「グルテンフリー」が世の中に広まってきており、それが健康や美容に効果をもたらすものであることはご存知の方も多いと思います。
自分も生活の中で実践してみたくても、どんな食品を選んだら良いか、どのくらい置き換えれば効果が期待できるのかわからないという方が多いでしょう。
そこで、グルテンフリーの基本的なことからメリット・デメリット、そして日常に取り入れやすいグルテンフリー食品までご紹介いたします。
グルテンフリーについて知ろう
まず、グルテンフリーの意味を理解しましょう。
グルテンって何?
「グルテン」とは、ラテン語で「糊」を意味する語源から付けられました。
小麦に含まれるタンパク質のことで、「グルテニン」という細長いバネのような形をしたタンパク質と「グリアジン」という粒状のタンパク質からできています。
グルテニンに水を加えると、バネの両端が他のグルテニンと結びついて連結し、より長いバネを作ります。小麦やライ麦で作った生地をこねるうちに、これらが何重にも重なり合って網目のような構造ができあがります。この網目の間に粒状のグリアジンが入り込んでできるのがグルテンです。
パン、ピザ、パスタ、ラーメンなど、普段よく食べる小麦製品の多くに含まれており、モチっとした食感やおいしさの源でもあります。粘りが強く出る「強力粉」は焼いたときによく膨らむのでパンやピザなどに、キメ細かくさっくり仕上がる「薄力粉」はクッキーやケーキ生地、天ぷらの衣などに最適です。
一方で、腸で消化・吸収されにくく、腸壁を傷つけ、下痢や便秘、頭痛や倦怠感など様々な不調を引き起こすとも言われています。
グルテンフリーとは?
「グルテンフリー」とは、上記で解説したグルテンを摂取しない食生活、またはグルテンを含まない食品(麺類やパンの代替食品に限る)に対して使われる言葉です。
グルテンフリーの原点は、「セリアック病」とよばれる免疫疾患の食事療法としてグルテン除去食が生まれたことが始まりです。セリアック病とは「小麦アレルギー」のようなもので、体自体がグルテンを受け付けない病のことです。
グルテン除去食は、セリアック病の他にもグルテン過敏症、小麦アレルギーなど、グルテンの摂取が原因とされる疾患の増加とともに注目されるようになりました。
グルテンフリーが注目される理由
グルテンフリーの流行のきっかけとなったのが、世界的テニスプレイヤーのジョコビッチ選手の書籍です。試合を棄権するほど不調だったジョコビッチ選手が、グルテンフリーを実践することにより劇的に体調が改善し、テニスの4大大会「グランドスラム」をすべて制覇したことで、一気にグルテンフリーブームが訪れました。
ジョコビッチ選手は書籍の中で、小麦と乳にアレルギーがあることを書いており、それらを摂取することを避けたことで体調不良を改善しパフォーマンスが上がったと言っています。
そして、世の中に小麦アレルギーの人が増えている背景もありグルテンフリーの考え方が広まっていき、いつしか「グルテン=体に悪い」というイメージが定着していったのです。
最近では、「小麦アレルギーではないけど、小麦を摂取するとなんとなく倦怠感がある」という方も増えてきました。世界でグルテンフリーが浸透してきていることもあり、日本でも生活に取り入れる方が増えてきているのです。
グルテンフリーのメリット
グルテンフリーを実践することによって、得られるメリットを解説していきます。
腸内環境が整う
グルテンは、消化器官で分解されにくいという特徴を持ち、完全に分解されなかったグルテンは、消化器官の粘膜にへばりつくことがあります。
それにより粘膜は炎症を起こし、その結果、便秘や腹痛、下痢といった症状や、消化吸収機能の低下による栄養失調、片頭痛、リウマチなどの自己免疫疾患、PMS(月経前症候群)などにつながる可能性があると考えられています。
また、腸と皮膚はつながっているので、腸内環境が荒れると肌も荒れてしまいます。腸の負担となってしまうグルテンを控え、腸内環境を整えることで、さまざまな体や肌の不調の改善が期待できるのです。
ダイエット・減量できる
グルテンを多く含む小麦で作られた食品は、食欲増進作用・習慣性があるので食欲をコントロールできなくなりがちです。白砂糖も習慣性が高いとされており、小麦と白砂糖を使ったパンやケーキ、クッキーなどは食べれば食べるほど、再び食べたくなるものです。
さらに、グルテンは血糖値が急激に上昇する作用もあるため、空腹状態でパンやパスタなどをたくさん食べてしまうとインスリンが必要以上に分泌されてしまいます。 これにより、糖分を脂肪として蓄積してしまい肥満になりやすくなってしまうのです。
小麦でできた食品は、お米と比べると体内で消化されにくく、一旦腸の粘膜に入り込むと腸内にこびりつき、腸の粘膜を傷つけて必要のない物質までどんどん吸収してしまいます。 また、グルテンは身体を冷やす作用もあるため代謝が落ち、脂肪を溜め込みやすくなってしまうのです。
グルテンを控えることで、食欲の暴走や血糖値の上昇が抑えられ、脂肪を溜め込みにくい体になることができ、ダイエット・減量が期待できるでしょう。
イライラ・精神不安が改善される
イライラする、憂鬱などの精神不安定と、栄養との関連性は深いものです。グルテンにおいても、統合失調症、うつ病や双極性障害等の気分障害、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動性障害等の発達障害の発症機序との関連が示唆されています。
とは言え、すべての人の精神不安にグルテンが関与している訳ではないので、2週間ほど小麦食品を控えてみて、精神が安定してきたと感じたらグルテンへの感受性が高い傾向にあるかもしれないといった判断をすると良いでしょう。
実際に、小麦食品を控えて、キレがちだった子どもが落ち着いたり、うつ症状がおさまり学校に行けるようになった事例もあります。「予防医学」においても、グルテンフリーは推奨されており、実践した方から改善の声が寄せられています。
変化を体感された方へインタビューした動画はこちらからご覧いただけます。
YouTube:ヘルスコーチ養成チャンネル
花粉症・アレルギーが緩和される
花粉症やアレルギー症状をお持ちの方にとって、1番気をつけなければならない食品が、「消化しにくい食べ物」「体を炎症させる食べ物」です。消化にエネルギーを使い、腸の中に溜まりやすい食品は、腸の粘膜に炎症を引き起こし体の不調を招きます。
グルテンを含む小麦食品であるパンやケーキ、パスタはまさにこの特徴に当てはまる食べ物で、現代人は過剰に摂取していると言われています。花粉症や慢性鼻炎、アトピー性皮膚炎、過敏性腸症候群などをお持ちのアレルギー体質の方は、グルテンによるダメージを受けている可能性があることも視野に入れましょう。
また、イネ科の花粉症は、イネ科の食物(小麦)が症状を悪化させる傾向が強く、イネ科花粉の季節にパンやうどん、フライなどを食べてから外出や運動をすると、強いアレルギー症状を起こす方がいるようです。
そのため、イネ科の花粉症をお持ちの方は、小麦の摂取を控えると症状が緩和されることが期待できるでしょう。
グルテンフリーのデメリット
グルテンフリーを実践することで起こりうるデメリットについて解説いたします。
食の制限によるストレス
グルテンを控えようとすることで、今までパンやパスタ、ケーキやお菓子を好んで食べていた人にとってストレスになることがあるかもしれません。小麦食品は習慣性があるため、制限し始めた時期にはツラく感じてしまう方も多いようです。
ほとんどの調味料にも小麦が使われているので、完全にグルテンを除去するのは難しいです。そのため、あまりストイックになり過ぎず、代替品で工夫したり、たまには小麦食品を美味しくいただくようにしましょう。
その方が、前向きな気持ちでグルテンフリーを継続できるので長い目で見たときに健康効果を得られるでしょう。
食品を選ぶ際の判断が難しい
グルテンフリーとして間違えられがちな食品に、全粒粉があります。全粒粉パンや全粒粉パスタは、小麦粉に比べて食物繊維やミネラルを多く含みますが、グルテンも豊富に含む食品です。
また、ライ麦や大麦はグルテンを含まないことから、ライ麦パンや大麦パンもグルテンフリーだと思いがちですが、作る工程で小麦が使われていることもあるため注意が必要です。
オーツ麦にもグルテンが含まれていないので、オーツミルクやオートミールを食事に使ったりお菓子作りに使っている方もいます。ただし、市販のスイーツなどには小麦が使われている可能性もあります。
また、蕎麦もグルテンフリーだと思っている方が多いですが、そば粉を使う割合によって変わってきます。例えば、十割蕎麦は、そば粉100%なのでグルテンフリー食品ですが、二八蕎麦はそば粉とつなぎのうどん粉(小麦粉)の割合が8対2なのでグルテンフリーではありません。
このように、原料はグルテンフリーでも、製品化する工程で小麦が使われている食品があるので、ラベルの表記をチェックして確認すると良いでしょう。
小麦製品に替わるグルテンフリーの食品
グルテンフリーを実践したくても、小麦食品を控える自信がないという方におすすめの、グルテンフリー食品をご紹介いたします。
豆を使った麺
グルテンフリーを実践したいけど、麺類は好きだからやめられないという方は、豆を使った麺に替えてみましょう。大豆に含まれるタンパク質や食物繊維などの栄養を摂れるだけでなく、糖質やカロリーを抑えられるので健康に良くダイエットにも効果的です。
豆を使った麺というと、豆腐麺など素麺のような食感を持つものというイメージが強いかもしれませんが、パスタのように使える麺も登場しています。限りなく小麦のパスタに近い味わいのものも開発されているので、ストレスなくグルテンフリーを継続できるでしょう。
米粉パン・スイーツ
米粉は、和菓子を作る際にもちいられてきました。粒子が粗く、パンや洋菓子には不向きだと言われてきたのですが、近年では製粉・加工技術が発達し、より粒子の細かい米粉を製造することが可能になりました。
それにより、パンや洋菓子や麺類など用途が広がり、米粉を使った食品が流通するようになりました。パンにするとモチっとした食感で、揚げ物の衣に使うとカラッと仕上がります。
小麦より糖質もカロリーも低いため、健康に気をつけながらもパンや甘いものを楽しみたい方は米粉を使ったパンやスイーツを選ぶと良いでしょう。
オートミール
オーツ麦からできるオートミールは、水を含んでもグルテンは発生しません。水やミルクなどの水分を含むとモッチリとするので、料理に使うと腹持ちの良いおかずを作ることができます。
また、食物繊維やミネラルも豊富に含むので、オーツミルクを飲み物にプラスしたり、健康志向のおやつを作る際に使う方も多いです。オートミールクッキーは、小麦のクッキーのように習慣性の高いものではないので、グルテンフリーを実践するうえでのおやつにピッタリです。
まとめ
グルテンについて基本的なことを理解し、グルテンフリーを実践することで得られる効果も理解できたと思います。体調や気分の不調を感じている方でパンやパスタが好きな方は、もしかしたらグルテンフリーにすることで改善が期待できるかもしれません。
自分のライフスタイルや食の好みに合わせて、無理なく健康になっていきましょう。