皆さんは「オリゴ糖」と聞いて、どんな印象を受けますか?「胃に優しい」というイメージを持っておられるかもしれませんが、使い方や選び方を間違えると逆効果になりまねません。
この記事では、オリゴ糖の種類や正しい使い方についてご紹介していきます。
オリゴ糖が危険と言われる理由
「オリゴ糖を摂取するのは危険」「健康に良くない」と、耳にしたことのある方もおられるでしょう。その疑問について解説いたします。
取り過ぎるとお腹を壊すから
オリゴ糖は、摂取量を守れば決して危険なものではありません。もし、大量摂取してしまった場合、お腹の調子が悪化し下痢・腹痛を引き起こしてしまうことがあります。これは、腸内の善玉菌が急激に増加するためです。
初めてオリゴ糖を使う方は、必ず少量から身体を慣らしていくように心掛けてください。オリゴ糖の1日の摂取量目安は、8~20g(ティースプーン2~5杯)です。
人工甘味料が入っているから
オリゴ糖の中には、アスパルテーム、スクラロース、アセチルファムカリウムなどの「人工甘味料」入りのオリゴ糖も存在しているので注意が必要です。
特にアスパルテームは脳の炎症を引き起こし、糖尿病のリスクを上げるなどの害があると言われています。他にも、人工甘味料は中毒性が高い・肥満になりやすいなどの悪影響があるとされているので、オリゴ糖を選ぶ際は、必ず原材料表記をチェックして、人工甘味料や添加物が入っていないものを選ぶようにしましょう。
長時間の加熱はNGだから
オリゴ糖は熱に強いため、料理・暖かい飲み物に入れても効果がなくなることはありません。ただし、オリゴ糖を長時間加熱した場合、成分が分解されてしまうことがあるため長時間の加熱は禁物です。煮込み料理などの場合は、なるべく出来上がりの直前にオリゴ糖を入れると良いでしょう。
オリゴ糖を使うメリット
ここからは、オリゴ糖を食品として使うメリットについて、項目別に解説していきたいと思います。
お腹にやさしい
オリゴ糖は自然界に存在する糖質の一種で、さまざまな野菜・果物に含まれている成分です。難消化性のため胃・小腸で吸収されにくく、そのまま大腸まで届いて善玉菌であるビフィズス菌などのエサになるため、善玉菌の増殖を活性化させるとともに、悪玉菌の働きを抑制する効果が認められています。
このことにより、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを改善でき、結果として私たちの健康に好影響を与えてくれます。
砂糖に比べて低カロリー
砂糖と比べると低カロリーなため、ダイエット中や糖分を控えたい方におすすめです。
・白砂糖:1g当たり約4kcal
・三温糖:1g当たり約3kcal
・黒砂糖:1g当たり約3.5kcal
・乳糖果糖オリゴ糖:1g当たり約2kcal
手軽に使える
オリゴ糖はシロップや粉末として、スーパーや薬局でも手軽に使えるようにして販売されています。また料理だけではなく、飲み物やデザートに簡単にプラスして使えるため、砂糖の代替品としてとても便利に使えます。
砂糖は控えたいけど甘さは欲しいというときに、サッとかけて食べられる手軽さは魅力と言えるでしょう。
オリゴ糖の健康効果
オリゴ糖にはどのような健康効果があるかについてご紹介していきます。
腸内環境改善
腸内環境を整えるためには、腸内に棲む腸内細菌のバランスを整える必要があります。腸内には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌という3種類の菌があります。そして、このバランスを「善玉菌:2、悪玉菌:1、日和見菌:7」に近付けることが腸内環境を整えることに繋がります。
腸内環境を整えるためには、善玉菌となる発酵食品などを取り入れることと、そのエサとなる食物繊維やオリゴ糖を摂ることがポイントです。つまり、発酵食品や食物繊維などと合わせて摂ることでより効果が期待できます。また、腸内環境が整うことで、免疫力の向上やメンタルの安定、便秘が原因で起こる肌荒れなどの改善にも繋がります。
免疫力の向上
腸内環境と免疫については多くの研究がなされており、相関関係があることが明らかになっています。腸には多くの免疫細胞があり、ウイルスや病原菌と戦う「腸管免疫」と呼ばれる抗体が多く存在しています。そして、この腸管免疫は腸内環境が良いほどしっかりと機能します。実際に、アレルギー反応が高い人の腸内細菌は多様性に欠けている傾向があります。
上記の腸内環境の改善により、免疫機能の向上も期待できます。
血糖値の上昇を抑える
血糖値は、食べ物の中の糖分がブドウ糖として血液中に摂り込まれることによって上昇します。そして、その上昇した血糖値を下げるために働くのが、膵臓から分泌されるインスリンです。
このインスリンは、血糖値を下げる以外にも脂肪を作る働きや脂肪の分解を抑制するという働きも担っています。そのため、血糖値が急激に上昇するブドウ糖を多く含む食品は、糖尿病や肥満などの原因となる可能性があります。
オリゴ糖にはさまざまな種類がありますが、難消化性の物が多い傾向があります。そのため、胃や小腸で吸収されず、大腸まで届き、糖の吸収がされにくいという性質があります。結果として、血糖値の急激な上昇を抑えてくれます。
オリゴ糖の基本
まずは、オリゴ糖の基本から解説していきたいと思います。オリゴ糖には、一体どのようなタイプが存在するのかという点から、理解を深めていってくださいね。
オリゴ糖とは?
オリゴ糖の特徴としては挙げられるのが、「難消化性の糖質」ということです。 口から入った食べものは、通常は唾液や胃液などの消化酵素によって分解されて消化・吸収されますが、オリゴ糖は消化酵素ではほとんど分解されず、消化・吸収されないまま大腸に届きます。
そこで、ビフィズス菌などの「善玉菌」と呼ばれる腸内細菌の栄養源となり、それらを増やす効果があるため特定保健食品として認められています。シロップや粉末タイプでスーパーやコンビニに流通しています。
オリゴ糖の種類
現在、オリゴ糖の種類は約20種類ほどあり、それぞれ機能性・特徴が異なります。
名称 | 機能性・特徴 |
フラクトオリゴ糖 | オリゴ糖の中でも一番「砂糖」に近いタイプのオリゴ糖で、くせのないまろやかな甘さが特徴的。整腸作用・ミネラルの吸収促進・虫歯になりにくい・腸内免疫力アップ・難消化性で低カロリー・血糖値上昇を防ぐ・便臭の改善・脂質代謝の改善の機能性がある。腸内環境を正常に整え、虫歯になりづらい。特に、ゴボウ・アスパラガス・にんにくに多く含まれる。 |
大豆オリゴ糖 | 大豆に含まれるオリゴ糖で、腸内で善玉菌のエサとなり、より善玉菌を増やす働きがある。整腸作用・中性脂肪・血糖値上昇を防ぎ、虫歯の原因にもなりにくい。砂糖の70%ほどの甘みを持ち、カロリーは50%ほどで熱・酸に強く、他のオリゴ糖に比べると少量でも腸内の善玉菌の増殖を促進させる効果がある。 |
ラフィノース | ビート(てん菜)から作られるオリゴ糖で、オリゴ糖の中でもより早くビフィズス菌のエサになる。ラフィノースは胃・小腸で消化吸収されることがないため、そのまま大腸に到達しビフィズス菌の増殖を促進するとともに、ウェルシュ菌などの悪玉菌の増殖を抑制し、アンモニアなどの悪臭有害成分の腸内での発生を低下させる。ほのかな甘みがあり低カロリー。トウモロコシ・キャベツ・じゃがいも・葡萄・麦類・大豆などのマメ科の種子にも含まれる。 |
ガラクトオリゴ糖 | ガラクトースを主な成分としているオリゴ糖の総称。腸内環境を正常に整える効果を持ち、タンパク質・ミネラル分の消化・吸収を補い促進させる。 |
イソマルトオリゴ糖 | ブドウ糖を主成分として構成するオリゴ糖の一種で、腸内環境を正常に整える効果を持ち、免役力向上にも有効に作用する。酸・熱に強く、防腐作用もあるため保存食にも適している。清酒・みりん・味噌・醤油などの発酵食品やハチミツなどに含まれる。 |
キシロオリゴ糖 | トウモロコシの芯の部分(コーンコブ)に含まれる食物繊維の一種の「キシラン」を酵素で分解して作られたオリゴ糖。ビフィズス菌の増殖活性効果のある「キシロビオース」「キシロトリオース」が主成分で、腸内環境を整える。熱・酸に強く製造過程や製品中での安定性に優れており、少量で整腸作用を発揮できる。 |
乳糖果糖オリゴ糖 | 砂糖の成分のショ糖・牛乳に含まれる乳糖を原料にしたオリゴ糖で、一般的に乳果オリゴ糖と呼ばれ、別名を「ラクトスクロース」と言う。砂糖よりカロリーが低いが、砂糖に近い味質のため砂糖の代替として良く使われる。 |
キチンオリゴ糖 | エビ・カニの殻から精製した「キチン」を原料とし、加水分解法により製造されたオリゴ糖。ショ糖の1/3程度の甘味を持ち、ビフィズス菌・乳酸菌などの善玉菌の増殖促進の効果とともに、悪玉菌の抑制効果もある。免疫細胞を活性化させ、免疫関連因子の調整を行う作用もある。 |
ラクチュロース | 牛乳に含まれる乳糖を原料として作られるオリゴ糖の一種で、またの名を「ミルクオリゴ糖」と言う。ラクチュロースは白い粉末で水によく溶け、爽やかな甘味を持っている。便秘解消を促す食品として利用されたり、肝臓病の治療薬としても用いられてきた。オリゴ糖の中でも人の胃酸に強く、消化酵素で分解されないため大腸までしっかり届き、ビフィズス菌のエサとなり増殖率をアップさせる効果がある。これらの働きからラクチュロースの多くはヨーグルト・飲料に入れられ、整腸作用のある健康食品として親しまれている。 |
オリゴ糖を含む食品一覧
オリゴ糖を含む自然界の食品と、オリゴ糖含有量をご紹介いたします。
食品名 | オリゴ糖含有量 |
バナナ | 10.5g |
きなこ | 6.1〜7.4g |
ハチミツ | ナノハナ:6.2g ビーチウッド:4.8g サクラ:3.2g レンゲ:1.5g |
大豆 | 蒸大豆:1.42g 納豆:2.0g |
玉ねぎ | 0.6〜0.9g |
アボカド | 0.9g |
ニンニク | 0.9g |
ブロッコリー | 0.8g |
ゴボウ | 0.5〜0.6g |
出典:文部科学省「食品成分データベース」より。可食部100gあたりの含有量を記載
オリゴ糖を選ぶときの注意点
オリゴ糖を取り入れたい方が、選ぶ際に注意すべきポイントを解説いたします。
人工甘味料に気を付ける
オリゴ糖は、砂糖と比べて甘味が控えめですが、種類によって異なります。甘味が強いものから甘味が控えめなものまでさまざまです。
美味しさや自分の好みに合わせて選ぶことも大切ですが、人工甘味料入りのものはなるべく避けるようにしましょう。自然の原料で作られている体に優しいオリゴ糖かどうかは、裏ラベルを見てチェックしてください。
トクホマークをチェックする
オリゴ糖含有率の高い粉末タイプや、特定保健用食品(トクホ)マークがついたものを選ぶと安心です。トクホマークがついているものは、有効性・安全性について国の審査を受け、消費者庁長官の許可を得ることでマークがつけられています。
そのため、絶対的に効果が出るというわけではありませんが、品質が保証されているという点において安心して摂取できます。
お値段に気を付ける
砂糖の代わりとして使いたい場合、オリゴ糖の方がお値段が高いため食費が高くついてしまうかもしれません。
【1kgあたりの価格差】
・砂糖:300〜500円
・オリゴ糖:600〜1,500円
※販売場所によって価格は大きく異なる場合がございます。
まとめ
オリゴ糖は自然由来の糖を基に作られた「天然成分」で、消化しにくい成分のため胃・小腸で吸収されず、大腸まで直接届いてくれます。そして、大腸を棲み処にしているビフィズス菌などのエサとなり、腸内環境を整える手助けをしてくれます。
ぜひ、オリゴ糖を食生活で上手に活用し、健康生活を送ってくださいね。
参照:
1.栗原毅.他.健康成人男性を対象としたフラクトオリゴ糖含有チョコレート摂取時の血糖値推移に関する検討―プラセボ対照オープンクロスオーバー比較試験.薬理と治療.47巻7号.2019.p 1075-1078
2.藤田孝輝.ヒトでの4G-β-D-Galactosylsucrose(ラクトスクロース) の消化性と腸内菌叢に与える影響.澱粉科学(Denpun Kagaku)第38巻第3号.1991.p.249~255
3.名倉泰三.他.難消化オリゴ糖の抗アレルギー免疫調整作用.腸内細菌学雑誌.18.2004.p 7-14
4.柴田瑠美子.アレルギー疾患発症における腸内細菌ビフィズス菌の役割 ―乳幼児アトピー性皮膚炎におけるオリゴ糖のプレバイオティクス効果.日小ア誌.2012,26.p 99-104