「カフェインの摂り過ぎは身体に悪い」とは聞いたことがあるけれど、具体的にどのようなことが起こり、どのくらいのカフェイン摂取量が適切であるのか分からないと疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
カフェインを多く含むコーヒーなどの飲料系の需要が増加すると共に、カフェインの過剰摂取による健康被害も増えてきているようです。
過剰摂取が続いてしまうと、気付かないうちにカフェイン中毒などの重篤な症状を引き起こす場合があり摂取量には十分な注意が必要です。今回は、カフェインの過剰摂取によって引き起こされる各症状について、メカニズムに基づきご紹介していきます。
カフェインの基礎知識
カフェインとは一体どういう物質であり、どのような影響を引き起こすのでしょうか。カフェインの概要について解説していきます。
カフェインって何?
カフェインとは食品に含まれる天然成分の1つであり、苦みを伴う物質です。主にコーヒー豆、カカオ豆、茶葉などに多く含まれています。
この特徴を活かして食品の中でも苦味料として活用され、数多くの食品に添加されています。また、カフェインには鎮痛作用や疲労回復効果があるため、かぜ薬や鎮痛剤などの薬剤にも使用されています。
カフェインが人に与える影響
主に覚醒や利尿、交感神経への刺激、血管の拡張に作用するといわれておりカフェインはさまざまな部位で多様な効果を発揮します。
適量の摂取であれば、カフェインは身体に良い効果をもたらすことも最近の研究では分かってきました。その反面、過剰摂取をすることでの身体的影響も大きいと言われています。
日常的にカフェインの摂取量が多い状態が続いてしまうと、場合によってはカフェイン中毒などの重篤な症状を引き起こすこともあります。そのため、摂取量のバランスが非常に重要な物質なのです。
安全な1日の摂取量
一般的なカフェイン摂取量の基準と目安についてご紹介します。
①健康な成人の場合
400mg/日以下のカフェイン摂取量が望ましいとされています。
(コーヒー約マグカップ3〜4杯程度)
1回の摂取量が200mgを越えないように摂取することが重要です。
②妊娠中の女性
300mg/日
(コーヒー約マグカップ2杯程度)
実際のところ1日の安全なカフェイン摂取量は、あくまでも目安であり感受性は個人によって異なります。そのためカフェインの影響を受けやすい人の場合は推奨されている量よりも少なく摂取するなどの工夫が必要です。
カフェインを過剰に摂取すると起こる症状
カフェインを過剰に摂取し続けることにより起こりうる、5つの症状についてメカニズムをもとにご紹介します。
心拍数の増加
コーヒーを飲むと、時々心臓がドキドキする感じがある、違和感を一時的に感じたことがあるという経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。
これもカフェインによる「交感神経」の刺激により引き起こされる現象の一つです。交感神経とは自律神経の一部であり、「副交感神経」という2つの神経から成り立っています。
一般的に交感神経は活動を活発化させる役割を持っています。脈拍の増加に伴い心臓の血液の拍出量が増大され、一時的ではあるものの心拍数が増加することにより動悸を引き起こすのです。
特に、カフェインに弱い体質の方は動悸を感じやすいと言われています。心臓に対する大きな負担はないものの動悸を感じやすい場合はできるだけカフェインの摂取も最小限にすることをおすすめします。
血圧の上昇
血圧も心拍数と同様に、交感神経が刺激されることによって一時的に上昇をきたすことがあります。ある海外の研究で、コーヒーを日常的に飲用する人とそうでない人の高血圧発症の可能性に関しての調査結果が発表されました。
その結果は、どちらかといえば継続して飲用している人の方がわずかに血圧は高値を示していたが、一時的な現象に留まり将来的な高血圧のリスク因子にはならないということを発表しています。
いずれにしても、血圧が高いと指摘され内服コントロール中の方や高血圧による既存疾患へのリスクを持っている方は、一時的な上昇とはいえ症状悪化のリスクを伴いますので過剰なカフェイン摂取は控えるようにしましょう。
不眠症
睡眠には、アデノシンとヒスタミンという物質が関係しています。本来であればアデノシンという物質がアデノシン受容体にくっつくことで覚醒作用のあるヒスタミンの生成を抑え、眠気を感じるようになります。
カフェインはアデノシンと構造が非常に似ており、本来ならアデノシンが受容体に結びつくはずのところをカフェインが結びついてしまうという現象がおこります。
そうすることで眠気を阻害し、覚醒作用を引き起こすのです。最近よく眠れない、早く寝てもトイレに起きたり熟睡感を得ることができないと悩んでいる方は、寝る前の飲料物を見直してみてはいかがでしょうか。
特に毎日寝る前にコーヒーなどを飲用している場合はカフェインレスに切り替えるなど習慣を変えることで改善されることもあります。状況に応じて調整してみましょう。
腎臓機能障害
腎臓は体内の老廃物をろ過し、体外に尿という形で不要な水分や老廃物を排出する役割を担っています。通常であれば、ろ過をする際に必要以上の水分が体外へ排出されないよう再吸収を行い不要な分だけ排泄を行っています。
しかしカフェインを過剰に摂取することで、カフェインに含まれている利尿作用が促進され再吸収を阻害してしまうのです。その結果、排尿回数が多くなり体内の水分バランスが乱れ腎臓にも負担がかかってしまうという現象が起こります。
個人の耐性によっても異なりますが目安としてはコーヒーを1日に4杯以上摂取するとカフェインによる腎臓への影響が出やすいと言われています。
精神の不安定
精神的に落ち着いた状態を保つためには、副交感神経による刺激が必要です。副交感神経とは主にリラックスした状態を作る役割があります。身体を落ち着かせ活動から休息の状態へと移行することで、精神的にも穏やかな状態となります。
しかし、カフェインを多量に摂取している場合は、交感神経が常に優位の状態となっています。そのため心身共に緊張状態が続いてしまい心が不安定になりやすくなってしまうのです。
カフェインが含まれるものとそれぞれの含有量
カフェインは飲料物だけではなく食品にも多く含まれていることがあります。摂取する機会が多いとされる飲食物のカフェイン含有量についてご紹介します。
過剰摂取が続いていてカフェインの量を調整したいという場合には、常用している飲料物を減らすだけではなく摂取する食品とのトータル量を考え調整することが大切です。
コーヒー | 60mg/100ml |
紅茶 | 30mg/100ml |
緑茶 | 20mg/100ml |
ウーロン茶 | 20mg/100ml |
チョコレート | 15mg/1枚(50g) |
エナジードリンク | 100〜150mg(1本)メーカーによって含有量は異なります。 |
コーラ | 10〜19mg/100ml |
カフェイン摂取を控えた方が良い人
小さい子どもや妊婦中の女性が、カフェインを控えた方が良い理由について、詳しく解説いたします。
小さい子ども
子どもは大人と比べカフェインを摂取する機会は少ないように思えますが、実は子どもたちが好むチョコレートやココアにもカフェインが含まれていることをご存知でしょうか。
飲料系のイメージが強いため見落としがちですが、食品の成分をよく見ると意外にも多くの食品にカフェインが含まれていることが分かります。
カフェインは脳を刺激し眠気防止に有効な反面、発達がまだ未熟な子どもには脳の発育になんらかの影響を及ぼす可能性があると言われています。特に、脳の急速な発達段階である3歳頃まではカフェイン摂取に十分注意しましょう。
妊娠中の女性
妊娠中は妊娠前の身体と比べ代謝機能が低下しています。胎児も同様で、胎盤を通じ運ばれたカフェインは肝臓機能が未熟な為、排出できず胎児の体内で長く残存してしまうことになります。
その結果、過剰に摂取されたカフェインにより、胎児が危険な状態にさらされてしまう可能性があると言われています。WHOは、胎児への明らかな影響はまだ確定していないものの、カフェインの過剰摂取により低出生体重児や流産、死産の可能性があると示唆しています。
日本では妊婦に対するカフェイン摂取の規定はありませんが、国によってはこうした健康被害から母子を守る為に、カフェイン摂取量の規定を提唱しているところもあります。
妊娠中は、アルコールの制限や日常の制限も多くなるため、ストレスにさらされやすい状況にあります。カフェインを完全に除去する必要はないですが、母子共に健やかな生活を送るためにもカフェイン量には十分に注意しながら摂取しましょう。
まとめ
カフェインによる身体的影響についてご理解していただけたでしょうか。この内容はあくまでも過剰摂取している場合に起こりうる影響であり日常的に適量摂取すること自体は問題ありません。
重要なのはカフェインの摂取量のバランスです。過剰に摂取し過ぎず、上手に活用することが大切です。カフェインの過剰摂取に潜むさまざまな影響を根拠に基づいて理解し、適度にカフェインを取り入れつつ健康的な食生活を目指しましょう。