのか疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。
この記事ではこのような疑問を解消し、水素が身体にもたらす効果とその理由について医学的な視点から詳しく解説していきます。
水素について
まずは水素の基礎知識について解説していきます。
水素とは?
水素とは、あらゆる物質のなかで最も小さな分子です。通常は単体でほとんど存在しませんが、水や各種の化合物からさまざまな方法で取り出すことができる気体です。機械を用いて水(H20)を電気分解して水素を作ることができます。水素を体に取り込むと、大きな分子は通過できない体内の細部にまで行き届き、幅広い部位に効果をもたらしてくれます。優れた抗酸化作用を始めとする水素の効果については後述します。
水素は様々な方法で取り入れることができますが、まずは効果の高い吸入についてご紹介します。
治療方法と安全性は?
水素吸入は、専用のチューブを鼻に装着し、リラックスした状態でゆっくりと呼吸をして水素を吸い込む方法です。吸入時間や使用頻度は治療場所や身体の状態によって異なりますので、医師の判断のもとに行ってください。
水素は無害の物質であり、吸入に伴う副作用はほとんどありません。あるとすれば眠気、排尿回数や汗量の増加、身体のほてりなどです。これらは、水素吸入により副交感神経のはたらきが促された結果起こると考えられます。
次に安全性についてです。水素と聞くと爆発するというイメージを持っている方も少なくないと思いますが、通常の水素吸入器の操作で爆発が起こる可能性はほとんどありません。水素は酸素と結合すると化学反応によって水素爆発というエネルギー現象を起こすことがありますが、実際に爆発が起こるのは500度以上の高温であること、水素濃度が4%以上という条件が揃った場合です。
どのような人に効果的?
水素は、活性酸素を除去する「抗酸化作用」に優れています。病気の予防や健康の維持、美肌や老化予防などアンチエイジングに効果的です。また、あらゆる病気に対しての有効性が検証されています。糖尿病や高血圧などの生活習慣病、がん治療、アレルギー、精神疾患などに関して研究により治療効果が確認されています。
吸入以外の方法はある?
水素を体内に取り込む方法は吸入以外にもあります。
1.水素水
水素分子を含んだ水です。口から食道、胃、腸を通り、水素が体に吸収されます。消化器官やその周囲の組織へ広がり、炎症を抑制し、腸内環境を整えます。水素はプラスチックを通り抜けることができますので、水素水をペットボトルに入れても水素はどんどん抜けていきます。水素水は作ってからなるべく早く飲みましょう。
人間への効果ではありませんが、お花を水素水につけておくと長持ちしますし、野菜を水素水で洗うとシャキッと鮮度が戻ります。
2.水素風呂
お風呂で水素を発生させ、皮膚から水素を吸収します。お風呂から蒸発した水素を鼻から吸入することも可能です。機械をお風呂に入れて水素を発生させたり、入浴剤のような形で発泡させる方法もあります。肌がしっとりと滑らかになりますし、傷や筋肉痛を和らげる効果があります。アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の改善が期待できます。
3.サプリメント
摂取することで腸内で水素を発生させます。サンゴカルシウムやケイ素、岩塩などに水素を吸着させている製品が多いです。吸入やお風呂の合間に、旅行中に、持続的な効果を期待できます。腸から吸収された水素が全身を巡り、活性酸素を除去してくれます。目覚めが良くなったり、疲労感が減るという体感を期待できます。
4.水素点滴
水素を直接血管内へ取り込みます。ビタミン点滴、グルタチオン点滴などと併用されることがあり、水素が全身の血流に乗り、抗酸化作用を発揮します。点滴の直後から体がスッキリ軽くなると実感できます。
水素吸入の効果とは
水素吸入は主に3つの効果を発揮します。
抗酸化作用
水素吸入における最大の効果は、強い抗酸化力です。抗酸化とは病気や老化の原因となる活性酸素を体内で必要以上に増やさないよう健康を維持する防御機構のことをいいます。
人間の体細胞に存在するミトコンドリアは呼吸によって取り込まれた酸素を基にエネルギー源を作り出します。その際に同時に生成されるのが活性酸素です。体内に入った酸素の約2%は活性酸素になると言われています。活性酸素は主に2種類あり、体にとって有効な働きを果たす善玉活性酸素と、悪さをする悪玉活性酸素があります。水素が体内に入り込むと悪玉活性酸素と結合し、水素自身は水へと変換され、最終的には尿という形で排出されます。
抗酸化物質といえばビタミンCやEが有名ですが、これらは実は善玉活性酸素も排除してしまいますし、抗酸化作用をもたらした後に自分自身が酸化型に変化し、他の抗酸化物質の力を必要とするようになるのです。その一方で水素は悪玉活性酸素のみに反応し結合し、自身は無害な水となります。必要な物質を損なうことなく有害物質のみを排除することができる優れた作用を持っています。
抗炎症作用
2021年に発表されたある研究論文では、多くの炎症の誘発には細胞内のミトコンドリアによって生成された活性酸素が原因であると発表しています。つまり水素の持つ抗酸化作用によって酸化障害を抑制するということは体の炎症も抑制させることができるといえます。慶應義塾大学では、急性心筋梗塞や心肺停止などの急性疾患に対する水素吸入療法が、すぐれた効果を示すことを報告しています。
抗アレルギ—作用
水素がアレルギーに関わる細胞の働き、炎症性サイトカインの放出を抑制してアレルギーを抑えるという研究があります。アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、喘息などの改善例が数多く報告されています。
エビデンス(科学的根拠)はある?
水素吸入療法はどのようにして医療的治療に至ったのでしょうか。研究開始に伴う背景と医療現場におけるエビデンスを用いた最新の治療方法について解説します。
水素吸入療法の治療背景
水素の医学的な効果が初めて公に発表されたのは、2007年です。日本研究者の太田成男先生が世界で初めて「水素は、身体に役立つ活性酸素は除去せず、強い酸化力で細胞を破壊する活性酸素を選択的に除去する。」と発表しました。これを機に、臨床での水素研究が急速に広がり始めました。
2016年には「院外心停止後患者に対する水素ガス吸入療法」が先進医療として厚生労働省から認可されました。院外発生の心停止患者に、従来の体温管理療法に加え2%水素添加酸素の吸入を行うと、90日後の生存率が上がり、後遺症なく回復する確率も上がるという研究データが発表されています。
続々と治療効果の有効性について論文が発表されており、臨床の場でも活用されることが増えてきました。
水素の抗癌作用が初めて報告されたのは、1975年。皮膚癌のマウスを水素ガスで治療すると腫瘍が縮小したというものでした。現在は、活性酸素を抑制し炎症を抑える作用に加え、直接的な抗がん作用も明らかになりつつあります。また、抗癌剤や放射線治療の副作用を軽減させるという効果もあります。
また、エネルギー代謝を促進することでのメタボリックシンドロームを改善させる効果、パーキンソン病などの神経疾患への効果、ミトコンドリアの機能回復により精神疾患を改善させる効果も報告されています。
まとめ
医学的観点からご紹介してきましたが、水素吸入療法は病気だけではなく健康や美容を維持するためにも非常に有益です。副作用がなく、自宅でも取り入れられるため、子どもから高齢者の方までどなたでも利用できる優れものです。アスリートにとっては、自身のコンディショニングを整えるために活用することができます。
長時間水素に触れていればいるほどより効果を得られるため、医療機関で治療として水素を使用することと並行して、生活の中に水素を取り入れるとその恩恵を最大限に受けることができます。繰り返しになりますが、たくさん取り入れても副作用がなく簡易的で誰もが容易に使用できるというメリットの多い治療法です。体の内側から健康になりたい、病気を予防し健康を維持したい人にはぜひ試していただきたいと思います。