亜鉛は味覚に関与するだけではなく、実は身体の発達や免疫などにも作用する重要な栄養素であることをご存知でしょうか。最近では、食の変化によって亜鉛不足の方も多くなっているようです。
身体そのものを健康に繋げるだけではなく、アンチエイジング効果もあるため若々しくありたい方にとっても、おすすめの栄養素です。
この記事では、亜鉛によってもたらされる身体への効果やどのような人が亜鉛不足になるのか亜鉛に関する詳しい内容についてご紹介します。
亜鉛について
亜鉛の持つさまざま効果や不足することによって起こりうる症状、基本情報について詳しく解説していきます。
亜鉛とは?
亜鉛は体内に約2g含んでおり、そのうちのほとんどは筋肉と骨中に含まれますが、皮膚、肝臓、膵臓、前立腺等の多くの臓器に存在しています。そして約200種類の酵素に幅広く関与し、主にタンパク質や糖、アルコールの代謝や免疫、ホルモン分泌が正常に機能するように働きかける必須ミネラルの一つです。
重要な栄養素であるものの、吸収率は10〜30%と低いため、日本人にとってカルシウムと同じくらい不足しやすい栄養素であると言われています。
亜鉛の効果・はたらき
亜鉛は身体のさまざまな部位で働きを補助する役割を担っており、健康を維持するために幅広く活躍しています。その中でも亜鉛の代表的な効果を5つご紹介します。
①成長と発育を促す
亜鉛はDNAやRNAの合成に関与し、遺伝子情報のコピーを補助する役割を持っています。細胞分裂の活性化効果もあるため、骨や筋肉にも直接関与しています。そのため胎児や小児期の子供達の成長・発育にとって非常に重要な栄養素と言われています。
②味覚の維持
人間は舌に存在する味蕾(みらい)という細胞器官によって味を感知しています。味蕾細胞は常に破壊と生成を繰り返して短期間で新しく生まれ変わることで、味覚を維持しているのです。その生成を補助するために必要なものが亜鉛です。
人間が味覚を維持できるのは、亜鉛による効果が高いからであると言われています。反対に亜鉛が不足すると味覚の変化が起こりやすくなると言われています。妊娠中に味覚の変化が起こるのも、胎児の発育に必要な亜鉛を多く供給しているため妊婦が亜鉛不足になることが要因であるとされています。
③皮膚や粘膜の健康を維持する
皮膚や髪はタンパク質から作られています。亜鉛はタンパク質の生成を補助する働きも担っているため、十分に摂取することで健康的な美肌や美髪に対する効果も期待できます。
④抗酸化作用
亜鉛はビタミンAの活性化にも関与しています。ビタミンAは、主に体内の酸化を予防する働きを持っています。そのため活性化を促進させることで、体内で蓄積されやすい活酸化脂質を防ぐことができます。生活習慣病の予防やアンチエイジングに効果的です。
⑤免疫力の向上
ビタミンAには粘膜を保護する働きもあります。亜鉛が活性化を補助することで皮膚粘膜を良好な状態へと導き、粘膜からのウイルスや細菌の侵入を防ぐことに役立ちます。
亜鉛不足の症状
亜鉛が不足することによって身体にもたらす症状として以下のようなことが起こります。
・味覚障害
・成長障害
・貧血(亜鉛欠乏性貧血)
・脱毛
・生殖機能低下
このように、亜鉛は健康維持に繫がる身体の内部の症状から外観的変化にも大きく影響します。
亜鉛の1日の推奨摂取量
厚生労働省の食事摂取基準(2020版)では、亜鉛の摂取推奨量について以下の様に記載されています。
・男性18〜74歳 11mg/日、75歳以上 10mg/日
・女性18〜74歳 8mg/日、75歳以上 8mg/日
・妊婦 10mg/日
・授乳婦 12mg/日
亜鉛は必須ミネラルであり、健康維持のためにも積極的な摂取が推奨されていますが、過剰に摂取してしまうことで悪影響を引き起こすこともあります。そのため日常的に取り入れる場合は、摂取量や摂取バランスに注意が必要です。
基本的には、過剰摂取に伴い疾患を発症することは少ないと言われています。しかし亜鉛が過剰に増えすぎることによって、亜鉛過剰症といった頭痛や発熱、下痢などの胃腸障害を引き起こすことがあります。
その他にも亜鉛は銅と吸着しやすいタンパク質を活性化させる特徴があるため、過剰に増えることで銅も一緒に減ってしまい、結果的に銅が足りず銅欠乏症に繋がるリスクもあります。推奨摂取量を目安に、適度な量を継続的に取り入れることを目指しましょう。
亜鉛を豊富に含む食品とは?
亜鉛は動物性と植物性の食品の両方に含まれています。具体的にどのような食品に含まれているのか表にまとめてご紹介します。
亜鉛を多く含む食品一覧
食品名 | 100gあたりの亜鉛の量 |
うなぎ | 1.4mg |
納豆 | 1.9mg |
たらこ | 3.1mg |
プロセスチーズ | 3.2mg |
卵黄 | 4.2mg |
アーモンド | 4.4mg |
牛肩ロース | 5.6mg |
豚レバー | 6.9mg |
煮干し | 7.2mg |
牡蠣 | 13.2mg |
亜鉛のQ&A
亜鉛に関する情報について疑問についてご紹介します。
手軽に摂取できる方法はあるの?
亜鉛を取り入れたいけど、日常的にメニューに取り入れるのが難しいという方にはサプリメントもおすすめです。毎日継続しやすく忙しい時でも簡単に摂取することができます。サプリメントの種類によっては含有量が異なるため過剰摂取とならないように注意しましょう。
小腹が空いたときは、おやつの内容を甘いものではなくナッツ類や、するめや煮干しなどを取り入れてみてはいかがでしょうか。ナッツ類のアーモンドは特に亜鉛の含有量が多いだけでなく必須脂肪酸やマグネシウムも含んでいるため栄養価が高く身体に良い効果をもたらします。
するめは消化に悪いイメージを持たれている方がいるかもしれませんが、実はアーモンドと同様で亜鉛やその他の栄養価も非常に高く、低カロリーで高タンパクと有益な効果をもたらす栄養成分を豊富に含んでいます。食感も固いため、咀嚼回数が多くなることで満腹感も得やすくなるのでダイエット中の方にもおすすめです。
亜鉛が不足しがちな人は?
亜鉛は、体質やその時々の状況によって不足しやすくなります。具体的にどのような人が不足しやすいのか5つのタイプ別に沿ってご紹介します。
①ダイエット中や偏食の人
過度なダイエットで食事制限をしている方、偏食体質の方は栄養バランスが不安定になりやすくなっています。特に加工食品やレトルト食品を食べる機会が多い方は、添加物の中に亜鉛の吸収を阻害する成分を含んでいるため、摂取量自体が少ないだけでなく、吸収阻害によりさらに欠乏状態が進行してしまう可能性があります。できるだけバランスの良い食事を心がけましょう。
②ベジタリアン、ヴィーガン
亜鉛は動物性食品にも多く含まれているため、菜食中心の場合、比較的不足しやすい傾向にあります。また青菜類に含まれるシュウ酸は亜鉛の吸収を阻害する働きもあるため注意が必要です。豆類やナッツ類などの植物性食品にも亜鉛を含む食品は多数存在するため、積極的に補うようにしましょう。
③妊婦
妊婦または授乳中の方は、胎盤や母乳を介し子供にとって必要な栄養素をたくさん供給しています。亜鉛は胎児の成長発育に大きく関与しているため、通常よりも消費されやすくなっています。
妊婦が貧血になりやすい要因は、栄養を運ぶために多くの血液量が必要であることから鉄欠乏性貧血になるだけでなく多くの亜鉛も必要とすることで、亜鉛欠乏性貧血にもなりやすいと言われています。
推奨摂取量も通常時に比べて多くなっているので、大切な子供の発達のためにも積極的に取り入れましょう。
④アスリート
亜鉛は汗の中に多く含まれています。運動を活発に行っている人や発汗が多い人は、汗によって亜鉛も一緒に流れやすくなってしまうため亜鉛不足のリスクが高いです。過度な運動で発汗が多いと感じる方は注意しましょう。
⑤高齢者
加齢によって高齢者は食が細くなりやすく、食事の摂取量そのものが少なくなりやすい傾向にあります。また、胃や腸の機能も弱まるため消化・吸収機能の低下により栄養素の吸収も若い時と比べて低くなっています。その結果、低栄養状態へとなりやすく亜鉛も不足しやすいと言われています。
ご紹介した5つの傾向に該当する方は、亜鉛が不足しやすくなっている可能性があります。亜鉛を含む食品を、意識的に多く取り入れることをおすすめします。
まとめ
亜鉛はさまざまな食品に含まれているため、日常的に取り入れやすい栄養素です。しかし吸収率そのものが低いこと、体質や傾向によっては容易に欠乏しやすい栄養成分であることから、積極的に取り入れることが重要となってきます。摂取量による注意も必要ですが、程よいバランスで日常に取り入れ健康増進にぜひ役立ててください。