「糖質」の摂り過ぎは健康を害すると聞いたことはあるけど、それがどうしてなのか、いまいち理解できない方も多いと思います。
糖質を摂り過ぎだと健康診断で言われたり、調子が悪かったりして糖質の摂取量に気をつけようとしても、何を控えたら良いかわからないでしょう。
今回は、糖質の基本的な知識から、糖類・糖分の違い、また脂質との働きの違いについて解説いたします。絶対に避けるべき、体に悪い糖質もご紹介いたしますので、最後までご覧ください。
糖質の基本知識
糖質について、基本的な知識を覚えておきましょう。
「糖質」って何?
「糖質」とは、三大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)である「炭水化物」の一部で、穀類・芋類に多く含まれます。体内で分解・吸収され、脳や体のエネルギー源として使われます。また、糖質は、1gあたり4kcalあると言われています。
糖質、糖類、糖分の違い
「糖類」は、糖質の一部を指す言葉です。体のエネルギーとなる糖質は、単糖類・二糖類に分けられる糖類と、でんぷんなどの「多糖類」「糖アルコール」などに分類されます。
「糖分」は、甘いものを指す言葉で、厳密な定義はありません。「糖分の摂り過ぎに注意」などと言うときは、お菓子やケーキ、果物を指すことが多いでしょう。
糖質と脂質について理解しよう
糖質と脂質の違いについても、理解を深めておきましょう。
人間には2種類のエネルギータンクがある
人類は約400年万年もの間、この地球で命をつなぐため、その環境に応じて食べるべきものを選択してきました。その多くの期間、狩猟で得られた動物の脂質は重要なエネルギー源でした。
人間は飢えと戦うため、体に蓄えた脂質をエネルギー源にして生きてきたのです。穀物を栽培して主に糖質からエネルギーを得るようになったのは、人類の歴史においてわずか約1万年前のことなのです。
このような歴史から見ても、私達の体は元々、糖質ではなく脂質を燃焼してエネルギーに変える「ファットバーニング(脂質燃焼型)」に合わせてつくられている、と言えるでしょう。
エネルギー代謝というもっとも基本的な体の仕組みを、本来の体に合った状態に戻していくことで、日々の生活や仕事のパフォーマンスを最大限にまで高められる可能性が高いのです。
私達の祖先は「脂質のエネルギー」に頼っていた
原始時代の人類は、穀物を栽培していたわけではありません。そのため、糖質はそれほど多く摂っていなかったと考えられます。食べ物のほとんどは狩りで獲ってくる肉や魚、貝類などのタンパク質と脂質だったはずです。
食べ物はいつも手に入るとは限らないので、食糧があるときに食べられるだけ食べて、ありったけの燃料に変え、脂質の燃料タンクに蓄えたのです。
そして約400万年経った今でも、私達のエネルギー代謝の構造は基本的にほとんど変わっていません。
イヌイットの人達は病気が少ない
北極やカナダ北部で暮らすイヌイットの人達は、現在も糖質はほとんど摂らず、脂質中心の食生活を送っています。つまり、ファットバーニングのシステムで生きています。
彼らには、世界の他の国々の人に比べて心臓病や脳血管障害、がんの発生率が飛び抜けて低いという特徴があります。つまり、心臓も肝臓も脳、その他の臓器も、エネルギー源として糖質ではなく脂質を好んでいると言えるでしょう。
糖質をおすすめしない理由
糖質が、私達の体に及ぼす影響を解説いたします。
現代人は糖質を摂り過ぎ
「飽食の時代」となった現代では、食事の回数も、種類も量も飛躍的に増えています。スイーツなど甘い嗜好品も次々と登場し、これまでの歴史にないほど大量の糖質を摂る生活を送るようになりました。
1万年前の人類が摂っていた糖質は、1年間でわずか小さじ22杯だったとも言われています。それが、今ではなんと1年間で約63kg、小さじ21万1400杯もの糖質を摂っているのです。これが体に良い影響を与えるわけがありません。
血糖値の上下動が激しい
糖質を摂るデメリットとして挙げられるのは、インスリンの急上昇です。糖質が体内に入ると、インスリンのトラックがいっせいに出動し、糖質が分解されてできた「グルコース」を体中の細胞に運びます。
このため血糖値が一気に上がり、その後急激に下がります。この上下動によって血糖値がガクンと下がると、「糖質を摂りたい」という飢餓感も一緒に激しくなります。その結果、食欲がコントロールしにくくなって、ドカ食いなどが起きてしまうわけです。
糖質はお腹いっぱいになりにくい
糖質の中でも、私達が食事でよく口にする小麦や米などの炭水化物には、野菜や肉、魚などほかの食品と比べて、微量栄養素が不足しています。
特にでんぷんの多い炭水化物には微量栄養素が少ないので、小麦や米をいくら食べても、体は「栄養素が足りない」と認識し続けるのです。その結果、満腹感を得られないまま「もっと、もっと」と食べ続けることになります。
脳に「もう、お腹いっぱいです」という指令を送るのは、脂肪細胞から分泌される「レプチン」という満腹ホルモンです。この満腹ホルモンは、脂質やタンパク質を摂ったときさかんに分泌されるのですが、炭水化物の場合はあまり反応しません。
糖質によって引き起こされる「炎症」の怖さ
糖質はタンパク質とくっついて熱が加えられると、「AGE(終末糖化産物)」という極めて破壊的な物質に変化してしまいます。このAGEは細胞を攻撃し、炎症を引き起こします。
例えば、動脈をつまらせる「血栓」の原因は炎症です。AGEによって傷つけられた血管の内側に血液中を流れるコレステロールがしみこみ、炎症が起こります。それを防ごうとして、免疫細胞や血小板がやってきて固まりを作ります。これが血栓です。
このように糖質は、あらゆる病気の引き金となりうる重要な要素です。
肥満の真犯人は「炭水化物」と「砂糖」
肥満の最も大きな原因は、カロリーの高いアブラだと思っていませんか?実は、炭水化物と砂糖が深く関わっているのです。
太る原因は「カロリー」だけじゃない?
炭水化物は糖質と食物繊維からなります。砂糖や精製穀物のような、ほとんどが糖質で占められた炭水化物を摂取すると、血液中ですぐにグルコースに変わり、一気にインスリンを上昇させます。するとインスリンのトラックが大量に出動し、グルコースを細胞に届けようとします。
しかし細胞が受け取れるグルコースには限度があるので、多くのトラックがグルコースを積んだまま、血液の中をウロウロします。これが、高血糖の状態です。
困ったトラックは荷物を脂肪細胞に届けます。そして、脂肪細胞がグルコースの最終積み下ろし基地になります。脂肪細胞はグルコースを脂肪酸に変え、「体脂肪」として蓄積するのです。
炭水化物と脂質の組み合わせが最も太る
「脂質が最も太る」というのは誤った考えです。太るとは体脂肪が増えた状態であり、体脂肪は肥満細胞に中性脂肪が蓄えられたものです。
肥満細胞が中性脂肪を蓄えるには、その材料となる「脂肪酸」と「グリセロール」が必要です。摂取した脂質は分解されて脂肪酸とグリセロールになります。エネルギーとして利用されるほか、肥満細胞で中性脂肪へ再合成されます。脂肪酸は糖質からも合成されます。
このことから、糖質を多く含んだ炭水化物の摂り過ぎはもちろん太りますし、糖質と脂質の組み合わせが最も太ることがわかります。糖質はエネルギーとして消費されないと確実に体脂肪になります。一方、脂質は別の使い道もあるので、必ずしも体脂肪になるわけではありません。
質の良い脂質は、細胞膜やホルモンの材料になるほか、さまざまな生命の維持に役立ちます。高カロリーの食べ物を摂るから太るのではなく、体脂肪の材料となる糖質を豊富に含んだ炭水化物や砂糖を摂り過ぎるから太るのです。
コレは避けるべき!体に悪い糖質とは?
これだけは避けてほしい、体に悪い糖質をご紹介いたします。
人工的な砂糖
人工的な砂糖とは、人工的に合成された甘味料のことを指します。天然の砂糖よりも甘みが強く、少量で強い甘さを出すことができるため、清涼飲料水や炭酸飲料、ガムなどに多く使われています。
代表的なものでは「アステルパーム」というアミノ酸から作られたものや、「アセスルファム」や「スクラロース」という人工甘味料が有名です。これらは甘味が強く、その味に舌が慣れてしまうことで甘みを感知する感覚が衰えます。ますます甘いものを食べ過ぎてしまうことがあり依存性が非常に高いです。
ダイエットや健康ブームにより、人工甘味料入りの健康飲料などが普及していますが、実際には健康を害するものになっていることが危惧されています。
精製された砂糖
精製砂糖には、サトウキビから蜜を取り出し精製する「ショ糖」がメインの成分となる「上白糖」「グラニュー糖」「三温糖」などがあります。黒砂糖には、蜜由来の豊富なミネラル成分が含まれますが、白砂糖(上白糖、グラニュー糖)にはミネラルは含まれません。
白米と違い、ブドウ糖入りのジュースや上白糖のように吸収速度の速い食品は、インスリン分泌が間に合いません。そのせいで、精製された砂糖を過剰に取ると、イライラしたり、キレやすくなったり、うつ病や不安感などの精神面での症状が出てしまうことがあります。これらには、血糖値が下がりすぎる「低血糖」が関係していると言われています。
人間は、低血糖になると空腹を感じますが、ここで甘いものが食べたくなり糖質の多い食品を摂取してしまうと、再び急激な血糖値上昇と低下の乱高下が繰り返されて、食欲の無限ループに陥ってしまいます。これにより過食傾向になると、肥満になってしまう可能性が高くなるでしょう。
また、精製された砂糖は腸内の悪玉菌の好物なため、腸内環境を荒らす原因になり、あらゆる不調を引き起こします。
- 集中力の低下
- 免疫力の低下
- ニキビ、肌荒れ
- 甘いものの渇望
- 腸内環境の悪化(便秘や下痢)
- 異常な眠気やだるさ、食後の眠気
- アトピーや皮膚の疾患、その他アレルギー
それ以外にも、砂糖のような糖質の過剰摂取は「ビタミンB-1」が大量に消費されてしまい、皮膚の新陳代謝に関わる栄養素が不足して、ターンオーバーがスムーズにいかなくなったり疲れやすくなるなども問題も出てきます。
砂糖のような酸性食品を多く摂取すると、体は「中和しよう」とアルカリ性であるカルシウムが骨や歯から溶け出してしまいます。すると、骨や歯が弱くなり、骨粗鬆症や虫歯の原因となります。
精製された穀物
白いパンやパスタなどの精製穀物を大量に摂取すると、主要な心血管系疾患、脳卒中、死亡のリスクが高くなるという研究報告があります(カナダ サイモンフレーザー大学)
この研究は、玄米や大麦などの全粒穀物食品を食べ、精製穀物食品を少なくすることがあらゆる健康リスク低下と関連することを示唆しています。健康状態を維持するためには、精白パン、パスタ/ヌードル、シリアル、クラッカー、精製穀物を含むベーカリー製品、デザートなどの消費量を減らし、高品質の炭水化物を摂取することが重要であると言えるでしょう。
全粒穀物(ホールグレイン)とは、精白などの処理で果皮、種皮、胚、胚乳といった部位を取り除いていない未精製の穀物のことを言います。未精製の穀類として、玄米、分づき米、麦ご飯、雑穀、ライ麦パン、全粒粉パンなどがあります。これらは、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどを豊富に含み、特にビタミンB-1は白米よりも多く含まれています。
高品質の炭水化物を選び、食べる量を調整することは、糖尿病などをコントロールするための最良の方法と言えます。3大栄養素のうち、血糖値にすぐに影響するのは炭水化物なので、食べ方には注意が必要です。
まとめ
糖質についての基本的な知識や、血糖値の上昇にどのように関わってくるか、肥満との深い関係性などについて学べたのではないでしょうか。
現代人は糖質過多になりやすい環境にあるので、自ら意識して日々の食事を選ばなければ、知らず知らずのうちに健康を害してしまうことになりかねません。
糖質と栄養のバランスを考えて毎日の献立を立て、糖分の多いお菓子や果物は、嗜好品としてたまに食べるようにすると良いでしょう。