「肝臓」と聞くと、最初にイメージするのがアルコールではないでしょうか。確かに、肝臓はアルコールの分解や解毒などの役割を担っています。しかし、肝臓の機能はそれだけに留まりません。そして、肝臓の機能を維持・向上するためにはアルコールを節制することだけでは十分ではありません。
今回は、肝臓という臓器について深掘りしていくとともに、肝臓の機能を維持・改善するために日常生活の中でできることをご紹介していきます。
肝臓の基本
まずは、肝臓の働きや役割について知るところから始めていきましょう。
肝臓とは
肝臓は、腹部の右上に位置し、肋骨の内側におさまっている1〜1.5kgの最も大きい臓器です。肝細胞の集まりである肝小葉という組織が多数集まり、主に右葉と左葉で構成されています。また、門脈、肝動脈、肝静脈の3本の血管が出入りし、胆管という肝臓で作られた胆汁が通る管も通っています。胆管は、胆のうという胆汁をためる袋につながっています。
肝臓の特徴としては、少し切り取られても再生することができる唯一の臓器だということです。
肝臓の働き
大きく強い臓器である肝臓が、体の中でどのような働きを担っているのでしょう。以下は肝臓の主な働きです。
代謝
私達は、食物から栄養を摂り、エネルギーとして使用しています。これらの栄養素を使用するためには、使用できる状態に変化させ、使用できる状態で貯蔵しておくことが必要です。この栄養素を使用できる状態に分解・合成する働きのことを「代謝」と呼び、この役割を担っているのが、肝臓です。肝臓は貯蔵する臓器であるため、必要以上のエネルギーの摂取が続くと、肝臓に脂肪が多く蓄積されてしまいます。
解毒・排泄
肝臓は、私達が摂取したアルコールや薬剤などの物質や、代謝の際に生じた体に有害な物質を毒性の低い物質に変え、尿や胆汁中に排泄する働きを担っています。例えば、アルコールは体内に入るとアセトアルデヒド という有害物質になり、二日酔いによる症状はこの物質により起こるとされています。
このアセトアルデヒドは肝臓で解毒され、最終的には二酸化炭素と水になり、排出されるという仕組みになっています。また、私達が口にする薬も肝臓で分解、解毒された後に、血液中に移行し全身を回る仕組みになっています。
胆汁の生成・分泌
胆汁は、脂肪の消化やコレステロールの排出に必要な液体です。胆汁には、胆汁酸、ビリルビン、コレステロールが含まれており、肝臓の中で1日に1リットル程度分泌されています。肝臓で作られた胆汁は胆のうに入り、濃縮された状態で一時的に蓄えられます。その後、食べ物が十二指腸に到達すると胆汁は十二指腸に流れます。
肝機能低下の症状と原因
肝臓が私達の体で重要な役割を担っているということが分かりましたね。ここからは、肝臓の機能が低下してしまう原因についてみていきましょう。
肝臓は沈黙の臓器
肝臓は「沈黙の臓器」として知られています。この沈黙の臓器とは、どのようなことを意味するのかというと、状態がかなり進行してからでないと無症状のことが多いということです。そのため、自覚症状が出現したときには、かなり進行しているということが少なくありません。肝臓の機能低下では、以下のような症状が現れる可能性があります。
【肝臓の機能低下で起こる症状】
・全身の倦怠感
・食欲低下
・嘔気
・黄疸
・皮膚のかゆみ
・体の浮腫
・腹水
・眼症状(疲れ、ぼやける、かすむ、視力低下、ドライアイ) など
ウイルス感染
肝機能の低下の原因のうちのひとつには、ウイルス感染によるウイルス性肝炎があります。ウイルス性肝炎には、現在同定されているものでA・B・C・D・E型があります。A・E型は主に食べ物を介して感染し、B・C・D型は主に血液を介して感染します。ウイルス性肝炎は、急性ウイルス性肝炎から始まり、ほとんどの症例では自然に消失すると考えられていますが、慢性肝炎に進行する場合もあります。また、中には急性肝炎から急性肝不全に進行することもあります。
急性ウイルス性肝炎は、潜伏期、前駆期(黄疸前期)、黄疸期、回復期という4つの経過をたどり、発症から4〜8週間程度で自然に消失します。
アルコール
アルコールの大部分は小腸から吸収され、蓄積することはないと考えられています。そして、吸収されたアルコールの少量は、胃粘膜を通過する間に分解されますが、大部分は肝臓で代謝され、分解されます。体内に入ったアルコールは、肝臓でアセトアルデヒドという有害物質に変化し、酵素の働きにより酢酸となります。この過程により産生されたNADH、脂肪の分解を阻害します。
アルコールの過剰摂取は、腸管の浸透性を変化させ、腸内細菌が放出する内毒素の吸収の促進や、肝臓への脂肪の蓄積、酸化傷害の増強が起こります。さらに、炎症や細胞死、線維化が進み機能低下に繋がります。
メタボリックシンドローム
肝臓に脂肪が蓄積し脂肪肝の状態になると、炎症が起こり線維化が引き起こされて、肝臓の機能低下が引き起こされてしまいます。
肝臓の機能改善のためのセルフケア
ここからは、肝臓の機能の改善のためにはどのような生活習慣が望ましいか解説していきます。これらの生活習慣は、日々の小さな積み重ねが大切です。ぜひ参考にしてみて下さい。
食習慣を見直す
肝機能の改善のためには、アルコール摂取を控えることとメタボリックシンドロームの改善・予防を特に意識しましょう。肝臓は特にエネルギーの貯蔵と脂肪の分解に関係しています。そのため、エネルギー摂取が糖質と脂質に偏らないように注意しましょう。
【食事のポイント】
・アルコール類を摂り過ぎない
・惣菜やコンビニのお弁当、ジャンクフード、加工食品などは控える
・主食は、血糖値が急激に上がる高GI食品より低GI食品を選ぶ
・野菜を取り入れ、カラフルな食事を意識する
・よく噛んで満腹中枢を刺激する
適度な運動を取り入れる
メタボリックシンドロームの予防や改善には、適度な運動が欠かせません。運動の種類としては、体内の糖質や脂質をエネルギー源として消費する有酸素運動が最適です。1日30分、週に5日程度が目標です。買い物をするときに歩いてスーパーに行ったり、最寄駅より1駅手前で降りるなど、日常生活の中で無理なく取り入れることができることから始めてみるのもいいでしょうし、思い切ってジムに入会してしまうのもてもいいかもしれませんね。
【有酸素運動】
・ウォーキング
・ジョギング
・サイクリング
・水泳
・エアロビクス など
薬と上手に付き合う
健康のために使う薬ですが、実は薬の影響で肝機能障害という副作用が起こることがあります。解熱鎮痛剤、抗がん剤、抗真菌薬、漢方薬など、処方して使用するものから薬局などで手軽に購入できるものまで様々です。また、単独では肝障害を引き起こさなくても複数のものを一緒に使用することにより肝障害が起こることも。そのため、薬を使用する際には用法要領をしっかりと守ること、副作用を感じたときには医師に相談するようにしましょう。
【肝機能障害の症状】
・倦怠感
・発熱
・黄疸
・発疹
・吐き気・嘔吐
・かゆみ など
サプリを取り入れる
生活習慣を改善しながら、サプリメントを取り入れる方法もあります。しかし、薬と同様にサプリメントも肝臓で分解されるものも多くあります。サプリメントを取り入れる際には、適切な量を摂取することや、安心して摂ることができるものを選ぶようにしましょう。また、処方薬がある方はかかりつけ医に相談して摂るようにしましょう。
肝臓の健康のために使用する際には、クルクミンやオルニチン、肝臓エキス、スルフォラファングルコシノレートなどがあります。
まとめ
私達が持つ臓器の中で最も大きい肝臓。大きいだけあって、とても重要な働きをしてくれているということが分かりましたね。「肝腎要・肝心要」という言葉があるように、肝臓の健康はとても重要です。肝臓の機能を維持できるよう、生活習慣を整えていきたいですね。まずは意識することから取り入れていただけると嬉しいです。