「飽和脂肪酸」というアブラの種類があることは知っているけど、どんなアブラが含まれるのか、健康に影響があるのかまではわからない方が多いと思います。
自分が知らず知らずにうちに、飽和脂肪酸を摂取し過ぎてしまい、将来の健康に害を及ぼすのかも気になるところでしょう。
そこで今回は、飽和脂肪酸についての基本知識や、1日に摂るべきアブラの摂取量の目安について解説いたします。
飽和脂肪酸の基本知識
食用油脂に含まれる、おもな脂肪酸は「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類できます。まずは、この油脂の種類について理解しましょう。
「脂肪酸」って何?
肉類やバターなどの固形の脂、オリーブオイルなどの液体の油、そして動物の体内にある脂肪。種類はさまざまですが、これらの油脂は全て「脂肪酸」からできています。さらに、脂肪酸は大きく2つに分類され、肉類やバターに多い飽和脂肪酸と、オリーブオイルなどに多い不飽和脂肪酸です。
飽和脂肪酸は動物性だからと、肥満やコレステロール増加の問題が心配されてきましたが、近年では科学的に生成された植物油の方が危険という説が有力です。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は、どちらも欠かせない油脂であり、大事なのはなるべく加工された工業性油脂を避け、量とバランスを考えて質の高い油を摂取することと言えます。
「飽和脂肪酸」とは?
常温のときに個体であることが多く、酸化しにくい脂です。肉類、バターなど動物性の脂に含まれますが、植物性では珍しくココナッツオイルにも多く含まれます。
肉やバターなどから摂取した飽和脂肪酸は、体内で不飽和脂肪酸の「オレイン酸」に変換され、細胞膜の材料になったりエネルギーになったりします。
「不飽和脂肪酸」とは?
オリーブオイルやえごま油など、植物性の油に含まれる酸化しやすい液体の油です。また、魚の脂もこれに該当し、その化学構造によって「一価不飽和脂肪酸(オメガ9=オレイン酸)」と「多価不飽和脂肪酸(オメガ6=リノール酸、オメガ3=α-リノレン酸)」に分かれます。
これらのアブラのうち、最後にあげた多価不飽和脂肪酸のオメガ6とオメガ3だけは、人間の体の中で作ることができないので食べ物から摂らなければなりません。そのため、「必須脂肪酸」と呼ばれています。
飽和脂肪酸を摂り過ぎると健康を害す?
現代の日本人は、食生活の欧米化によりファストフードや肉、揚げ物などの洋食を食べる機会が増えてきています。さらにスナック菓子やケーキ、チョコレート、アイスクリームなどのバターや乳脂肪を使った洋菓子類もよく食べるという方は、健康を維持したいなら控えた方が良いでしょう。
飽和脂肪酸はバターやラード、肉の脂身などの動物性脂肪に多く含まれ、悪玉コレステロールを増加させる原因になると言われています。そのため、上記に挙げたような動物性脂肪をたっぷり使用した食品は摂り過ぎないように気をつけなければなりません。過剰に摂取し過ぎると、肥満や生活習慣病を招く原因になります。
動物性脂肪は悪者なの?
しかし、動物性脂肪が悪者というわけではなく「量」と「質」に配慮して適切な量を摂取することが大切です。摂取する脂質を極端に減らすと、脂溶性ビタミンの吸収が悪くなったりエネルギー不足に陥る可能性もあります。
また、脳の60%がアブラで出来ていたり、細胞膜は摂取したアブラから作られることを考えると、質の良いアブラを摂取することは健康を守るために必要なことなのです。
質の高い動物性脂肪には、牧草牛(グラスフェッドビーフ)や自然飼育された動物の肉、その牛からつくられたギーやバターなどがあります。これらに含まれる飽和脂肪酸は、摂り過ぎなければ細胞の機能維持をサポートする役割を担ってくれます。
飽和脂肪酸を多く含む食品は?
飽和脂肪酸を含む食品をご紹介いたします。意外な野菜に多く含まれていますので、チェックしてみてください。
飽和脂肪酸に該当するアブラ
飽和脂肪酸は、常温では固形になるアブラですので、ギーやバター、ラード、肉の脂身など主に動物性のアブラがこれに該当します。
飽和脂肪酸 | ギー、バター、ラード、脂身、ココナッツオイル | ||
不飽和脂肪酸 | 一価不飽和脂肪酸 | オメガ9 | オリーブオイル アボカドオイル パーム油 |
多価不飽和脂肪酸 | オメガ6 | ゴマ油 紅花油 ひまわり油 グレープシードオイル |
|
オメガ3 | アマ二油 えごま油 魚の油 ヘンプシードオイル |
飽和脂肪酸を多く含む野菜・果物
飽和脂肪酸は、野菜や果物にも含まれています。不飽和脂肪酸も一挙にまとめましたので、こちらを参考に日々の食材を選んでみてください。
脂肪酸を豊富に含む野菜 | 多価不飽和脂肪酸 | 一価不飽和脂肪酸 | 飽和脂肪酸 |
オメガ6 & オメガ3 | オメガ9 | ||
枝豆 | 2.82 | 1.91 | 0.86 |
とうもろこし(ゆで) | 0.54 | 0.49 | 0.26 |
にんにく(生) | 0.41 | 0.04 | 0.18 |
ほうれんそう(ゆで) | 0.21 | 0.02 | 0.05 |
干ししいたけ(ゆで) | 0.18 | 0.01 | 0.05 |
春菊(ゆで) | 0.17 | 0.01 | 0.04 |
エリンギ(生) | 0.17 | 0.05 | 0.05 |
まいたけ(ゆで) | 0.15 | 0.14 | 0.08 |
脂肪酸を豊富に含む果物 | 多価不飽和脂肪酸 | 一価不飽和脂肪酸 | 飽和脂肪酸 |
オメガ6 & オメガ3 | オメガ9 | ||
アボカド | 2.16 | 10.82 | 3.21 |
栗 | 0.25 | 0.05 | 0.09 |
干し柿 | 0.22 | 0.36 | 0.15 |
きんかん | 0.18 | 0.06 | 0.09 |
レモン | 0.11 | 0.02 | 0.01 |
キウイフルーツ | 0.05 | 0.01 | 0.01 |
いちご | 0.05 | 0.01 | 0.01 |
柿 | 0.03 | 0.04 | 0.02 |
※数値(g)はいずれも可食部100g中
出典:食品成分データベース(改変)
1日に摂るべき理想の「アブラ摂取量」
先にも述べたように、健康を維持するために大事なのは「加工された工業性油脂を避け、質の高いアブラを摂取すること」です。しかし、ココナッツオイルだけ、あるいはオリーブオイルだけと言うように、特定の油に固執するのはいけません。食べ物についても言えることですが、油についてもやはり、特定の種類に偏ることなく複数の種類をバランス良く組み合わせて摂ることが大事です。
「じゃあ、どういうバランスで組み合わせればいいの?」という疑問が出てくると思います。そこで、理想の組み合わせ方をご紹介いたしましょう。1日に摂っていただきたい油は、例えば次のような4種類です。
- ギーあるいはグラスフェッドバター(飽和脂肪酸)
- バージンココナッツオイルあるいはMCTオイル(飽和脂肪酸)
- エキストラバージンオリーブオイル(不飽和脂肪酸:オメガ9)
- アマニ油あるいはヘンプシードオイル(不飽和脂肪酸:オメガ6&オメガ3)
これらを、偏りなく摂るようにしてください。目安として、1日の合計で男性なら8〜10テーブルスプーン、女性なら6〜8テーブルスプーンです。(1テーブルスプーン=15g)グラムにすると、1日あたり男性は120〜150g、女性は90〜120gです。
アブラを摂る際の注意点
不飽和脂肪酸の油は、基本的に加熱すると「トランス脂肪酸」などが生じてきますので、炒め物や揚げ焼きなど加熱して使いたい場合は、そうした心配がない飽和脂肪酸であるギーやココナッツオイルがおすすめです。
亜麻仁油やえごま油、ヘンプシードオイルなどの不飽和脂肪酸は、加熱には使わずそのまま料理にかけたり(加熱した料理の場合は、火を止めた後であれば直接かけてOK)、スープやスムージーに混ぜて摂るようにしてください。
ただし、直接摂る以外に食材からもアブラを補うことができます。例えば、肉などの動物性タンパク質には、量にもよりますが大体1日あたり2〜4テーブルスプーンのアブラが含まれています。野菜にも、実は毎食欠かさずとっていれば1日当たり1〜2テーブルスプーンくらいのアブラを摂っていることになるはずです。
そのため、1日3食として料理に直接かけたり混ぜたりして摂るアブラの量は、1回の食事に大体1〜2テーブルスプーンで十分だと言えるでしょう。
まとめ
飽和脂肪酸についての基本知識や、どんな油が分類されるのかが理解できたかと思います。とくに現代の食においては、飽和脂肪酸を摂取する機会が増えがちですので、その質と量、他のアブラとのバランスを考えて摂取するようにしてください。
自分の生活にどんな油、食品を積極的に取り入れるべきかを判断し、いつまでも健康的な人生を送りましょう。