2023.08.03

食事・栄養

エゴマ油は認知症やアレルギーに効果的|使い方・選び方の注意点

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竹内 久美

産婦人科医/ヘルスコーチ

健康に効果的なオイルとして、たくさんの種類のオイルが紹介されています。その中でもエゴマ油は非常に栄養価が高く身体に効果的な作用を持つ栄養素を豊富に含んでいることをご存知ですか?

誰もが将来的に起こりうる可能性のある生活習慣病や認知症の発症予防、アレルギー体質の改善にも効果を発揮します。

この記事では、エゴマ油が身体にもたらす有益な効果についてメカニズムと共にご紹介します。

エゴマ油について

まずは、エゴマ油の基礎知識について詳しくご紹介していきます。

エゴマ油とは?

エゴマ油は、シソ科の植物である「エゴマ」という種子から抽出した油です。エゴマの見た目は青じそによく似ていますが、サイズが少し大きめで青じその持つ特有の香りはなく無臭です。

古くから日本でも使用されており、東北地方ではエゴマの持つ健康効果から食べると十年長生きできるといわれており、別名「十年」という名前で親しまれています。

エゴマ油の栄養

エゴマ油がなぜ注目されているのかというと、オメガ3脂肪酸に含まれているa-リノレイン酸を約60%含んでおり、通常のオイルと比べて含有率が非常に高いのが特徴です。オメガ3脂肪酸は「必須脂肪酸」と呼ばれ、体内では合成することができない必須栄養素のひとつです。そのため、食べ物から摂取しなければなりません。

またa-リノレン酸には、体内で別の栄養素に変換する作用もあり、身体のさまざまな部分で健康効果を発揮します。具体的な内容については後ほど詳しくご紹介していきます。

必須脂肪酸だけでなく強い抗酸化作用を持つ、ビタミンCβーカロテンに加え鉄分カルシウムミネラルなどの栄養素も豊富に含まれています。

1日の摂取量目安

身体に非常に良いオイルですが、摂り過ぎると下痢などの腹部症状を引き起こしてしまうことがあるため注意が必要です。1日の推奨されている主な摂取量の目安は1日2〜3g(小さじ1杯程度)が良いと言われています。高カロリーな油なので、適切な量を適切な頻度で取り入れることを意識しましょう。

エゴマ油の食べ方

エゴマ油は熱に弱く酸化しやすい性質があるため、食べるときはできるだけ加熱調理は避けましょう。基本の食べ方は、何かにかけるつける混ぜることです。

サラダや冷や奴などの副菜にドレッシングとして、完成されたスープの上から仕上げとして使用するようにしましょう。また、エゴマ油は調理後すぐに使用して時間が空いてしまうと酸化が進んでしまうため、できるだけ直前の使用が望ましいです。

熱に弱い性質がありますが、調理後に上からかける場合は低温であるため、成分の品質も損なわずに摂取することができるためおすすめです。

簡単に取り入れやすくなっていますが、エゴマ油には発泡スチロールを変性させる働きがあるため、カップ麺などに加えてお湯を注ぐと、発泡スチロール製の容器に穴が開く可能性があります。使用の際には発泡スチロール容器のままエゴマ油を使用しないようにしましょう。

 

エゴマ油の効果・効能

エゴマ油に含まれているa-リノレン酸という物質はあらゆる成分に変換され、さまざまな部位で身体に有益な効果をもたらします。実際に、研究でも有効成分として証明されているものから臨床で使用されているものまで多岐に渡り活躍している栄養素です。具体的な期待できる効果について、メカニズムと共にご紹介します。

生活習慣病予防

生活習慣病は加齢に沿って発症リスクが高まっていく病気であり、主に基礎代謝の低下、運動不足、食習慣の不安定さなどが要因のひとつとされています。その結果、コレステロールや中性脂肪が体内で蓄積され血流が不良となり、高血圧や動脈硬化を引き起こし脳血管疾患などの重篤な病気へ移行する場合もあります。

エゴマ油に含まれているa-リノレン酸は、体内でDHAEPAという2つの栄養素に変換されます。その中でもEPAには、体内の悪玉コレステロールや中性脂肪の低下、血流を促進させる作用を持っており、積極的に取り入れることで生活習慣病を予防することができると言われています。

実際に医療の現場でもエパデールという商品名で取扱いがされており、生活習慣病のリスクやその他の病気に対するリスクが高い方へ予防的治療として使用されています。

認知症予防

認知症にはさまざまな種類がありますが、そのなかでも約6割以上アルツハイマー病であると言われています。アルツハイマー病とは年齢を重ねることでアミロイドβというタンパク質が脳内で蓄積され、正常な脳の神経伝達物質が破壊、萎縮させることにより認知症状を引き起こす病気です。つまり、加齢に伴う脳の老化によって起こります。

エゴマ油に含まれているa-リノレン酸によって変換されたDHAは、脳の神経細胞を活性化させる働きがあると言われており、妊娠中も胎児の発育促進のために積極的に摂取することが推奨されている栄養素です。特にアルツハイマー型認知症のように、減少した脳神経細胞を活性化させるのに有効であるとされ、認知症予防に効果的であり現在ではさまざまな研究が進められています。

実際に、アルツハイマー型認知症で死亡した人と他の病気で死亡した人(平均80代を対象)の脳内DHAの保有率を調査したところアルツハイマー型認知症と診断された人は他の病気で亡くなった方と比較すると、DHAは1/2以下に減少していたという報告がされています。

このことからDHAがいかに脳神経細胞に関与しており、重要な働きを担っているかということが明らかとなっています。現在のところ、エゴマ油が直接的に認知症予防に効果的であるという科学的検証はまだありませんが、エゴマ油に含まれているa-リノレン酸への効果は大きいと言えます。

アレルギーの改善

アレルギーの主な原因は環境遺伝栄養バランスが関与していると言われています。特にアトピー体質の方や花粉症などの症状を持っている方は、栄養状態を改善することで症状が緩和または改善されたという研究結果が多数報告されています。なぜ栄養バランスがアレルギ—と関係するのかというと、不飽和脂肪酸が大きく関与しています。

不飽和脂肪酸は、体内で作れるものと作れないもの(必須脂肪酸)に大きく分類されます。必須脂肪酸はさらに2種に分類され、オメガ6系(リノール酸)オメガ3系(エゴマ油に含まれているa-リノレン酸)に分かれます。

どちらの栄養素も健康を維持するために重要な成分ですが、オメガ6系とオメガ3系はどちらかを摂取し過ぎると片方の効果は阻害されやすくなるという性質があります。そのため、程よいバランスを保つことが大切です。

オメガ6系であるリノール酸とは、血流を良くする働きがあり動脈硬化や高血圧に効果的である反面、過剰に増えると免疫細胞の活性を低下させアレルギ—を悪化させると言われています。もう一方のオメガ3系である、a-リノレン酸にはプロスタグランジンE3というアレルギ—を抑制する物質を作る作用もあります。

要するに過剰摂取しがちなリノール酸を含む食品の摂取をできるだけ控えること、摂取されにくいエゴマ油などに含まれているa-リノレン酸を積極的に摂取することにより、アレルギ—の悪化を抑え症状の改善を図ることができるのです。

アレルギー体質でお悩みの方は、特に必要な栄養素を取り入れるだけではなく、食事の内容を見直しバランスの良い食生活を送るように心がけましょう。

話題の「オメガ3」って何?|アブラの種類や摂る際の注意点も解説

 

エゴマ油の注意点

エゴマ油は有効な成分をたくさん含み非常に魅力的な油ですが、使用するときや保管するときには十分な注意が必要です。
どのようなことに注意する必要があるのか、具体的な方法についてご紹介します。

加熱調理に使わない

エゴマ油に含まれているa-リノレン酸は、熱に弱く酸化しやすいという性質を持っています。そのため加熱をすることで、エゴマ油の持つ栄養素が壊れてしまう可能性があります。調理の際の油として使用を検討される方もいますが、加熱は効果的ではないため他の調理用油の代用として使用することは控えましょう。

コールドプレス製法を選ぶ

エゴマ油はさまざまな抽出方法で販売されており抽出方法の違いによって、色も白色透明のものから茶色までさまざまです。より健康的な効果を目的とする場合は、コールドプレス製法の油を選びましょう。

コールドプレス法(低温圧搾法)とは、エゴマの種子を約40〜60℃ほどの低温で加熱し搾油したものです。加熱式と比べると低い温度で抽出が可能なため有益な栄養素を壊すことなく搾油されています。購入を検討する際にはエゴマ油の抽出方法も確認するようにしましょう。

早めに使い切る

エゴマ油は熱だけではなく、光や空気に弱く酸化しやすい性質もあります。開封後はできるだけ高温、多湿は避けること、冷蔵庫での保管がおすすめです。開封してから約1〜2ヶ月の間に使い切ることが望ましいです。

酸化した油は過酸化脂質となり、摂取を続けることで健康に有益どころか悪影響をもたらすことになります。エゴマ油が酸化した場合は、臭いが魚のような生臭さが出るので、油の性質の変化にも注意しながら早めに使い切りましょう。

アマニ油の健康効果が高い理由|使い方や選び方のポイントとは?

 

まとめ

エゴマ油は健康効果が高く、さまざまな症状に対する期待も大きい油ですが、より効果を得るためには使用方法や保存管理などに注意が必要となります。使用に関する重要なポイントを抑えつつ適切な量を取り入れ、健康の増進を目指しましょう。

体質の改善を図りたい方は、オイルを取り入れるだけではなく食の基本から見直し、栄養バランスを良好に保つこともぜひ意識してみてください。

 

この記事の監修者

竹内 久美 産婦人科医/ヘルスコーチ

 
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