ミネラルは、炭水化物・脂質・たんぱく質にならぶ栄養素のうちのひとつ。三大栄養素と比較すると、あまり馴染みがない栄養素かもしれません。しかし、必要な栄養素であり、体にとって大切な働きをしてくれています。
今回は、「ミネラル」について詳しく解説していきます。ミネラルが体にとってどれだけ大切か、一緒に学んでいきましょう。
ミネラルとは
ミネラルは、私達人間にとって必要な栄養素。「三大栄養素」として知られているのは、炭水化物・脂質・たんぱく質ですが、「五大栄養素」という枠組みになると、ここにビタミンとミネラルが含まれます。
ミネラルの種類
生体を構成する「酸素」「炭素」「水素」「窒素」以外のものの総称で、無機質とも呼ばれています。なんと、ミネラルは自然界に100種類以上の種類があると言われています。
その中で、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、13種類のミネラルの推奨量や目安量を示されています。また、1日の推奨量や目安量が約100mg以上のミネラルを「多量ミネラル」、100mg未満のものを「微量ミネラル」と分類しており、以下のようになっています。
多量ミネラル:
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなど
微量ミネラル:
鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンなど
ミネラルは、体内で合成することができません。そのため、食物から摂る必要があります。また、不足した場合には欠乏症や不調をきたす場合もありますが、摂り過ぎた場合にも過剰症や中毒を起こすものもあるため、適量を摂ることが大切です。
ミネラルの働き
ここからは特に意識したいミネラルについて詳しくみていきましょう。
特に意識したいミネラル
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」にある13種類のミネラルのうち、特に不足しやすいのは「カルシウム」「鉄」「亜鉛」です。その他のミネラルは、通常の食生活で不足することはあまりありません。
【カルシウム】
カルシウムは主に骨の形成に関係しています。そのため、カルシウムが不足すると骨が十分に成長せず、骨粗鬆症の原因にもなります。しかし、カルシウムだけを摂取するだけでは不十分です。カルシウムの吸収をよくするためには、ビタミンDの適度な摂取も必要です。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助けると言われています。また吸収したカルシウムをきちんと利用するためには、運動が重要です。適度な運動はカルシウムを利用して骨を丈夫にすると言われています。
【鉄】
鉄は、ヘモグロビンや各種酵素を構成しています。成人の体内に、約3〜5g存在しており、そのうちの70%は赤血球のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンに存在します。そして、残りの30%は、肝臓、骨髄、筋肉などに貯蔵鉄としてストックされています。
鉄が不足すると、赤血球の中のヘモグロビンが減って赤血球の数が減るため、酸素の供給が十分にできなくなってしまいます。また、鉄の必要量は男女で異なります。さらに女性の場合は、月経の有無や妊娠・授乳期にあるかどうかで変化します。
【亜鉛】
亜鉛は、全身の細胞内に存在している栄養素。進入してきた細菌やウイルスを防御する免疫システムや細胞の中にあるたんぱく質やDNAなどの遺伝物質を合成するのに役立ちます。また、創傷治癒、味覚や嗅覚にも重要です。さらに亜鉛は、妊娠中、乳児期及び小児期の体では特に成長発達に欠かせません。
ミネラルが不足するとどうなるの?
ミネラルが不足すると色々な症状が出てきます。もちろん、何が不足するかによって出てくる症状は異なります。どのような症状が出るのかみていきましょう。
ミネラル不足の症状
ミネラルの種類ごとに、不足すると現れる症状について解説いたします。
カルシウム
血液中のカルシウムは、8.5〜10.4mg/dLという比較的狭い範囲に保たれています。濃度が低下すると、主に骨からカルシウムが溶け出し、元の濃度に戻ります。そのため、血液中のカルシウムの濃度が低い状態が続くと、骨からのカルシウムの溶出が大きくなってしまいます。
その結果として、骨粗しょう症を引き起こしてしまいます。また、カルシウムが欠乏すると、骨粗しょう症以外にも、高血圧や動脈硬化などを招くこともあります。
鉄
鉄は赤血球中のヘモグロビンの材料であり、鉄が不足すると赤血球を十分に作れなくなります。これを「鉄欠乏性貧血」といいます。赤血球は全身に酸素を運ぶ役割をしていますが、貧血により酸素の供給ができなくなると、体の色々なところで酸素不足が起こってしまいます。
その結果として、集中力の低下、頭痛、食欲不振などの症状が起こります。また、少しの動作で疲れやすくなる他、動悸、息切れ、立ちくらみなどの症状が現れることも。さらに、筋肉中のミオグロビンが減ることで、筋力低下、疲労感といった症状も起こります。
亜鉛
亜鉛不足が深刻になると、亜鉛欠乏症という状態に陥ってしまいます。亜鉛欠乏症の特徴は、発育遅延、食欲不振、味覚異常、免疫機能障害などがあります。さらに重篤になると、脱毛、下痢、性的成熟の遅延、インポテンス、男性の性腺機能低下、目と皮膚の病変を引き起こすこともあります。
ミネラル 不足の原因
現代人のミネラル不足の原因は色々なことが関係しています。1番の原因となるのは、偏った食習慣です。ミネラルは、摂り方により吸収率が大きく変化します。多忙な方や料理が苦手な方にとって、とても便利な出来合いのもの、レトルト食品、インスタント食品などにはミネラルが殆ど含まれていません。
また、ミネラルは多量の発汗やストレスなどでも、体外に排出されたり消耗されてしまいます。さらに、女性では月経周期や妊娠・出産などでも消費されてしまいます。そのため、普段から色々なものをバランスよく摂ることが大切です。
厚生労働省では、食事バランスガイドという栄養素をバランス良く摂るための表が作成されています。主食、副菜、主菜、乳製品、果物の望ましいバランスが記載されています。自身の普段の食事と比較してみましょう。
ミネラル不足を改善するための食べ物
ミネラル不足を改善するためには、どのようなものを摂ると良いのでしょう。成分別に多く含まれている食品をご紹介していきます。
ミネラル不足を改善するための食べ物
ミネラルごとの、不足を改善するための食べ物をご紹介いたします。(可食部100g中)
カルシウム
干しエビ | 7,100mg |
煮干し | 2,200mg |
ナチュラルチーズ (カマンベール) |
460mg |
海藻類 (乾燥ワカメ) |
130mg |
鉄
あゆ | 63.2mg |
あさり | 3.8g |
海藻類 (ひじき) |
55mg |
きくらげ(乾燥) | 10.4mg |
亜鉛
牡蠣 | 14mg |
レバー | 6.9mg |
牛ひき肉 | 5.2mg |
煮干し | 7.2mg |
まとめ
栄養素の中でもあまり焦点を当てられないミネラルですが、私たちの体にとってはなくてはならない栄養素です。毎食自炊することや、栄養素ひとつひとつを気にしながら食事を摂ることは難しいかもしれません。
まずはそれぞれの生活に合わせて、外食の頻度やインスタント食品の頻度を見直してみることや、食事内容が偏らないことなどを意識するところから始めたいですね。