脂質によって健康を害する可能性があることを知ったけれど、どんな脂質が病気や不調を引き起こすかまではわからない方が多いと思います。
脂質が体にとってどんな働きをするのか、健康維持に必要なものなのかを理解することで、今後の食生活が変わるきっかけになるでしょう。
脂質を気にする方が選ぶべき脂質と避けるべき脂質を解説いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
脂質の基本知識
まずは、脂質の基本的な知識について理解しましょう。
「脂質」とは?
肉類やバターなどの固形の脂、オリーブオイルなどの液体の油、そして動物の体内にある脂肪。種類はさまざまですが、これらの油脂は全て「脂肪酸」からできており、総称して「脂質」と呼ばれています。
糖質・タンパク質と並ぶ、身体に欠かせない3大栄養素の一つです。そして、3大栄養素の中でも高いエネルギーを得られる栄養素で、私たちの祖先は「脂質のエネルギー」に頼っていたと考えられています。
糖質やタンパク質が、1gあたり4kcalであるのに対して、脂質は倍以上の9kcalもあります。そのため、糖質やタンパク質よりも、脂質を使った方が効率良くエネルギーを得ることができると言えるでしょう。
脂質の働きとは?
脂質の燃料タンクのことを「体脂肪」と呼んでおり、そこに含まれる脂肪酸には、以下のような大事な役割があります。
- ホルモンなどの伝達物質の分泌、生成
- 衝撃を和らげるクッション
- 体温の保持
- エネルギー源の貯蔵庫
- ビタミン類の消化、吸収、運搬
- 細胞の構成成分(細胞膜)
- 内臓の位置を保つ
脂質の種類はこう分けられる
脂質、正確に言うと脂肪酸は、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類できます。まずは、この油脂の種類について理解しましょう。
飽和脂肪酸 | ギー、バター、ラード、脂身、ココナッツオイル | ||
不飽和脂肪酸 | 一価不飽和脂肪酸 | オメガ9 | オリーブオイル アボカドオイル パーム油 |
多価不飽和脂肪酸 | オメガ6 | ゴマ油 紅花油 ひまわり油 グレープシードオイル |
|
オメガ3 | アマ二油 えごま油 魚の油 ヘンプシードオイル |
脂質の摂り方と注意点
単純に、脂質を減らせば健康になれるという訳ではありません。ここでは、脂質の摂り方と注意点について解説いたします。
良い脂質を摂ることが肝心!
脂質には、オメガ3脂肪酸のように健康に良いとされる脂質や、お肉の脂身のように体内に蓄積されやすい脂質などがあります。
しかし、日本ではまだ「良い脂質」と「悪い脂質」の区別がほとんどなされていません。なんとなく脂質全般を避けて「ローファット」にするか、良い脂質も悪い脂質も一緒くたに摂ってしまうか、どちらかのケースが大半です。
そのため、良い脂質の恩恵が受けられないばかりか、悪い脂質の悪影響をモロに受けてしまうのです。毎日、ファストフードや外食で揚げ物などを食べる生活を続けている人が増えていけば、日本ではガンや心臓病、うつ病といった問題がどんどん増え続けるでしょう。
こうした病気にかからないためにも、日本人は良い脂質についてもっと真剣に考えるべきなのです。
良い脂質が不足すると病気になる
「脂質の種類」の表でも挙げた、多価不飽和脂肪酸の「オメガ6」と「オメガ3」だけは、人間の体の中で作ることができないので、食べ物から摂らなければなりません。そのため、「必須脂肪酸」と呼ばれています。
多価不飽和脂肪酸のオメガ6とオメガ3は、別名「酸素マグネット」と呼ばれるほど、酸素を強引に引き寄せる力があります。つまり、オメガ6やオメガ3で作られた細胞膜や細胞は、体内でマグネットのように酸素を引きつけるので、細胞は酸素が豊かになって元気になります。
私たちが、深呼吸をするとリフレッシュできるのと同じように、酸素がたっぷりの環境下では低酸素を好むがん細胞が増えることができません。また、脳の構成要素の14%はオメガ3、10%はオメガ6でできています。脳の機能を維持するためにも、これら2つの脂肪酸は絶対に必要な脂質なのです。
脂質を摂る際の注意点
オメガ6とオメガ3を含む脂質を、ひたすらたくさん摂ればいいのかと言うと、人間の体はそれほど単純にはできていません。オメガ6とオメガ3は、体内で全く逆の働きをするので、どちらかが一方的に多くなってしまうと、体のバランスが崩れてしまうからです。
理想の割合は、オメガ6:オメガ3=4:1と言われていています。ただし、現代は普通に食事を摂っているだけでは、極端にオメガ6に偏りやすい傾向にあります。オメガ6に偏った食事は、体内でアレルギーを促進したり、血栓を作ったりします。
特に、最近盛んに言われているのは、オメガ6の摂り過ぎで体内に炎症が起きるということです。どんなものでも摂り過ぎたり、ひとつに偏ったりすると、体にとって悪影響をもたらします。現在の私たちの食生活では、オメガ6を控えめに、オメガ3を積極的に摂るようなバランスを心がけることが大事でしょう。
避けるべき脂質
健康を維持するために、絶対に避けるべき脂質をご紹介いたします。
工業性植物油
日本ではトランス脂肪酸の表示義務が無いですが、食品表示を見る際に「加工油」や「植物性油脂」「食用調合油」などといった表示を見て避けることはできます。また、コールドプレス製法で製造された油は危険性が低いので、購入の際は「低温圧搾製法」と表示されているものを選ぶと良いでしょう。
市販のスナック菓子やパン
パンやお菓子、チョコレートを食べたくなった際は、市販のものではなく素材にこだわって手作りされた体に優しいものを求めるようにしてください。ココナッツオイルを使ったお菓子や、オートミールで作られたクッキーなど、ヴィーガン仕様に作られているお菓子も増えてきていますので、オンラインショップなどで探してみましょう。
ファストフードや揚げ物を避ける
マヨネーズや大豆製品などにもトランス脂肪酸のリスクはあるため、加工食品は避け、自然な材料で作られた調味料や食品を探してください。ファストフードはもちろん、スーパーのお惣菜(とくに揚げ物)や屋台の食品もトランス脂肪酸の危険性は高いので、それらを利用する頻度は控えるようにした方が良いと言えます。
まとめ
脂質についての基本的な知識や、どんな脂質を選ぶべきかが理解できたかと思います。質の悪い脂質を過剰摂取することで、確実に病気に近づいてしまいます。
まずは、避けるべき脂質を控えて、良質な脂質を日々の食事に取り入れるよう意識してみてください。私達の健康維持に欠かせない脂質を選び、病気とは無縁の身体をつくりましょう。