2023.07.11

睡眠

眠れない夜にすぐできる対処法|不眠を根本から改善する生活習慣

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田中 康規

麻酔科医/ヘルスコーチ

あなたは、快適な睡眠を確保できていますか?睡眠中は、脳や体の修復・免疫の調節・記憶の固定・感情の整理などが行われています。

質の高い睡眠を確保することは、心身の健康を維持するために欠かせない要素ですが、夜眠れない場合にどのような対処をしたら良いかわからない方も多いでしょう。

この記事では、夜の寝つきを改善するために、今日から始められる生活習慣を中心にご紹介していきたいと思います。

眠れない方へ

まずは、「夜眠れない」という症状が現れる仕組みについて解説していきます。自分の不眠のタイプを知ることで、不眠改善のヒントが見つかります。

眠れなくなる原因とは?

夜眠れない原因は、人によってさまざまです。不眠を引き起こしている生活習慣を見直すだけで、劇的な改善をきたす場合もあります。しかし、不眠のなかには専門的な治療が必要になる場合もあるため侮れません。

不眠を引き起こす要因として、以下の5つが挙げられます。

①心理的な要因
②身体的な要因
③精神医学的な要因
④薬理学的な要因
⑤生理学的な要因

それでは、各項目についてみていきましょう。

①心理的な要因

外的なストレスを指し、最も一般的な不眠の要因です。例えば、仕事のトラブルや大切な人との離別のような精神的ストレス、引越しや旅行に伴う急激な環境の変化などが挙げられます。

この場合、眠れなくなった頃の出来事を詳しく思い出すことで、その原因が明らかになることも多いです。

②身体的な要因

病気や症状を指します。例えば、頚椎症や腰痛による慢性的な痛み、アトピー性皮膚炎による痒み、睡眠時無呼吸症候群のような呼吸障害・前立腺肥大や膀胱炎に伴う頻尿・花粉症や鼻炎に伴う鼻閉などが挙げられます。

この場合、原因となっている病気や症状を治療することで、改善することも多いです。

③精神医学的な要因

精神疾患を指します。不眠は、精神疾患で一般的にみられる症状です。特にうつ病や不安障害でよくみられます。これらの疾患は、憂うつな気分が続いたり、これまで楽しめていたことが楽しめなくなったりすることで起こります。

この場合、専門医に相談し、適切な治療を早期に行うことで改善することもあります。

④薬理学的な要因

病気の治療のために服用している薬や、嗜好品を指します。例えば、薬ではパーキンソン病の薬、ステロイド、一部の降圧薬などが挙げられます。

嗜好品では、アルコール・カフェイン・ニコチンなどが挙げられます。特にカフェインは、普段飲んでいるドリンクに知らずに多く含まれている場合もあるため、購入する際には注意が必要です。

⑤生理学的な要因

生物学的なリズムの乱れや、ホルモンバランスの変化を指します。例えば、海外旅行の際に生じる時差ぼけや、交代制勤務による生活リズムの昼夜逆転など、その人の行動やライフスタイルが大きく関わっています。

また、中高年以降の女性では、閉経に伴う女性ホルモンの急激な変化で、不眠が起こりやすくなります。

あなたの不眠タイプは?

ご自身の不眠のタイプを知ることで、適切な対処方法が見つかります。快適な睡眠を確保し、健康な生活を送るうえで重要なポイントです。

不眠のタイプには以下のものがあります。

①入眠障害タイプ

布団に入ってから寝つくまで30分以上かかり、本人がそれを苦痛と感じている状態です。精神的な問題、不安や緊張が強いときに起こりやすいとされています。ただし、寝つきにかかる時間は個人差や年齢によって大きく異なります。

ただ単に寝つきに時間がかかるだけで入眠障害と判断するのではなく、普段の寝つきに要する時間と比べて長くなっているかどうか、それを苦痛と感じているかどうかが重要です。

②中途覚醒タイプ

部屋を暗くしたり、睡眠環境を整えているにも関わらず、睡眠途中に何度も目が覚め、その後なかなか寝つけない状態です。中途覚醒は、不眠の訴えの中で最も多い症状で、特に高齢者によくみられる症状です。

③早朝覚醒タイプ

予定している起床時刻よりも、2時間以上早く目覚めてしまう状態です。早朝覚醒は高齢者によくみられる症状で、加齢とともに生体リズムが前倒し(早寝早起き)になることで起こります。ただし、うつ病でもよくみられる症状であるため、注意が必要です。

④熟眠障害タイプ

睡眠時間は十分確保しているのに、眠りが浅くて、ぐっすり眠った気がしない状態です。睡眠中にいびきや無呼吸を繰り返す睡眠時無呼吸症候群や、脚のぴくつきを繰り返す周期性四肢運動障害など、睡眠障害が関係していることもあるため注意が必要です。

睡眠中に伴うこれらの症状は、なかなか本人では気付けません。周りの人が症状に気付き、本人に指摘し、医療機関への受診を勧めることが必要です。

不眠が体に与える悪影響

不眠によって良質な睡眠を得られないと、日中に倦怠感・意欲の低下・集中力の低下・食欲の低下といった心身の不調が引き起こされます。

一時的な不眠は誰しも経験することがありますが、不眠が慢性化しないためにも、この段階からしっかり対処しておくことが重要です。いったん慢性化してしまうと、ときに治療は困難を極めます。

不眠をそのまま放置しておくと、不眠自体が悪化するばかりでなく、ストレスを感じやすくなったり、様々な病気を引き起こすこともあります。自分で対処してもなかなか効果がない場合は、医師に相談することも検討しましょう。

 

眠れないときの対処法

ここでは、薬に頼らず行う眠れない場合の対処法について、ご紹介していきます。これらの方法を知っておけば、少し不眠気味になっても焦ることなく対処できるでしょう。

眠りにつく準備をする

まず大切なことは、眠りにつく前の準備を整えることです。夕食をお腹いっぱい食べて、その状態で眠ってしまうと、胃は食べ物を消化するために睡眠中も働き続けなければいけません。

この状態になると、脳は覚醒し、浅い睡眠になってしまいます。さらに、睡眠中は消化酵素の分泌量が減っているので、食べ物をうまく消化できず、翌朝の胃もたれに繋がることもあります。少なくとも、眠る2時間前には食事をしないよう心がけましょう。

また、入浴のタイミングも重要です。眠りにつきたい時刻の1~2時間前に、40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、安眠効果が期待できます。これは、入浴することで副交感神経の活動が高められ、体や心はお休みモードに入るためです。入浴後、適切なタイミングで眠くなり、自然と眠りにつくことができます。

併せて、リラックス効果の高いハーブティーを夕食後や就寝前に飲めば、心が安定して、さらなる安眠効果が得られます。また、眠る前に「目を閉じて深呼吸」することも、最も手軽に行える方法です。ゆっくり口で息を吐ききったら、鼻から吸うという手順を繰り返すことで、高ぶっていた神経を抑えることができます。

ぜひ今日から、これらの方法を生活に取り入れてみましょう。

寝室の環境を整える

寝室の環境を整えることも、不眠を解消するうえで非常に有効な方法です。最優先で整えるべきポイントとしては、寝室の「光・温度・音」についてです。併せて、湿度・空気や気流・香り・寝具などについても意識してみましょう。

光に関して、就寝時の寝室は真っ暗な環境が理想的なので、眠りにつく前にきちんと部屋の明かりを落としましょう。室内が暗ければ暗いほど、睡眠ホルモンであるメラトニンがしっかり分泌されます。

温度に関して、室温は冬季で16~19℃夏季で26℃前後が理想的です。併せて、湿度は通年50%前後に調節することで、寝つきがよくなります。

音に関して、就寝時の寝室は無音の環境が理想的です。リラックスできる音楽は寝つきをよくすることもありますが、眠ったあとに入る音は騒音として良質な睡眠を阻害します。

寝室の空気に関しても意識しましょう。睡眠中に空気が汚れていると、無意識に呼吸が浅くなります。この状態で眠ると、全身に酸素が行き届きにくくなるため、疲れが十分取れないまま朝を迎えることになります。また、落ち着ける香りのアロマフレグランスを寝室に置けば、さらにスムーズな寝つきが期待できます。

そして、睡眠中に着る服や使う寝具は、こまめに洗濯して清潔なものを使いましょう。ジャージや部屋着で眠るのではなく、パジャマを着て眠ることをお勧めします。パジャマは、快適に眠るために作られた専用の服です。体を締め付けないように配慮して縫製されていたり、生地の質や肌触りが良いものが多いのが特徴です。吸湿性や保湿性の高い素材を使っているため、リラックスして眠るためには欠かせないグッズといえるでしょう。

体と心をほぐす

睡眠の「質」を上げるためには、体と心をほぐすことも大切です。日中にフル稼働していた脳は、夕方になるとかなり疲弊した状態になっています。就寝の1時間前には、情報量の多いテレビやパソコンの電源はオフにしましょう。

眠る前に安眠効果のあるヨガストレッチを行えば、自律神経の働きが整います。交感神経から副交感神経へと働きがスイッチされ、体と心はお休みモードに入ります。体と心がリラックスしていれば、スムーズに入眠でき、睡眠の質を落とさず、朝までぐっすり眠りにつけるでしょう。

特にホルモンバランスの崩れから自律神経が乱れやすい、中高年以降の女性にお勧めしたい方法です。

筋弛緩法

多忙を極める現代人は、眠るときも筋肉が緊張したままのことが多いです。筋肉が緊張していれば、なかなか気持ちよく寝つくことはできません。

筋弛緩法とは、体の様々な部位で、「力を入れて(緊張)」と「力を抜いて(弛緩)」を交互に繰り返すことで、段階的に全身の筋肉を緩ませていき、心身のリラクセーションを作り出す方法です。いくつも種類があるのですが、今回は上半身の筋弛緩法についてご紹介します。

以下の手順で行いましょう。

①椅子に腰を掛け、脚は肩幅に開き、膝は直角に曲げ、足裏を地面につけます。
②拳を握り、肘を曲げ、脇を締め、首をすくめ、肩を上げます。
 力を入れた状態を5秒間キープしましょう。
③糸が切れたように一気に力を抜きましょう。
 力を抜いた状態を20秒間キープしましょう。
④力を抜いたときの体の感覚をじっくり観察しましょう。
⑤このサイクルを3~5回ほど繰り返します。

筋弛緩法を眠る前の習慣にすることで、ご自身のいまの体が、緊張状態にあるかどうかがわかるようになります。

 

不眠を根本から改善する生活習慣

ここからは、眠れずに悩んでいる人がすべき生活習慣の改善方法について、解説していきたいと思います。いずれの方法も効果的なので、ぜひ日常生活に取り入れてくださいね。

太陽の光を浴びる

私たちの体内時計は、地球の自転リズムである24時間より長いリズムを刻んでいます。そのため、放っておくと生体リズムは徐々に後ろ倒しにずれていきます。

この生体リズムのずれをリセットしてくれるのが、目から入る太陽の光です。太陽の光がメラトニンの分泌を抑制することで、睡眠覚醒リズムが整います。

メラトニンとは、私たちの脳で作り出されるホルモンです。深部体温を下げて、深い眠りへと導くことから睡眠ホルモンと呼ばれています。メラトニンの分泌は、夜間に始まり、深夜から早朝にかけてピークに達します。その後、徐々に分泌は減少し、起床後に太陽の光を浴びることで分泌が止まります。

そして、太陽の光を浴びた14〜16時間後の夜に、再び脳で分泌が始まります。このように、太陽の光を浴びることで、起きている時間と寝ている時間のメリハリがつき、睡眠覚醒リズムが一定になります。まずは朝起きたら太陽の光を浴びて、体内時計を整える習慣を身につけましょう。

適度な運動をする

太陽の光を浴びるとともに、運動習慣も身につけたいところです。適度な運動習慣は、自律神経や睡眠覚醒のリズムを整えます。運動は行う内容と同じくらい、行うタイミングも重要です。夕方以降のハードな運動は、夜間に交感神経の活動を高め過ぎてしまい、睡眠にとっては逆効果となります。

高齢者では、夕方にウォーキングなどの適度な運動をお勧めします。この時間帯は、深部体温が最も高く、高い運動パフォーマンスを発揮できます。夕方に運動することで、運動中のケガを予防できたり、脳がほどよく覚醒することで食後のうたた寝や、高齢者特有の極端な早寝を予防することができます。

ストレスケア

不眠の改善には、精神的なストレスケアを行い、安眠を促す方法も効果的です。普段の就寝時刻の1~2時間前に、リラックスできる時間を意識的に作りましょう。ハーブティ・アロマ・音楽鑑賞など、お好みの方法を試してみてください。

「⚫︎時間寝ないといけない」「⚫︎時にはどうしても寝ないといけない」といった、睡眠に対する強いこだわりは、かえってストレスとなり、不眠を引き起こすことがあります。生体リズムを整えるうえで、起床時刻を一定にすることは非常に重要です。しかし、就寝に関しては、無理に眠ろうとするのではなく、その時の眠気の状態に応じて時刻を調整することも大切です。

 

まとめ

この記事では、眠れない原因を知り、眠れない場合に行うと効果的な対処方法についてご紹介してきました。睡眠の質は、私たちの心身の健康を保つうえで、大変重要な働きをしています。さらに寝つきの良さは、安眠をもたらすかどうかの重要な要素です。

今回ご紹介した不眠に対する効果的な対処方法を日常生活に取り入れて、快適な睡眠をとれるよう心掛けてくださいね。

この記事の監修者

田中 康規 麻酔科医/ヘルスコーチ

 
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