皆さんは、メタボリックシンドロームという言葉を聞いたことはありますか?略して「メタボ」とよく言われ、脂肪が多く蓄積している症状と認識している方も多いと思います。
この記事では、メタボから起こり得る病気には一体どのようなものがあるのか、また、メタボの予防法についても併せてご紹介していきたいと思います。
メタボリックシンドロームとは
メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることで、心臓病・脳卒中などに罹患しやすくなっている状態のことを指します。
そのため、単に見た目上お腹周りが大きいだけで、メタボリックシンドロームと決めつけるのは時期早尚です。ではいったい、どのような基準でメタボリックシンドロームであると判断できるのでしょう?
メタボリックシンドロームの意味は?
メタボリックシンドロームの診断基準のお話をする前に、まずは「メタボリックシンドローム」の言葉の意味から理解を深めていきましょう。メタボリックシンドロームは「メタボリック=代謝」「シンドローム=症候群」という2つの言葉が合わさってできた言葉です。
つまり、病院にいって「メタボですね」と言われたら、体内の代謝に不調が出始めていると診断されているということです。見た目での体重やお腹周りの話というわけではありません。
そのため、単に太ったという浅い意味ではなく、生活習慣を見直さなければいけないタイミングと受け止めることが大切です。では、メタボリックシンドロームか否かの診断基準のポイントにはどのようなものがあるのでしょう。
メタボリックシンドロームの診断基準
メタボリックシンドロームと診断される基準には、以下の2ポイントが挙げられます。
1.腹囲(おへその高さの腹囲)の大きさ
2.血圧・血糖・脂質の数値
それでは、各項目について詳しくみていきましょう。
1. 腹囲(おへその高さの腹囲)の大きさ
この数値は、男女で基準数値が異なります。腹囲を測ることで内臓脂肪の量が予測できるため腹囲で判断をしています。腹囲の基準は、男性は85㎝以上で、女性は90㎝以上です。
2. 血圧・血糖・脂質の数値
血圧・血糖・脂質の数値の基準値は以下の表の通りです。
血圧 | 収縮期血圧が、130㎜Hg以上(かつ/もしくは)拡張期血圧が、85㎜Hg以上 |
血糖 | 空腹時高血糖が、110mg/dL以上 |
脂質 | 高トリグリセリド血症が、150mg/dL以上(かつ/もしくは)低HDLコレステロール血症が、40mg/dL未満 |
腹囲が基準を超えておりなおかつ、上記の基準のうち2項目以上該当するとメタボリックシンドロームと診断されます。1項目のみ該当する場合は、メタボリックシンドローム予備軍と診断されます。
単純に体重が多い、太っているだけではメタボと断定はできません。逆に手足は細いのにお腹だけポッコリ出ており、血圧や脂質異常がある場合は、メタボと診断されるため注意が必要です。
内臓脂肪がたまる要因
では、どうして内臓脂肪は私たちの体内に蓄積するのでしょう?内臓脂肪がたまる主な要因は、「食べ過ぎ・飲み過ぎ・早食い(栄養過多)・運動不足・睡眠不足・自律神経の乱れ・加齢による基礎代謝量の低下」などが挙げられます。
つまり、口からの食べ物の摂取と代謝のアンバランスにより内臓脂肪の蓄積は起こります。内臓脂肪は内臓の周りや内臓を支える膜蓄積されます。摂取したけれど、基礎代謝・運動で消費しきれずに残ったエネルギーを溜め込んだものです。
そもそも脂肪は、摂取カロリーが消費カロリーを上回ったときに「飢え」などの非常事態に備えて蓄えられている非常食のような役割を果たしています。
そのため、いつでも食事を摂ることができ、常にカロリーオーバーの食事の可能性がある環境で生活する私たちは、非常に内臓脂肪がつきやすい状況にいるのです。
脂肪細胞から分泌されるホルモン
脂肪細胞からは、体を調整するためのホルモンが2種類分泌されています。ひとつめは体に良い働きをする「善玉ホルモン」 、ふたつめは体に悪い働きをする「悪玉ホルモン」です。
そして、内臓脂肪が適量であれば善玉ホルモンが活発に働き、内臓脂肪が増え過ぎると悪玉ホルモンの分泌が活発になり、善玉ホルモンの働きを鈍化させてしまいます。善玉ホルモンと悪玉ホルモンの特徴は、下記の表でご確認ください。
ホルモンの種類 | 特徴 |
善玉ホルモン | ①動脈硬化の抑制 ②血糖値を調整するインスリンの効果を高める ③食欲の調整 ④エネルギーの代謝・血管修復作用・脂肪燃焼作用・血管拡張作用・糖尿病予防などの良い効果を体内にもたらす |
悪玉ホルモン | ①血糖値を上げやすくする/インスリンが効きにくくなる ②血圧を上昇させる ③血栓をできやすくする (結果として、成人病をはじめ様々な病気の引き金となる) |
メタボリックシンドロームから起き得る病気
ここからは、メタボリックシンドロームから起こり得る病気について詳しく解説していきたいと思います。どのような病気の要因になるかを知って、メタボリックシンドロームの予防に役立ててください。
脳血管疾患・心血管疾患
脳血管疾患とは、脳の血管のトラブルにより、脳細胞が破壊される病気の総称で「脳卒中」とも言われます。出血性脳血管疾患と、虚血性脳血管疾患に分かれています。
心血管疾患とは、心臓につながる血管に異常が生じ、心臓へ血液が十分に行き渡らなくなる病気のことです。メタボリックシンドロームになると、これらの脳や心臓の血管疾患を発症しやすい状態になります。
現代社会において急速に増加しつつある栄養のアンバランスの結果、体内に異常をきたす現代病のひとつです。メタボリックシンドロームを予防することで、脳血管疾患・心血管疾患の一次予防および二次予防につながります。
高インスリン血症状態
高インスリン血症とは、多くの場合、糖質や脂肪酸の過剰摂取により、インスリンの効きが悪くなり(インスリン抵抗性)、血糖値を下げようとして膵臓からインスリンが過剰分泌された状態のことです。
つまり、インスリン抵抗性が起こることで、インスリンが多量に分泌される「高インスリン血症」を招く引き金となります。これは、低下したインスリンの作用を「量」で補おうとする膵臓の働きによるものです。
インスリンは、ブドウ糖をエネルギーに変え血糖値を下げる唯一のホルモンですが、内臓脂肪が蓄積すると「インスリン抵抗性」が起き、血糖値が一気に上昇し糖尿病が発症することにつながります。
また、インスリンの量が多くなり過ぎると、交感神経は緊張し血管は収縮傾向。腎臓で塩分(ナトリウム)が排泄されにくくなり血液量が増えます。血管の壁を構成している細胞が増殖し血管内径が狭くなるなどの現象が起きることで、血圧が上昇します。
さらに高インスリン血症になると、よりインスリン抵抗性を強めて糖尿病を進行させるという悪循環が生まれます。
高血圧・糖尿病などの生活習慣病
内臓脂肪から分泌される、悪玉ホルモンにより、血圧の上昇や、インスリン抵抗性による血糖の上昇の結果、高血圧や糖尿病、高尿酸血症、脂質異常症等の生活習慣病につながります。
つまり、メタボリックシンドロームとは、生活習慣の乱れから内臓脂肪が蓄積し、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの動脈硬化の危険因子が重なってきている状態であり、全身の血管の異常や、代謝障害を次々に引き起こしやすい危険な状態と言えます。
メタボリックシンドローム予備軍は、今後悪化しないように注意すべきタイミングだと言えます。
メタボリックシンドロームの予防法
それでは、このように私たちにとって悪いことばかりのメタボリックシンドロームですが、いったいどのようにして予防すれば良いのでしょう。メタボリックシンドロームから脱却するための方法について解説していきたいと思います。
食生活を見直す
メタボリックシンドロームを防ぐためには、食生活をまず見直すことから始めましょう。肉中心の食生活、遅い時間の夕食や過食、質の悪い油などが蓄積すると、メタボリックシンドロームを引き起こす引き金になります。
そのため、普段の食生活を振り返り、改めるべきところを探し改善することで、メタボリックシンドロームになり得る悪い習慣から脱却できます。
内臓脂肪を減らす食べ物を摂る
1日の食事で、内臓脂肪を減らす食べ物を摂取することも予防につながります。例えば、食物繊維を多く含む食べ物、脂肪燃焼を補助する食べ物、DHAやEPAを多く含む食べ物を口にすることで、内臓脂肪を大幅に減らすことができます。
どのような食べ物を口にすると内臓脂肪を減らせるのか、表にまとめたのでご参考になさってください。
食物繊維を多く含む食べ物 | 野菜・穀類・芋類・豆類・果物・海藻類・オート麦 など |
脂肪燃焼を補助する食べ物 | 赤身の肉・鶏むね肉・ラム肉・雑穀・玄米・水 |
DHA・EPAを多く含む食べ物 | いわし・サバ・サンマなどの青魚 |
上記の食材を日々摂取することで、毎日の食生活がバランスの良いものになり、ご飯などの炭水化物や魚・肉・卵・豆腐などのタンパク質および野菜・海藻・きのこなどの野菜類など、偏ることなくバリエーション豊かな食卓へと繋がります。
また、日本料理の基本である「一汁三菜」を心がけて料理を作るのも大変有効です。具だくさんのお味噌汁などの汁ものを一品加えることで、よりバランスの整った食事を実現できるため、是非日々の食卓に取り入れてみてください。
適度な運動
メタボリックシンドロームを予防するのに効果的な方法として知られているのが、有酸素運動です。有酸素運動とは、体内に酸素を取り入れて体脂肪を燃焼させるために、一定の時間筋肉に負荷をかける運動のことです。
有酸素運動は、ウォーキング・ごくゆっくりしたペースのジョギングなどを30分以上続けることで効果が得られます。食事への気配りと併せて自分に合った適度な運動を続けることで、嬉しい相乗効果が生まれ、その結果メタボリックシンドロームからの脱却を実現させられます。
まとめ
メタボリックシンドロームと診断されてからでは、様々な病気が発病する可能性が高くなるため「予防」が大切です。内臓脂肪は生活習慣の変化により、つきやすく落ちやすい性質をもっています。生活習慣の改善により皮下脂肪よりも先に変化が出てきます。
この記事を参考に、メタボリックシンドロームになりにくい食生活や生活習慣を身に付け、健康的な生活を送ってくださいね。