「GI」という言葉を聞いたことはありますか?ダイエットを意識したことがある方なら、一度は聞いたことがあるかも知れません。
今回は、健康やダイエットにも大きく関係する「低GI食品」についてご紹介していきます。
低GI食品について知ろう
健康維持やダイエットには、「低GI食品」を選ぶのが良いとされています。なぜ、低GI食品が良いと言われているのか解説していきます。
GI値とは?
GIとはGlycemic Index(グリセミック・インデックス)の略で、食後の血糖値の上昇を示す指数のこと。全ての食品には、GI値があります。オーストラリアのシドニー大学では、グルコースを基準とした場合、GI値が70以上の食品を「高GI食品」、56〜69の間を「中GI食品」、55以下の食品を「低GI食品」と定義しています。
なぜ、注目されているのか?
なぜこの値が注目されているかというと、その食品が血糖値にどれくらいの影響を及ぼすか、人体にどれだけの影響を及ぼすか、最もダイレクトに判断できる指標だからです。例えば、同じ量の糖質を含む食品があったとして、それによってどれくらい血糖値が上昇するかは、食品によって異なるのです。
なぜなら、その食品が血糖値にどのような影響を及ぼすかは、糖質含有量だけでなく、糖質の種類や、その食品中の他の成分など、多種の要因によって決まるからです。
食後の高血糖は、血管の傷害、代謝異常、酸化ストレスなどを引き起こし、メタボリックシンドローム、糖尿病、動脈硬化などのさまざまな疾患の原因になることが分かっています。特に、肥満や糖尿病の増加は世界的な問題となっており、2003年にはWHOから「過体重、肥満、2型糖尿病の発症リスクを、低GI食品が低減させる可能性がある」というレポートが出されました。このように食後の血糖値上昇を示す指標は、疾患予防の観点から非常に重要なのです。
低GI食品とは?
低GI食品は、摂取した後に血糖値が緩やかに上昇します。反対に、高GI食品は、摂取した後に血糖値が急激に上昇します。
血糖値が緩やかに上昇するのと急激に上昇するのではどのような違いがあるか、次の見出しで説明していきます。
健康維持やダイエットに効果的な理由
食後の血糖値が急激に上昇すると、主にインスリンの過剰な分泌、血管内皮細胞の傷害、酸化ストレスが引き起こされます。
まずインスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの1種のことです。血糖値が上昇すると分泌され、上昇した血糖値を下げる働きがあります。低GI値の食品を摂っても血糖値の上昇は緩やかであるため、インスリンの分泌量も一定範囲内に保たれます。
しかし、高GI値の食品を摂ると、血糖値が急激に上昇するため、それを抑え込むためインスリンが大量に、過剰に分泌されます。この状態が続くと膵臓の疲弊につながるだけでなく、インスリンそのものが効きにくくなってくるのです。それにより、インスリンが分泌されても、血糖値が下がりにくい体質になってしまいます。これにより糖尿病のリスクが上昇します。
このような状態に加えて、食後の急激な高血糖は、血管にダメージを与えたり、酸化ストレスを生み出してしまいます。そして、これらが組み合わさることで、他のさまざまな疾患になるリスクが大きくなります。具体的には、糖尿病以外に、血管ダメージが要因となる、高血圧、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などの疾患に加え、肥満や過体重のリスクにもなると言われています。
肥満に関しては、習慣的にGI値の低い食事を摂っている人は、メタボリックシンドロームに関係する値が有意に減少し、コレステロールの代謝を促すHDLコレステロール(別名、善玉コレステロール)が上昇するとされています。
これらの理由から、血糖値の急激な上昇を引き起こさない低GI値の食品は、現代において問題となっている、さまざまな疾患の予防に重要なのです。
低GI食品一覧
低GI食品には、どのようなものがあるのでしょう。優先して選びたい食品や、なるべく控えたい高GI食品をご紹介していきます。
GI値の低い食品
比較的GI値の低い食品を、カテゴリー別にご紹介していきます。
GI値の低い主食(GI値:50〜60)
主食となる穀類は、低GI食品といわれるGI値が55以下のものはあまりありません。選ぶときのコツとしては、精製されたものより精製されていないものを選ぶこと。白いものより色のついているものを選ぶようにしましょう。
- パスタ
- ライ麦パン、全粒粉パン
- 玄米
- そば
- オートミール など
GI値の低い野菜(GI値:〜30)
野菜は、比較的GI値の低いものが多くあります。中でも葉物野菜は、特にGI値が低いものがたくさん。また、糖質を多く含むものを摂る前に野菜を摂るだけで血糖値の上昇が緩やかになることも分かっています。野菜ファーストの習慣をつけると良いでしょう。
- セロリ
- きゅうり
- 白菜
- レタス
- 大豆もやし など
GI値の低いきのこ類(GI値:〜30)
- えのき
- しめじ
- 生椎茸
- エリンギ
- マッシュルーム など
GI値の低い果物(GI値:〜40)
- 柿
- りんご
- キウイフルーツ
- 柑橘類
- いちご など
その他にも、肉類や魚介類は低GI食品です。しかし、低GI食品であれば必ずしも健康や肥満・糖尿病の予防になるというわけではありません。「低GI=低カロリー」というわけではないので、動物性のタンパク質の摂り過ぎや脂質の摂り過ぎには注意したいところ。
高GI値の高い食品
では、高GI食品にはどのようなものがあるか見ていきましょう。GI値が高く、なるべく控えたい食品をご紹介していきます。
GI値の高い主食(GI値:70〜)
精製された色の白い穀類は、GI値が高い傾向があります。選ぶときには、完全に精製されたものでないものを選ぶのが良さそうですね。
- フランスパン
- 食パン
- 餅
- 精白米
- うどん(乾) など
GI値の高い野菜(GI値:50〜90)
野菜の中でも、根菜類や甘味の強い野菜はGI値が高めです。葉物野菜などと組み合わせて、偏らないようにするのがベター。
- じゃがいも
- 人参
- 山芋
- 南瓜
- とうもろこし など
GI値の高い果物(GI値:40〜65)
果物は全体的にGI値が低い傾向がありますが、暖かい地域で採れる甘味の強い果物は、GI値が比較的高い印象です。
- パイナップル
- スイカ
- バナナ
- マンゴー
- ぶどう など
GI値の高い菓子類(GI値:82〜)
ついつい手が伸びてしまうお菓子。砂糖がたくさん使われている甘いお菓子はGI値が高いものばかりなので、摂り過ぎに注意しましょう。
- キャンディー
- どら焼き
- 大福
- ドーナツ
- ケーキ(生クリーム) など
GI値の高い砂糖類(GI値:80〜)
砂糖類は、全体的にGI値が高い傾向があります。中でも精製されている白い砂糖はGI値が高め。穀類を選ぶとき同様に、砂糖を選ぶときも精製されていないものを選びたいところです。精製されていないものはミネラルも多く含まれているというメリットも。
- グラニュー糖、氷砂糖
- 粉砂糖、上白砂糖
- 黒砂糖
- 水あめ
- はちみつ など
GI値の高い食品は、食後の血糖値を急激に上げるため摂り過ぎは控えたいところ。しかし、調理方法や摂る順番に気を付けることで急激な血糖値の上昇を抑えることに繋がります。また、食事をするときにしっかりと咀嚼することで、食後の血糖値の上昇が緩やかになるとわかっています。
まとめ
低GI値食品を習慣的に摂ることで、健康の保持増進や色々な疾患の予防になることが分かりましたね。しかし、一方でGI値にばかり気を取られてしまうと、偏った食事になってしまったり、カロリーの摂り過ぎになってしまう可能性もありそうです。
まずは、主食を見直してみたり、食べる順番を気にしてよく噛むというところから始めてみても良いでしょう。また、色々なものをバランス良く摂ることも忘れないようにしたいですね。
参照:
市川陽子.食事の Glycemic Index と生活習慣病一次予防.日本調理科学会誌. 2011,Vol 44,No 4,p 259~262
金本郁男.低 Glycemic Index 食の摂取順序の違いが 食後血糖プロファイルに及ぼす影響.糖尿病 53(2),2010,p 96~101
橋下和佳.咀 嚼 が 糖 代 謝 に 及 ぼ す 影 響 ―育成時の食餌性状の違いによる検討―.日本咀嚼学会雑誌.17巻1号,2007,p 52-59